2020 Fiscal Year Research-status Report
保育者の力量形成におけるマイクロティーチングの研究
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19K02981
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
金子 智栄子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70257442)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロティーチィング / 保育者研修 / 力量形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
保育者あるいは保育科学生が幼児役(C)を演じる2タイプの簡易型マイクロティーチング(MT)の有効性を検証し、成果を公表した。 園内研修では初任を保育者役(T)、その他のベテランをCにするMTを実施し、分析1では1回目と2回目の模擬保育を発話分析により比較し、TとCの行動変容を検討した。その結果、TのCに対する指導や態度がポジティブに変容するとともに、CはTの指導を受け入れて意欲的に参加するようになったことが示された。分析2では、研修直後と研修2ヶ月後の効果を検討したところ、研修直後は特に幼児理解と学習意欲に関する効果が認められ、研修2ヶ月後は態度や技能に関する保育者の力量が形成されることが示された。研究成果は日本教育工学誌にて掲載された。また模擬保育における対象児への感情移入効果については、保育学会総会にて発表した。 初任に引き続き、園内研修でベテランをTとするMTを実施し、実践後の検討会での発話をテキスト・マイニングにより分析して「繰り返し」の有効性を可視化した。その結果、1回目の検討会の共起ネットワークではクラスターが相互に繋がり合っていたが、2回目では「相互関連的な学びの構造」と「机の配置変更による会話への影響性」の2つのクラスターが独立しており、自由記述などで得られた内省が裏付けられた。そこでMTはベテランにも有効であると考えられ、この成果を日本教育心理学会総会に報告した。 新任をT、学生をCとするMTにおいて、Cである学生は、適切な保育環境(物的・人的)を整え、子どもの個人差を理解して個別指導ならびに集団指導を行い、保育を模索して自己研鑽することを学んでいた。この学びが知識不足を補うことになり、ストレス対処となっていた。MTによる研修効果はTに焦点を当てて論じられることが多いが、Cにも効果が多いことが分かった。この成果は保育学会総会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度中に、幼児を対象に保育する従来型のマイクロティーチング(MT)を実施したかったが、コロナ禍の影響により不可能となった。ただし模擬保育を用いた簡易型MTではデータを収集して分析段階であり、区分を(2)とした。 園内研修としては、2019年10月にベテランが保育者役(T)となり、他の保育者が幼児役(C)となる簡易型MTを実施し、長期的効果として1か月後の影響についてもデータを収集した。すでに2017年に初任をTとして同様にデータを収集していることから、現在は、初任と比較しながら有効性を検討している。検討会の発話分析結果(研究Ⅰ)は日本教育心理学会総会で2020年に発表し、行動分析結果(研究Ⅱ)は2021年に発表予定である。 園外の研修では、保育科学生がCとなる簡易型MTを、2019年8月6日に新卒保育者(A)、8月26日に中堅保育者(B)、8月27日に中堅保育者(N、D)をTにして実施した。まず新卒であるAを対象にした簡易型MTの研究成果、2019年度の文京学院大学人間学部紀要にて公表した。さらにCの保育科学生も多くを学んでいたことから、学びの様相を2020年の日本保育学会大会で発表した。 キャリアによる簡易型MTの効果を検討するため、Aの活動内容を(風車作成して風を探す活動)を、2020年12月14日に園長級のベテラン(K)、翌年1月11日に中堅保育者(N)に実施した。活動内容を統制して現在分析中で、Nの分析結果については2021年の日本保育学会大会で発表する。 現在、得られたデータを基に①尺度評定と自由記述、②観察者による保育実践の行動評定、③保育実践や検討会の逐語記録、④長期的効果を、マルティメソッドで分析し、MTの繰り返しや役割、効果の持続性、保育者の力量形成、保育者ストレス、保育者効力感などとの関係を検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に引き続き、現職保育者あるいは保育科学生が幼児役となる模擬保育を導入した簡易型マイクロティーチング(MT)について、①尺度評定と自由記述、②観察者による保育実践の行動評定、③保育実践や検討会の逐語記録、④長期的効果など、マルティメソッドの分析を行う予定である。①の測定尺度は、MTの有効性、指導技術、保育者の力量、保育者ストレス、保育者効力感などである。 2019年10月に、千葉市内の幼稚園においてベテランが保育者役となり、他の保育者が幼児役となるMTを園内研修として実施し、データを収集した。同幼稚園では、2017年度の園内研修で初任を保育者役にMTを実施し、データを取集して分析を済ませている。そこで、2019年度のデータと比較して、園内研修での保育者役のキャリアの相違によるMT効果を検証し、論文化する予定である。 2019年度、新卒Aの活動内容(風車作成して風を探す活動)を園長級のベテラン保育者(K)、中堅保育者(N)に実施した。活動内容ばかりでなく幼児役学生(5人)も同一にして、条件を統制しており、キャリアの違いによるMTの効果を検証し、論文化する予定である。 また、実際の幼児を対象にした従来のMTを実施し、「絵本の視聴」を題材にする予定である。実習生(保育科4年次学生)と現職保育者に実施して比較検討する予定で、現場と協議中である。現場サイドの状況を鑑みて研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度、新卒保育者Aの活動内容(風車作成して風を探す活動)を園長級のベテラン保育者(K)、中堅保育者(N)に実施した。活動内容ばかりでなく幼児役学生(4年次学生5人)も同一にして、条件を統制してデータを収集した。保育スタイルの異なる保育者(D)へのMT実施を2月28日に予定していたが、コロナウィルス感染防止対策のため、実施できず、その分の人件費が残額となった。2019年度に引き続き、2020年度においても保育者(D)に対するMT実施が不可能であったため、その分の人件費や分析費用が残額となった。 また、2020年度中に、幼児を対象に保育する従来型のMTのデータ収集に着手したかったが、コロナ感染拡大の影響から保育現場に入れず人件費や分析費用が残額となった。そこで2021年度に実施予定である。
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Research Products
(5 results)