2020 Fiscal Year Research-status Report
戸外における幼児のアクティブな学びを記録するビデオツールの開発
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19K03025
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
刑部 育子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20306450)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メディアの活用 / 保育 / ビデオ / 幼児 / 学び / 参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、子どもも保育者も保護者も学びの可視化に主人公として関わり、その学びを表し、分かち合うことを支援し、最も困難な課題をともなう、戸外における幼児のアクティブな学びを記録するビデオツールを開発することを目的としている。それを達成するために①最新の国内外のビデオ研究やドキュメンテーションの活用に関わる研究の調査、②学びのプロセスに参加するすべての人々が学びにおける観察や記録、表現と評価に参加できる方法論の構築、③もっとも課題の多い戸外で移動をともなうときの観察や記録に必要なツールの課題に対する調査、④戸外における幼児のアクティブな学びを記録するビデオツールを開発し、⑤その成果を広く国内外に発信することとしている。 上記の目的のもと、2年目となる2020年度は、①として海外現地調査(イタリア、レッジョ・エミリア国際センター内にあるドキュメンテーションセンター)が予定されていたが、コロナ禍で渡航ができなかった代替えとしてレッジョ・チルドレンから出版されているレッジョ・エミリアの幼児学校の具体的な教育ドキュメンテーションに関する文献を調査し分析した。また、後半では本研究のフィールドである「こども園」での夕方の時間に着目した観察及びドキュメンテーションを実際に作成し、夕方の時間で起こる子どもの学びを可視化する試みを行った。③についてはツール使用のデータ解析を進め、利用者が観察中の出来事をどのように「区切り」登録していくのかについて分析を行った。その成果は②メディアの活用による観察、記録の方法論の拡張の成果として、現在、論文に投稿しており審査中である。この分析結果を応用して、今後④を進行させることができると考える。⑤としてはOMEP(世界乳幼児機構年次大会 ギリシャ)への参加、口頭発表が採択され予定していたが、世界的にコロナ禍の状況となる中、大会は次年度に延期された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①としては、本年度は海外現地調査(イタリア、レッジョ・エミリア国際センター内にあるドキュメンテーションセンター)が当初予定されていた。しかし、コロナ禍で渡航ができなかったため、①の調査研究の2020年度前半ではレッジョ・エミリアの幼児学校において出版されているドキュメンテーションの文献調査を行い、年度後半では本研究の調査フィールドである「こども園」での夕方の時間に着目した観察及びドキュメンテーションを実際に作成し、夕方の時間で起こる子どもの学びのプロセスを可視化する試みを行い代替えとした。 ②学びのプロセスに参加するすべての人々が学びにおける観察や記録、表現と評価に参加できる方法論の構築に向けて幼児教育の「子どもの参加」に関わる国内外の重要文献を精査した。 ③・④についてはツール使用のデータ解析を進め、移動を伴う観察において利用者の使用中のデータのとり方の痕跡から、利用者は観察中の出来事の「区切り」をどのように登録していくのかについて分析を行った。その成果は②メディアの活用による観察、記録の方法論の拡張の成果として、現在、論文に投稿しており審査中である。この分析結果を応用して、今後④を進行させることができると考える ⑤としてはOMEP(世界乳幼児機構年次大会 ギリシャ)への参加、口頭発表が採択され予定していたが、世界的にコロナ禍の状況となる中、大会は次年度に延期された(現段階では2021年度も更なる延期となった)。そこで、別の形の成果の発表方式、ドキュメンテーションの展覧会を構想し、参加としての評価につなげることとしたい。 以上のように、予定された計画どおり進めることは困難であったが、その代わりに今できることを進めることでおおむね順調に進展できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
①記録の方法論に関する海外現地調査は2021年度も難しいと予想される。そのため、別の方途を準備した。それは、レッジョ・エミリアの幼児学校で最もドキュメンテーションという新しい記録の方法論と可視化に貢献し仕事をしてきたアトリエリスタVea Vecchi(2010)の著書の翻訳に研究会を立ち上げ挑むことである。Vea Vecchi氏の元でアトリエリスタとして仕事をしてきた人を研究会のメンバーに迎え、原語となっているイタリア語の資料も含めて議論しながら進める。この著書は、独自のレッジョ・エミリアの幼児学校の教育哲学と思想に支えられた方法論故、難解であり、これまで誰も翻訳を手掛けてこれなかったものである。そこで、本研究ではイタリアでの現地調査に代えて、Vea Vecchi氏の哲学と思想とドキュメンテーションの実際について、翻訳作業とレッジョ・エミリアの関係者とのやりとりに充てることで、②の現地調査同等かそれ以上の精密な知見を得て、観察記録の方法論の展開と拡張に努めることとしたい。これは広く一般に普及することのできる出版を予定した公式的な活動として開始する。この①の成果から②学びのプロセスに参加するすべての人々(観察者だけでなく、実践(保育)者や子どもたちを含む)が学びにおける観察や記録、表現と評価に参加できる方法論の構築をまとめることとする。③で行ってきた課題の多い戸外で移動をともなうときの観察や記録に必要なツールの課題に対する分析を活かし、本年度は④戸外における幼児のアクティブな学びを記録するビデオツール開発を行う。 以上、①~④の本研究の成果は、⑤として広く国内外に発信する。成果の発信方法も工夫をこらし、学術論文や学会発表の他、観察・記録の展覧会も企画したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍が続き、一年に渡り海外渡航が不可能だった。そのため、当初予定していたイタリアのレッジョ・エミリアの国際センター内のドキュメンテーションセンターへの訪問ができなかった。また、成果発表となるはずだったOMEP(世界乳幼児機構年次大会 ギリシャ)への参加、口頭発表が採択され予定されていたが、大会は次年度に延期された(現段階では2021年度も更なる延期となった)。そのため、次年度使用として旅費およびプログラム、大会参加費を繰り越した。しかし、2021年度もまだ渡航は難しい状況となることが予想される。そのため、その分、ツール開発に関わる費用と記録の可視化に関わるイタリア語文献の翻訳に関わる翻訳作業の補助および専門的知識の教授の謝金等に使用予定としたい。また、成果の新しい表現方式にも挑戦し、展覧会を企画することを新たに予定しているので、展覧会の企画に関わる材料費にも使用する予定である。
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Research Products
(3 results)