2023 Fiscal Year Research-status Report
Risk Analysis Method for Social Implementation Project Based Learning
Project/Area Number |
19K03011
|
Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
粂野 文洋 日本工業大学, 先進工学部, 教授 (50442512)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Project Based Learning / ソフトウェアエンジニアリング / リスク分析・予測 / マルチエージェントシミュレーション / 機械学習 / IoT / PoC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は社会実装型PBL(担当教員や学生以外のステークホルダが抱えているITに関わる課題を解決し,実際に利用してもらうことを前提としたシステムを開発する形態のPBL)を対象としたリスク分析手法を提案することを目的としている.過去のPBL演習によって蓄積された様々なデータから,分析対象となるチームのプロジェクトで発生しうるリスクの識別および予測を行う手法を確立することを目指すものである. 2019年(本研究の初年度)には,深層学習を中心とした機械学習の適用可能性を分析すべく,機械学習応用の文献調査を行った.その結果はサーベイ論文として国際ジャーナル(IOS Press Intelligent Decision Technologies)に掲載されている. 2020年から2021年でマルチエージェントシミュレーションに基づくリスク分析手法の研究開発を行い,マルチエージェントモデルによって学生のプロジェクトをモデル化し,リスクを予測する手法を考案した. 2022年では考案したリスク予測手法の妥当性を検証する分析を行った.これらの結果をソフトウェア工学に関する国際会議JCKBSE2022(International Joint Conference on Knowledge-Based Software Engineering)に投稿し,発表を行った. 2023年にはIoTとAIを利用したPoC(Proof of Concept:概念実証)をいくつか実施した.いずれも学外のステークホルダの依頼や提案によるものである.その成果の一部を論文としてまとめ,来年度開催予定のソフトウェア工学に関する国際会議に投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソフトウェア開発現場におけるリスク分析を系統的に実施する手法として,シミュレーションを行う研究が多く行われている.しかしながら,これらの研究は企業におけるソフトウェア開発(プロフェッショナルな構成員による開発プロジェクト)を対象としており, 知識やスキル,学習能力,意欲などで発展途上の学生を構成員とするプロジェクトには適用が難しい. 本研究が対象とする社会実装PBLで考慮すべきリスクは様々であり,開発内容にも依存している.そこでまずは内容に依存しない共通のリスクとして,スケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクをマルチエージェントモデルによって予測手法を考案した.繰り返し行った実験の結果,作業分担の方法の違いがスケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクに関係している可能性があることがわかった.さらに実際の演習でも同様の傾向があることが明らかとなった. さらにこれまでの研究によって明らかになった課題,すなわち,IoTや機械学習のような日々進化しつつある技術の適用評価を行うPoCとしての社会実装型PBLの進め方やリスク管理を明らかにすべく,学外のステークホルダの依頼や提案によるPoCプロジェクトをいくつか実施した.そこで得られた経験により,こうしたタイプの社会実装型PBLの進め方やリスク管理に関する知見が蓄積されている.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発したシミュレーションモデルはスケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクを対象としたものであり,ソフトウェア開発プロセスに固有の特性を取り入れていない.したがって,ソフトウェア開発以外のPBLにも本手法を適用できる一方,より忠実にモデリングをおこなうためには,固有の特性を取り入れることが必要となる. 一方,実際の演習では,メンバーのスキル不足や依頼元からの要求の理解不足による失敗リスクが顕在化したケースが発生した.こうしたリスクはソフトウェア開発の特性により踏み込んだ要因で発生するものであるが,シミュレーションモデルだけでなく,構成員(学習者)の知識やスキルに関するデータや過去に実施された演習のデータなど,データをより積極的に活用・分析し,リスクを識別,予測するアプローチも検討する必要がある. また,今年度に得られたPoCが中心となる社会実装型PBLの進め方やリスク管理に関する知見を,手法として整理する予定である. さらに高大連携の一環として近隣の工業高校と合同で社会実装型PBLを開始している.学外の教育機関も巻き込んだ実施体制では,連携先の工業高校におけるリスクにも配慮する必要がある.工業高校と大学では設備や受講者の特性などに様々な違いが存在するため,新たなリスクが発生する可能性もある.こうしたリスクについても情報を収集し,そのリスク管理手法をまとめることも取り組む予定である.
|
Causes of Carryover |
本課題研究では,国内の学会参加や国際会議の発表はこれまですべてオンライン参加であった.そのため,参加費用は発生したものの,移動や宿泊にともなう経費は発生していない.今年度の研究成果を来年度に開催の国際会議にて発表するため,本課題の延長申請を行った.ハイブリッド形式の開催が予定されており,社会情勢を踏まえて,対面での参加も積極的に検討する.また,PoCの継続的な実践と分析等のためにPCやグラフィックボード等の実験機器(いずれも50万未満を想定)の購入を進める予定である.
|