2020 Fiscal Year Research-status Report
トークンエコノミーを活用したアクティブラーニングのための新しい学習評価方法の研究
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19K03020
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
尾関 基行 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (10402744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 志穂 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (80441236)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャルラーニング / アクティブラーニング / 学習プロセス評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アクティブラーニングの学習者が学びのプロセスをソーシャルネットワークへと発信し、それに対するインターネット上の反応を“評点”とする新しい学習評価手法に挑戦している。具体的な手順は、(1) ソーシャルネットワークへの継続的発信によるアクティブラーニングの学び報告スタイルの確立、(2) 学び報告およびその反応に応じた学習者への評点トークン付与システムの構築、(3) 第三者評価者(フォロワー)への評価トークン配布と学習者への送付機能の追加、(4) 学習者同士の評価トークン交換による協働的アクティブラーニングの実践…の4段階で計画している。
初年度に引き続き、2年目も申請者のゼミ活動を対象として、主に上記の(1)に取り組んできた。(1)の目標を達成するためには、まず学習者が主体的・継続的に自らの学びを発信する必要があるが、それだけで独立した研究テーマとなるほど難しいことを実感している。初年度は毎週の学び報告をブログで行うようルール化したことで約7割の継続率を維持したが、発信を強制したことからブログの内容が薄くなった。そこで2年目は、毎週の学び報告をやめ、最終的な成果報告のみを課した。その結果、約半数の学習者が成果報告だけでなく、途中経過や成果報告後の改善内容などを自主的に発信した。ブログの投稿総数は初年度より減ったが、個々のブログの内容は充実したものになった。
また、2年目の終盤には上記(2)にも着手している。学習者グループのブログおよびTwitterの投稿数とリアクションの集計(直近1週間と半年間)を一覧表示するウェブアプリを制作し、3日おきに教師アカウントのツイートでそのウェブアプリをリマインドした。実験中は、学習者に対して毎日1回以上のツイートもしくは引用リツイートを指示し、1ヶ月間はリマインドなし、1ヶ月間はリマインドありで比較した。2021年度も実験継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大によって2020年度前期は申請者の所属大学が全面オンライン授業となり、研究対象としているゼミ活動もオンラインに切り替えざる得なくなった。本研究自体はオンライン学習であっても実施できるが、フィジカルコンピューティングで予定していた内容を大幅転換したため、ゼミ活動自体の開始が遅れた。重ねて、学習者(大学生)も授業のオンライン化による課題過剰に苦しみ、自粛のストレスも重なったことで、主体性を旨とするアクティブラーニングに注力できない状態が続いたことも研究に影響した。そのため、初年度の終盤に実施する予定であった実験が2020年度の前期中も実施できず、後期は実験参加者(ゼミ生)が卒業論文に取り掛かるため、予定していた実験が1年遅れの2021年1月から開始となった。2021年4月現在も実験継続中であるが、2021年度中には成果を学会等で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年4月現在もCOVID-19による緊急事態宣言が発令されてオンライン授業に切り替わるなど先行きは読めないが、オンライン環境でのアクティブラーニングにおける実験は動き出しているため、このまま予定どおり推進する。ただし、本研究の申請時点では、学習者と評価者や学習者同士の評価トークンのやりとりに着目していたが、学習者の主体的・継続的な学び発信のモチベーション維持・向上だけでも十分に挑戦的な試みであることがわかり、その課題に対して評価トークンのアイデアをどう活かすかについて重点的に検討していきたい。
その他の変更点としては、実装上の話ではあるが、評価トークンをブロックチェーン技術で実装する方針の転換を予定している。これはEthereumの高騰と税金問題のためであり、テストネットを用いることで問題を回避することはできるが、ブロックチェーンウォレットの設定を都度変える必要があるなど、研究の焦点に対して本質的ではないマイナス要因が加わる。将来的にはブロックチェーン技術を用いるとして、まずは本研究で開発するシステム内の独自ポイントとしてトークンを実装する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、関連学会のオンライン化やブロックチェーン技術に関するワークショップの中止などによって旅費が不要となったことや、2020年度に発注した機器が世界的な半導体の品薄で納品未定となって翌年度納品に変更されたため。更に、当初(研究対象である)ゼミ活動の内容として予定していたフィジカルコンピューティングをオンラインで実施可能なウェブアプリ開発へと変更したことで、関連デバイスや電子部品、開発用マシンの購入も延期した。2021年度以降は対面授業の機会が増えると想定し、2020年度に購入を見送った機器を購入する。また、研究対象であるゼミ活動が他大学とのオンライン共同プロジェクトとなったので、未使用であった旅費はそのための機器購入に当てる。
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