2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of knowledge space for genaral infomatics
Project/Area Number |
19K02974
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
稲垣 知宏 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (80301307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 一樹 東京国際大学, 商学部, 教授 (20224850)
高橋 尚子 國學院大學, 経済学部, 教授 (30459002)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一般情報教育 / 知識空間 / 情報プレースメントテスト / eラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「情報プレースメントテストの開発と実施」、「知識空間の構築と探索」、「学習コンテンツの開発」の3つの領域に分けて研究を進めている。それぞれの領域について、2020年度は以下の研究を実施し、成果を得た。 情報プレースメントテストの開発と実施:情報処理学会一般情報教育委員会の協力の下で構築した問題データベースを用いた情報プレースメントテストを16の大学で実施し、3000件を超えるデータを取得することができた。完全オンライン授業へ対応するため、テストの実施時間、表示内容を調整するとともに、操作マニュアルの整備を行なった上で、情報プレースメントテストを実施した。取得したデータの簡易な集計結果から、知識空間の探索の基礎として問題無いことを確認した。 知識空間の構築と探索:情報プレースメントテストの結果から一般情報教育の知識空間に関する知見を得るために必要となる解析処方の開発と、情報プレースメントテストで得られたデータの処理を進めた。解析処方としては、テスト問題毎の難易度の差を相殺する形で統計量を定義し、個々の学生の持つ知識を少数のモデルパラメータで表すことで、計算可能な模型を構築し、分析を進めることとした。 学習コンテンツの開発:前年度までの企画に沿って、一般情報教育の知識体系から項目を絞って1冊にまとめた教科書を、情報処理学会一般情報教育委員会の協力の下で、作成し出版した。シンポジウム「これからの大学の情報教育」のワークショップで、作成した教科書の著者らが担当した内容の模擬授業を行い、その内容についての参加者とともに協議し、また、実際に大規模な授業の中で使用することで、個々の大学生のレベルに合わせた学習コンテンツ開発に必要となる基礎データを集めている。 成果については、大学での一般情報教育の現状と合わせて報告し、オンライン授業等の状況も反映する様に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
情報プレースメントテストの開発については、2020年度に情報プレースメントテストを実施する計画であった。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)蔓延の影響で、情報プレースメントテストの実施を予定していた大学においても授業期間、実施方法が変更となり、当初の予定から最大で数ヶ月の遅れが生じることとなったが、2020年度内に協力予定としていた全ての大学で情報プレースメントテストを実施していただくことができ、一般情報教育の知識空間探索の基礎となる3000名を超える学生のデータを取得することができた。 2020年度内に情報プレースメントテストを実施することはできたが、実施時期がずれたことから、実際に取得したデータの分析に遅れが生じている。実データについては簡易な統計量の集計までを行うこととし、2019年度の研究で開発した分析プログラムの修正と、分析に必要となる個々の学生の持つ知識を表すモデルを検討することで、一般情報教育の知識空間探索に向けた準備を進めた。新たなモデルを実データに適用するには、分析プログラムを作り直す必要があり、次年度の研究の中で実施予定としている。 学習コンテンツの開発については、情報処理学会一般情報教育委員会の協力も得て、最新の一般情報教育の知識体系をベースとした教科書の執筆と、オンライン会議での編集作業を進め、後期の授業に間に合うタイミングで教科書を出版することができた。研究分担者の大学で、実際の授業で使用し、また、12月に開催されたシンポジウムで教科書執筆者による模擬授業を企画することで、授業でも利用可能な補助教材の開発を進めることができた。シンポジウムがオンラインで開催されたことから、大学で一般情報教育を担当している多くの現場教員のシンポジウム参加があり、予想以上に多くの教員からの意見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2021年度は、2020年度の研究で実施した情報プレースメントテストの結果の分析を行い、分析結果をベースに「知識空間の構築と探索」を行うことを目的に研究を推進する。情報プレースメントテストの実施は前年度の結果を補完するために行うにとどめ、データの分析と知識空間の探索プログラムの作成に注力することで、研究実施計画で予定していた成果を着実に得ることを目指す。また、大学での一般情報教育の現状に合わせて、オンラインで実施される授業に配慮した学習コンテンツの開発までを本研究で行うこととする。 前年度の研究で取得済みのデータに対しては、2019年度の研究で開発したプログラムによる分析に加え、個々の学生の持つ知識を表すモデルを利用した解析を行い、一般情報教育の知識空間の探索を進める計画である。教員の有する経験を元に決めていく必要があるとされている知識空間の基本的な構造を、学生の持つ知識を仮定したモデルを利用することで、客観的な理論に裏付けられた形で構築し、知識間の結合の強度を探っていく計画である。知識空間に関連する要素として、高等学校までの履修内容、一般情報教育に関するアンケートに対する回答との関係等についても、解析に取り込める範囲で考慮していく計画である。 学習コンテンツについては、2020年度以降の一般情報教育のオンライン実施状況等についても配慮し、前年度に実施した模擬授業、出版した教科書に対する現場教員からのレスポンスも反映した形で、コンテンツの実用性を高めるための改訂作業に着手する。 得られた成果は、一般情報教育担当者が集まる学会、シンポジウム等で報告することで、今後の研究の方向性を探っていくと同時に、データ分析の基礎となるモデルと分析結果を書籍として出版し、幅広い分野からなる一般情報教育への寄与を図る計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で2021年度に予定していた、研究打ち合わせ、シンポジウムでの発表がオンライン実施となりこのための国内旅費で残額が生じた。生じた残額は、新型コロナウイルスの影響下で変化した般情報教育の実施体制に合わせた、データの分析と学習コンテンツの改訂、および、研究成果の書籍としての刊行に使用する計画である。
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