2020 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災の生活環境崩壊による子どもの発達への影響とその支援
Project/Area Number |
19K02964
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Research Institution | Iwaki Junior College |
Principal Investigator |
鈴木 美枝子 いわき短期大学, 幼児教育科, 教授 (40793550)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災後の子どもの発達 / 保育者の語り / 社会的要因 / 保育者の二重性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)東日本大震災の被災地(いわき市)7年後の子どもの発達の特徴を明らかにするために、対人応答性尺度第2版(SRS-Ⅱ)を利用して、いわき市及び静岡市各100名の年長児を対象に調査しその結果を、下位尺度(社会的気づき、社会的認知、社会的コミュニケーション、社会的動機づけ、興味の限局と反復行動)のT得点を用いて、js-STAR.Verson9.8.4jで統計による分析を行った。結果、いわき市の子どもは「社会的動機づけ」以外の尺度において,静岡の子どもよりもT得点が高く,特に男児において課題が多いことが明らかとなった。 (2)いわき市の保育者の「震災後、発達障害の行動特徴を示す子どもが増加し、保護者支援の困難さ」の訴えに対し、それが、震災による影響によるものであるかの要因を探るために、いわき市と静岡市の保育者にインタビュー調査を行い、その語りから背景となる要因を比較検討した。結果、両市共に、核家族の増加、経済的理由により、共働きが増加し、子どもを保育施設に預けている現状があり、子どもとの関わりの時間が減少していることが挙げられた。このことから、保護者は、子どもとの関わり方がわからないという不安を強くし、子どもは、より自分の気持ちを受け止めて欲しいという思いを強くしていることが推測され、結果的に、それぞれの人間関係を困難にしていると思われる。震災の影響の語りはみられなかった。 (3)大震災の原発事故の影響で、被災地(いわき市)の保育者は、被災当事者と保育者としての二重性をもった生活を送った。本研究では、大震災という急激な変化における保育者の心理的な葛藤場面で、保育者が選択していくプロセスと保育者の価値観について、発生の三層モデル(TLMG)で分析を行った。その結果、被災当事者と保育者としてのそれぞれの立場で、行為を促した時の「価値観・信念」を可視化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、緊急事態宣言等があったため、フィールドワークでの調査をすることが困難であった。同時に、日常の業務が、遠隔授業となりその準備等に時間を要したため、研究全体に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
①質問紙調査の実施:東日本大震災の生活環境の崩壊による保育者の心理的影響(特に、自 然との関係)について実施する。 ②保育者としての二重性について、事例数を増やすために研究協力者を増やして、インタビ ュー調査を行い分析を行う。 ③保育現場に入って、子どもの発達の状況について観察し分析を行う。
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Causes of Carryover |
・新型コロナ感染症拡大の影響で質問紙調査の実施、フィールドワークが困難だったため ・質問紙調査のための、調査会社への依頼及びテープ起こしの依頼、子どもの行動観察など のための設備備品(VTDカメラ・心理検査等)、研究資料翻訳のための翻訳ソフトの購入
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