2019 Fiscal Year Research-status Report
The development and implementation of a tutoring system on active-learning/project-study using experience-based inductive learning methods
Project/Area Number |
19K03050
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
内山 哲治 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10323784)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 科学教育 / 経験帰納的学習 / アクティブ・ラーニング / 教員支援 / 無意識 / 暗黙知 / 明晰知 / 素朴概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 指導システム構築:アクティブ・ラーニング(AL)が「主体的・対話的で深い学び」になるための構造解析を行った。ポイントは授業を構成する要素である。われわれの経験上,これまで授業は授業内容や手法・教材に重点が置かれてきており,物理および理科系教育学会での発表・論文において授業手法や教材開発による授業改善が目立っていた。それに対し,われわれは授業とは人間が人間に対して行う社会活動であり,授業者や学習者の個性を度外視して成立しないと考え,授業内容よりも人間に重点を置いた。つまり,授業を関数(C)と捉え,授業者(T)と学習者(S)をその変数として,文科省推奨の課題解決型学習やわれわれの提案する経験帰納的学習を表現した。さらに,物理学における液体ヘリウムの超流動状態の現象論的解釈である二流体モデルを学習者に対して適応し,物理への抵抗と液体ヘリウムの粘性抵抗を対比させた。つまり,授業者の関与が必要な学習者を物理に抵抗がある状態(常流動状態),授業者の関与が不必要な学習者を物理に抵抗がない状態(超流動状態)と捉え,物理学習において抵抗ありから抵抗なしになる変化を相転移として考えるモデル化を行った。 2 指導システム実践:学校教育現場の異動や多忙さから実施出来たのは,中学校3校(本学附属中学校と気仙沼市立新月中学校,気仙沼市立大谷中学校)であった。このうち実践授業まで出来たのは,附属中学校3年3クラスと新月中学校2年2クラスのみであった。ここで痛感したのは,現場の教諭と授業を構築していく中で,現職教員が授業に対して自分のオリジナリティを発揮する(攻め)のではなく,特に自分の特性を発揮することなく無難にこなそう(守り)とすることであった。この教員の意識改革(意識改革が必要であるのとの気付き)が,主体的・対話的な活動が深い学びにつながるALとなり得るかどうかのポイントであると認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 指導システム構築:授業がALになるための教員指導として,授業を熱力学的状態関数として扱い,さらに二流体モデルに合わせ学習者の理解を進めた。この内容およびこれまでの企業経営における教育との比較を含め,日本物理教育学会および東北物理教育において,口頭発表および論文発表を行った。また,指導システムの実践に向けて,授業の導入に有効な日常に関する物理チップスを検討し,中学校の現職教員と議論した。 2 指導システム実践:今年度中学校での実践のみであったが,実践授業を参観して今後の方針に変換に関わる大きな知見を得た。それは,物理チップスの発案者についてである。まず,実践を行った本学附属中学校において,3年生後半のエネルギー変換を扱い,われわれが自作所持していた実験装置を利用した。附属中学校は仙台市内でも学習意欲の高い生徒が多く,日常からかけ離れた実験装置でも対応して深い学びを実現していた。一方,新月中学校の方では,自治体自体で教育投資が少なく,地元公立高校にほぼ全入の状況であり学習意欲が高くない状況であった。しかしながら,圧力の学習において日常の物理チップスとして足つぼマットの導入により,主体的・対話的な様子が見られた。ただこの参観において,もともとの学習意欲のあるなし以上に学習者自身の授業への取り組む姿勢の違いを感じた。ここで気付いたのが物理チップスの発案者である。つまり,学習意欲が高い場合,導入としての物理チップスの発案者如何に関わらずALが実現しやすい。しかし,学習意欲がそれほど高くない場合,授業者側が生徒の興味を引く物理チップスを提示して進む学習は,生徒が主体的にさせられていた状態(受動的能動)に過ぎないということであった。重要なのは,物理チップスの発案者が生徒自身であることであった。そこで,実践をした生徒および大学生に,新たなアンケートを行い集計中の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
指導システム構築と実践:まず中学校において,本学附属中学校,気仙沼市立新月中学校,気仙沼市立大谷中学校とは継続する。ここで,令和2年2月の段階で,生徒自身による物理チップスを活用することを目的に,日常生活の中であれ不思議だな?分からないな?と思うことを物理・理科に限らず挙げてもらうというアンケートを取った。今後は,このアンケートを基に学習内容とどのようにリンクするかを授業者と相談して決めていく。また,ここで2つの活用を考えている。1つは,学習内容と遠く離れたアンケートにも関わらず実は深く関わっているという内容を利用するもの。もう1つは,物理・理科嫌いの生徒のアンケートを用い,授業内で自分の不思議が学習内容とリンクして氷解されていくことを体験し,物理・理科に興味を関心を持たせるというもの。また,生徒発案の物理チップスを用いることにより,暗黙知や素朴概念の問題にも適用できる可能性があると考えている。 次に高等学校での実践を行うため,宮城県教育庁高校教育課教育指導班主幹・指導主事の清原和教諭(科研費申請時の鈴木歩教諭および大澤健史教諭は共に異動)と打合せを進めている。ここでは高校教育課主導で高等学校(まずは3-4校を検討している)に声を掛けていただいて,高校教員を生徒に見立ててわれわれが課題研究の進め方を指導する。またその中で,主体的・対話的であり,さらに深い学びにつながるための授業とは何かを詳説し,教員こそがALできないと生徒はALにならないこと,そのためには教員は教えすぎてはいけないことなどを伝える。さらに,高等教育課とともに高校教員それぞれの特性(教科内容における得意不得意の洗い出し)を挙げてもらい,高校教員の有機的知的ネットワークを構築する計画である。このネットワークが出来ると現職教員のAL活動モデルケースとしての指導システムとなり得ると考えている。
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