2020 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児に対するICT導入の事前検討の促進を志向したアプリ検索システムの開発
Project/Area Number |
19K03055
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
小川 修史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90508459)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ICT / 特別支援教育 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,特別支援教育に携わる教師を対象に,アプリ活用の事前検討を促すことを志向したシステム「アプリ@コンシェルジュ」の構築を目指している。本システムは事前検討すべき内容について,システムとの対話を通して教師に検討させる「検討フェーズ」と,事前検討の結果に基づき最適なアプリおよびアプリを用いた指導事例を推薦する「推薦フェーズ」により構成される。つまり,ユーザである教師にとっては,アプリを検索する過程で事前検討を実施させることが可能になる。 システムの構築にあたり,検討フェーズにおいては,教師とシステム間の対話を実現するための体系化された知識が必要と考えた。申請者はこれを「Pre-AIM(Prior Examination - Application Introduction Model)」と定義し,ICTの事前検討場面を収集・分析することによるPre-AIMの構築を本研究の第一の目的とする。次に,推薦フェーズにおいては,アプリと指導事例に対してメタデータをPre-AIMに基づき適切に付与することで,これらの推薦が可能になると考えた。そこで,アプリと指導事例に対してメタデータを付与したうえで,プロトタイプシステムを用いた実運用を通して精錬することを本研究の第二の目的とする。 2年目は第一の目的であるPre-AIMの構築作業を実施した。具体的には,実践事例から概念を抽出した上で,「困難」と「環境調整」の観点から知識の整理・体系化を実施した.試作したPre-AIMの妥当性について調査すべく,Pre-AIMで定義した概念をメタデータとして実践事例に付与した結果,「困難」と「環境調整」を別に定義することにより,児童側の要求と教師の行動(環境調整)を対応づけることが可能になる点,環境調整が状況に応じて整理される点,の2点で妥当性を確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は当初の予定通り,「事前検討事例の追加収集およびPre-AIMの精錬」および「アプリおよび指導事例に対して,メタデータをPre-AIMに基づき付与」の作業を実施した。まず,実践事例から概念を抽出し,Pre-AIMの精錬作業を実施した。 ver.1では,合理的配慮を「児童生徒が困難さを感じる場面に対して実施されるもの」と仮説を立て,合理的配慮を,「困難」と「場面」の観点で整理した.概念の整理にあたり,ICFを参考に,当事者の困難さを定義した.しかし,指導場面や状況を具体的に表現できない点がver.1の課題として挙げられた. 次にver.2では,合理的配慮を「困難」「配慮目的」「配慮内容」の3観点で定義し,さらに配慮目的を合理的配慮の3観点11項目に基づき定義した.結果,学校現場の実態を具体的に表現することが可能となった一方で,配慮目的と配慮内容を明確に区別することの困難さが示唆された. ver.3では, 配慮目的に「配慮内容」と「困難」の双方の概念が含まれる点に着目し,合理的配慮を「困難」と「配慮内容」の2観点で再定義した.結果,配慮目的と配慮内容を明確に区別して定義することができた一方で,配慮内容の定義が曖昧であるため,概念間で重複や不整合が生じる結果となった. 最終的には,合理的配慮を「困難」と「環境調整」で定義した.配慮内容に教師が配慮に至るまでの心理的葛藤と実際の配慮行為が混在している点が着目し,合理的配慮を「環境調整」の視点から整理した. 試作したPre-AIMの妥当性について調査すべく,定義した概念をメタデータとして実践事例に付与した結果,「困難」と「環境調整」を定義することにより,児童側の要求と教師の行動(環境調整)を対応づけることが可能になる点,環境調整が状況に応じて整理される点,の2点で妥当性を確認した.
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目は「フェーズ5:プロトタイプシステムの実装」「フェーズ6:プロトタイプシステムを用いたPre-AIMおよびメタデータの精錬」を実施する予定であり,4年目は「フェーズ7:アプリ@コンシェルジュの一般公開に向けた検討・開発」「フェーズ8:アプリ@コンシェルジュの一般公開および評価」を実施する予定である。申請期間内に集積可能なアプリや実践事例の数は限定的であると想定されるが,Pre-AIMの妥当性が担保されれば,ポートフォリオ的に蓄積することも可能である。ただし,本研究では蓄積のことまでは想定せず,Pre-AIMの妥当性および本システムの枠組みの有用性について調査する。また,最終的には本研究の成果を広く一般公開することを想定しており,当初の予定より早く進んだ場合は蓄積の枠組みについて検討することを想定している。
|
Causes of Carryover |
専門家に対する調査のために旅費を計上していたが,コロナ禍によって延期を余儀なくされたため,次年度使用額が生じた。なお,これらは延期していた調査のための旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)