2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of mobile phone on vision and autonomic nerve system
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19K03061
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
原 直人 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (30265699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 泰彰 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助手 (20787791)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デジタルデバイス / スマートフォン / 調節 / 自律神経 / 斜視 / 輻湊 / 心拍変動 / 光過敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルデバイス使用による内斜視化の検討:Head Mounted Display(HMD)を用いたVirtual Reality(VR)映像の20分間の視聴実験により内方偏位すること(内斜化)が示された。短時間視聴であっても輻湊眼位に影響することが分かった。ゲーム依存症に伴う急性恒常性内斜視2症例の臨床的特徴を報告した。本疾患の発症機序は近視の未矯正や低矯正により輻湊運動の過剰によるとされているが、本2症例には遠視+下斜筋過動症の合併を認めることから何らかの斜視素因を持つものが近見視の継続により更なる内斜視化していくという仮説を抱いた。また脳障害であるゲーム依存症自体が、内斜視発症に起因している可能性もある。次いで高校生を対象とした「スマホ使用の実態と視機能異常」を調査した。この中に内斜視は全く存在しないことが判明した。この結果は、長時間のスマホ使用でも内斜視化はせず、近見反応の適応変化だけでは説明できないことを示唆している。一方で、若年者でありながら6D程度の低調節力を示したもの多かった。若年正常者を対象として、屈折異常別に近見縮瞳率と調節反応量を検討したところ強度近視に比べて正確な調節反応を示しかつ近見縮瞳することが分かった。 デジタルデバイスによる光過敏の予防法としての「遮光」を検討した。VDT作業時装着する「高性能フィルター」による片頭痛患者(4名)の頭痛発作抑制効果を検証した。デスプレイの輝度を低下一方で、コントラスト感度を向上させることにより視認性が向上するため頭痛の頻度と程度が軽減できる。光過敏や眼周囲不快感・眼疼痛を訴える「眼球使用困難症」9症例(34歳-62歳;男3名・女6名)の存在を報告した。遮光眼鏡を装用による光過敏の予防が必須であった。発症機序としては視覚領域の高次脳機能障害が示唆された。以上、これまでの研究により判明したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デジタルデバイスの身体への影響としては、①近見反応のICT環境への適応変化、②光源の注視による光過敏としている。①近見反応のICT環境への適応変化について:Head Mounted Display(HMD)を用いたVirtual Reality(VR)映像の視聴により内方偏位したことから短時間視聴であっても輻湊眼位に影響することが分かり、スマホ内斜のメカニズムが長時間の繰り返しの画面注視により近見反応の適応の可能を示唆することができた(第75回日本弱視斜視学会・浜松)。恒常性内斜視患者若年者2症例の発表(第75回日本弱視斜視学会・浜松)から、手の届く範囲内での自己の生活圏(peri-personal space)への適応変化から内方偏位(内斜化)の眼位保持を持続しているのではないかとする仮説を得ることが出来た。しかし、正常な高校生集団においてスマホの平均使用時間が4時間であっても内斜視は一人もないことが明らかとなった。これは極めて貴重な調査であった。これらの調査と報告に関する論文を現在執筆作成していて近日中に投稿の予定である。次に、②光源の注視による光過敏について:デジタルデバイスや照明による発症する光過敏性頭痛に対する高性能フィルターの遮光効果を報告した(第47回日本頭痛学会)。短波長470nmの分光透過率を軽減することが効果的であることが分かった。次いで、情報機器画面・照明などICT環境下で光過敏や片頭痛発作が誘発される患者(眼球使用困難症・保有視覚を阻害する中枢性の感覚障害因子)の存在を報告した。本件に関する論文(2件)は執筆中である。以上、研究計画事項は進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・スマホ内斜視は、peri-personal spaceに対する適応変化との仮説から、近見反応とは反対となる反応としての「遠見反応」について、開散運動、遠見調節の相違から正常者との比較検討を行う予定である。内斜視患者の輻湊と開散眼球運動を記録し、その眼球運動動態、潜時や速度を測定解析を行う。正常者との比較を検討して、急性恒常性内斜視のメカニズム(スマホ内斜視)を開散運動の相違から検討することで、その発症のメカニズムを探ることが今後の方策である。実際の患者の手術前後の評価を行ことが理想的な研究手法と考える。 ・デジタルデバイスの違いによる視機能および心自律神経系の影響を調べる。スマホ、タブレットPCなどのデバイスによる読書と通常の読書との自律神経への影響の相違を探る。特に調節機能といった眼自律神経への影響、身体への影響をブルーライトと言った光から検討する予定である。
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Causes of Carryover |
<使用額が生じた理由>実験に使用したデジタルデバイスが高額でなかった、①バーチャル・リアリティー映像呈示装置がゲーム性を持たせた簡易型装置を使用したため価格が比較的安価であったこと、②デバイスの比較検討したタブレットPC(ipad およびkindle使用)の価格が比較的安価であり、一台ずつの購入のため。また心拍変動解析ソフト開発費を他研究費から支払いが可能であったため。 <今後の使用計画>スマホ内斜視に対する開散運動の不全の解析ソフト(潜時、速度など精密解析の必要性がある)開発に使用する予定である。また国際学会(The Association for Research in Vision and Ophthalmology Annual Meeting, 2021 in San Franciscoを予定)発表での旅費・学会参加費などに使用する、また文献作成費用、参考文献複写費、翻訳代金などに使用を計画している。
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Research Products
(14 results)