2022 Fiscal Year Research-status Report
一般情報教育におけるネットワーク・セキュリティ演習カリキュラムの開発と効果測定
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19K03015
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
鈴木 大助 北陸大学, 経済経営学部, 教授 (30385538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情報通信ネットワーク / 能動的学習 / 事例学習 / 経路調査実験 / ネットワークコマンド / スプリンターネット / 経路ハイジャック / 光海底ケーブル切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は一般情報教育のネットワーク・セキュリティ分野について,能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムを開発することである.本年度は以下の2つの成果を公表した. 「社会的な事例学習を取り入れた情報通信ネットワークの授業実践の試み」について,第165回CE研究会(四天王寺大学, 2022年6月5日)で報告した.本研究の目的は,情報通信ネットワークに関して実際に起こった社会的な事件や事故の事例学習を通じて,その仕組みを学習する演習を考案し,実践を通じてその効果を検証することである.ネットワークコマンドを用いた経路調査実験との間で教育効果の比較検証を行うため,本報告では,実験・演習の内容と実施計画,効果測定のためのアンケート,および,経路調査実験に対する受講生の反応について報告した. 「情報通信ネットワークの授業実践における経路調査実験と社会的事例学習の比較検討」について,第58回IOT研究会(函館アリーナ,2022年7月12日)で報告した.本研究の目的は,ネットワークコマンドを用いた経路調査実験とネットワークに関する社会的な事例学習(スプリンターネット,経路ハイジャック,光海底ケーブル切断)の両方を実践し,理解や興味を促進する効果に関して比較検討することである.事後アンケートによると,経路調査実験では8割程度が理解と興味が促進されたと肯定的な回答であったが,事例学習ではそれを上回る9割前後が肯定的な回答であった.また,難易度に関しては,事例学習を難しいと感じた受講生の割合は経路調査実験を大幅に下回った.経路調査実験も十分な教育効果を見込めるが,必修や履修指定として実施する一般情報教育においては,事例学習の方が容易で,かつ,効果的であると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響を受けたオンライン授業への変更等の対応に伴い,本研究課題も方向性を一部変更して実施している.オンライン授業でも能動的学習を可能とする演習カリキュラムを設計・実践し,検証・改善を重ねている. 今年度は2件の成果報告を行うことができた.一部当初目標に到達していないが,カリキュラム設計と教育実践を通じて知見は蓄積されてきているため,今後の改善実施をふまえ,報告を行う. ネットワークの学習に関して,学生が密になるようなグループワークを避けるべきであった状況を経て,本計画のうちロールプレイ演習は実施を取り止めた.遠隔でも各自で取り組む事ができるパケットキャプチャ演習は専門教育では有効であるが,一般教育で効果を得るには相当の学習時間の確保が必要であり適さないと判断し,ネットワークコマンドを用いた経路調査実験に移行した.本年度は初学者にとってさらに取り組みやすい演習として事例ベースの学習教材を開発し,経路調査実験との間で教育効果の比較検討を行った. セキュリティの学習に関して,サイバー攻撃演習は,専門教育ではオンライン授業であっても実践可能かつ教育効果が得られることを確認し,その方法と効果について報告済みである.一方で,一般教育では実験のための仮想環境構築だけでも相当の時間を要し時間帯効果に優れないと考えられるため,事例ベースの学習教材とそれを用いたカリキュラム開発に注力している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の所属する学部では,新型コロナウイルス感染拡大防止を機に教育のDXが進み,情報系の一部科目について各種オンラインツールを活用した遠隔授業を実施している.本研究では,教室で行うロールプレイ演習については実施を取り止め,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムの開発に移行している. ネットワークの学習法については,初学者が取り組みやすい演習としては経路調査実験と事例ベース学習を開発し,比較検討を行った.いずれも情報通信ネットワークに対する興味と理解を促進する高い効果が確認されたが,事例ベース学習は,より実践難易度が低く,より教育効果が高い可能性が示唆された. セキュリティの学習について,サイバー攻撃演習は,専門教育において,前年度後期のオンライン授業における実践を通じて教育効果が得られることを確認し,その方法と効果について報告を行った.一方で,一般教育では時間対効果に優れず適さないと考えられるため,事例ベースの学習教材とそれを用いたカリキュラム開発に注力している.次年度はこれについて実践と報告を行う.
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Causes of Carryover |
前年度までは新型コロナウイルス感染拡大防止のため,参加を予定していた学会・研究会のほとんどがオンライン開催であった.学会・研究会に参加・報告はしたものの,旅費は予定通りには使用しなかった.また,研究代表者自身オンライン授業の対応に追われて,本研究に関する成果報告の機会が減少していた. 本年度からオンサイトでの学会・研究会も徐々に増えてくるとともに,滞っていた報告を行っているが,進捗の遅れを完全に取り戻すには至っていない.次年度はセキュリティに関する事例ベース学習教材の開発・実践を中心に行い,本年度に実施できなかった分の論文発表・学会出張を実施する.次年度使用額はその参加費・旅費の一部に充てる.
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