2021 Fiscal Year Research-status Report
一般情報教育におけるネットワーク・セキュリティ演習カリキュラムの開発と効果測定
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19K03015
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
鈴木 大助 北陸大学, 経済経営学部, 教授 (30385538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情報セキュリティ教育 / ペネトレーションテスト / 倫理的ハッキング / オンライン授業 / オンライン試験 / コンピュータベース試験 / 減点方式 / 正誤判定問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は一般情報教育のネットワーク・セキュリティ分野について,能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムを開発することである.本年度は以下の2つの成果を公表した. 「オンライン授業で行うセキュリティ教育におけるペネトレーションテスト演習の実践と評価」について,第56回IOT研究会(京都大学,2022年3月8日)で報告した.オンライン授業で実施可能なペネトレーションテスト演習のカリキュラムを設計し,実践を通じて教育効果を検証した.演習は受講生各自が保有する PC に実験用仮想環境を構築して行う.講義動画はオンデマンドで公開し,質問対応にはLMSやチャットを利用した. 受講生は,本演習を通じて攻撃者の視点や攻撃手法を知り,サイバー攻撃の脅威をより身近に感じた結果,情報セキュリティの重要性を意識し,情報セキュリティに対して興味・関心を抱いたことが確認された. 「減点方式の正誤判定問題を利用したオンラインCBT試験の実践と妥当性の検証」について,第164回CE研究会(千葉工業大学,2022年3月12日)で報告した.ネットワークに関する科目をオンライン授業で実施した後,適切に教育効果を測定するためのオンラインCBT試験を考案・実践し,その妥当性を検証した.正誤判定問題40 問からなり,全問解答必須,問題文が偽と思う場合には真となる文への修正を求める,誤答の場合に減点する,自信が無い場合に「解答しない」を選択できる,その場合その問題を採点対象外とする,などを特徴とする. 結果,得点は10~15 点の得点区間をピークとし,0 点から33 点の範囲に広く分布した.「解答しない」選択数の分布からは,受講生が確実に得点するために「解答しない」選択肢を戦略的に利用している様子がうかがえた.受講生数が多くても採点が容易で,個々人の理解度を測定できるオンライン試験の実践事例を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響によるオンライン授業への変更に伴い,本研究課題も方向性を一部変更して実施している.オンライン授業でも能動的学習を可能とする演習カリキュラムを設計・実践し,検証・改善を重ねている. 今年度は2件の成果報告を行った.一部予定より成果報告が遅れているが,カリキュラム設計と教育実践を通じて知見は蓄積されてきているため,今後の改善実施をふまえ,成果報告を行う. ネットワークの学習に関して,教室での対面授業を前提とするロールプレイ演習は実施を取り止めた.パケットキャプチャ演習は専門教育としては教育効果が見込めるため継続する.しかし,一般教育で効果を得るためには相当の学習時間の確保が必要であり時間対効果に優れないため,コマンドを用いたネットワーク経路調査演習に変更し,その効果を検証中である.現在,初学者がさらに取り組みやすい演習として,事例ベース学習教材の開発を行っている. セキュリティの学習に関して,サイバー攻撃演習は,専門教育においてはオンライン授業であっても実践可能かつ教育効果が得られることを確認し,その方法と効果について報告した.一方で,一般教育としては実験のための仮想環境構築だけでも相当の時間を要し時間対効果に優れないと考えられるため,ケーススタディ演習を含む新規教材の開発実践に注力する. オンライン授業対応の一環として,ネットワークの授業をオンラインで実施した後,適切に学習効果を測定するためのオンライン試験を考案・実践している.今年度もその改良実践について報告を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の所属する学部では,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,また,社会のオンライン化に対応できるITスキル養成のため,情報系の一部科目について各種オンラインツールを活用した遠隔授業を実施している.本研究では,教室で行うロールプレイ演習については実施を取り止め,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムの開発に移行している. セキュリティの学習に関して,サイバー攻撃演習は,専門教育においてはオンライン授業であっても教育効果が得られることを確認し,その方法と効果について報告を行った.一方で,一般教育としては時間対効果に優れず適さないと考えられるため,ケーススタディ演習を含む新規教材の開発実践に注力する. ネットワークの学習に関して,パケットキャプチャ演習は,専門教育における実践と検証・改善を継続する.一般教育では,ネットワーク経路調査演習を継続検証しながら,初学者がさらに取り組みやすい事例ベース学習教材の開発と実践を行う. これらの方策を通じて,遠隔授業であっても能動的学習を促すことのできる効果的な演習カリキュラムを具体化する.
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Causes of Carryover |
当該年度も前年度に引き続き,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,参加を予定していた学会・研究会のほとんどがオンライン開催となった.当該年度末の2件の発表のみ現地参加が可能となり,旅費の支出はこの2件のみとなった.次年度は当該年度に実施できなかった分の報告・学会出張を実施する.次年度使用額はその参加費・旅費の一部に充てる.
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