2019 Fiscal Year Research-status Report
キットビルド方式に基づく論理的思考力育成プログラムの開発
Project/Area Number |
19K03059
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
川本 佳代 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (10264938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 智之 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (70264934)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 論理的思考力 / キットビルド / 学習支援システム / クラウドコンピューティング |
Outline of Annual Research Achievements |
国際社会・情報化社会で活動する人が具えておくべき能力の一つである論理的思考力は,さまざまな場でその重要性が強調されている.この能力は,①問題の構造を的確に捉える力(論理的読解力),②筋道を立てて考える力(論理構成力),③論理的整合性のある表現をする力(論理的表現力)等から構成される.本研究では,教師が学習者に提供する概念マップの構成要素(キット)を学習者が組み立てる作業(ビルド)として行う方式であるキットビルド方式に基づき,学習者の能力に応じた学習活動とその活動に対する評価の即時フィードバックを効果的に提供することで.論理的思考力を系統立てて高める論理的思考力育成プログラムを提案し.複数の題材を用いた論理的思考力育成システムとして実装し,評価実験により提案プログラムの有用性を示すことを目的とする. 初年度である2019年度は,主に(1)論理的思考育成を目的とした既存システムについて精査すること,および (2)学習者の特性・理解度の同定とその獲得手法の開発について研究を行った.具体的には,論理的思考力を構成する論理的読解力・論理構成力・論理的表現力ごとの育成手法の差異について検討するために,既存システムの(a)「フローチャートを活用した学習システム」をAndroid端末上で稼働するアプリケーションとして実装した.さらに,論理的読解力・論理構成力を主に育成する (b)「平面図形問題を用いた論理的思考力育成支援システム」と(c)「フローチャート組み立て課題を導入した論理的思考力育成システム」および論理的読解力・論理的表現力を主に育成する (d)「グラフを用いた問題解決プロセスを導入した論理的思考力育成システム」を開発しAndroid端末上のアプリケーションとして実装した.これらのシステムの実装により,問題のレベルや回答時に使う選択肢の数や種類,ヒント数や出し方を決める際に必要な学習者の特性・理解度を同定する基盤を作った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である2019年度では,キットビルド方式に基づき論理的思考力を系統立てて高められる論理的思考力育成プログラムを提案するための基盤を作ることができた.具体的には,既存システムである(a)「フローチャートを活用した学習システム」をAndroid端末上のアプリケーションとして移植した.また概要で述べた3システム(b),(c),(d)を開発し,Android端末上のアプリケーションとして実装することで,4システムを同一プラットフォーム上で統一的に扱えるようにした.これにより既存システムを充実させると同時に,系統的に論理的読解力・構成力・表現力を育成する効果的な論理的思考力育成プログラムを検討する基盤を作ることができた.つまり,学習者にこのシステムを実際に利用してもらうことで,学習者ごとの学習データをとることができるようになった.各学習者の理解度や特性に応じた適切な問題レベル,回答時に使う選択肢の数や種類,ヒントの 数や出し方を決めるための指標について検討するための土台を作ることができた.今後,論理的読解力・構成力・表現力の向上に関し,いろいろな題材を使用した既存の論理的思考力の育成方法についてさらに精査し,機械学習を用いた学習者の特性・理解度の同定とその獲得手法の開発を行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い,キットビルド方式に基づき論理的思考力を系統立てて高められる論理的思考力育成プログラムを提案するため,2020年度以降も (1) 論理的思考育成を目的とした既存システムについて精査することと (2) 学習者の特性・理解度の同定とその獲得手法の開発についての研究を継続する.また,(3) 系統的にまとまった論理的思考力育成プログラムの開発に取り組む.この研究テーマ(3)は研究テーマ(2)で得られる学習者の特性・理解度から学習者の能力を推定し,複数の題材をどのように組み合わせ,かつ問題レベルや選択肢の数などを設定するとよいかを学習者ごとのプログラムとして提示する方法について検討する必要がある.このため,今後は研究テーマ(2)をさらに推進していく予定である.それには,Android端末上のアプリケーションとして開発した論理的思考力育成システム(a), (b), (c), (d) (研究実績の概要参照))を動かすAndroid端末の追加が必要となる.さらに各論理的思考力育成システムを用いて得られる学習者の情報から学習者の特性や理解度を推定するシステムを開発するためのサーバーを購入する必要がある.このサーバーは2019年度末に購入を予定していたが,COVID-19(新型コロナウィルス)の影響により購入を延期していたものである.購入できるようになるまでは現有パソコンでの開発を継続していく.また,これまでに得られている研究成果は,新型コロナウィルスの影響が収まり次第順次国内会議・国際会議で発表し,雑誌等に投稿していく予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)クラウドコンピューティング環境下で,学習者の特性・理解度を学習状況から把握し適切なプログラムを提示しかつ様々な情報を一元管理するためのサーバーを2019年度末に購入する予定にしていたが,新型コロナウィルスの蔓延による世界的な経済活動の停滞により,購入予定のサーバー機の価格が上昇し予定価格を超過した上,納期未定の状況となった.このため,2019年度での購入を諦め,2020年度に購入を延期したため,物品費が抑えられた.また,新型コロナウィルスの影響により,国際会議・国内会議が中止や延期となったため,予定していた旅費の執行残が出てしまった. (使用計画)新型コロナの影響のため延期していたサーバーの購入を行う予算に充当する.また,新型コロナウィルスの影響が収まったら順次国際会議や国内会議が開催されるようになると思われるため,2019年度で得られている研究成果及び今後得られる研究成果を国際会議・国内会議等で発表するための旅費と参加費,雑誌等への投稿費に充当する予定である.
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Research Products
(2 results)