2020 Fiscal Year Research-status Report
Development and Evaluation of a Instruction Support System for Self-regulated Learning Skills
| Project/Area Number |
19K03066
|
|---|
| Research Institution | Tokyo University of Science |
|---|
Principal Investigator |
渡辺 雄貴 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (50570090)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御園 真史 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (60467040)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 教育工学 / 自己調整学習 / ナッジ / 数学教育 / インストラクショナルデザイン / ICT活用教育 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は，中等教育における授業において，各学習者がタブレットにデリバリされた教材を閲覧しながら授業を受講し，ノートテイキングを行う中で，学習者同士で能動的な学習を促すことが可能なシステムを開発・評価するものである．また，学習を促すだけでなく，学習者の自己調整学習（Self-Regulated Learning：SRL）能力の循環過程を授業内で回し，学習方略に関して他者からの援助を得ながら学習者の自己調整学習能力の向上を目的として開発される．学習を促すことに関しては，学習者に情報を与え，援助を行うことから，行動経済学の分野で盛んに研究されているNudgeを教育に援用し，学習の促しの実現を測る．本研究の目的を達成するため，研究全体を3テーマ（タブレット端末におけるノートテイキングの基礎研究・システム開発・システムの効果測定）に分けて，順番に取り組む.
2020年度は，中等教育における２度の実践からシステム評価を行なった．実践１では，システムが授業内の学習を促すかに関して，ユーザビリティ評価やナッジ理論に基づいた質問紙および，ノートテイキングの学習ログから調査を行なった．分析の結果，学習者は，「他者のノートテイキング情報が可視化されることで，自分もノートを書こうと思う」ことや，実際の下線や板書の記述量も増えていることから，システムの活用によって授業内でナッジが発生し，学習者間でノートテイキングや学習を促進し合うことが，意識面，行動面の両側面から示された．実践２では，教師は授業中の学習者の理解度や進捗を把握しづらいという課題に対する有効性を検証するため，システムが授業者に与える影響に関してインタビュー調査を行なった．調査の結果，システムの可視化機能によって，特に学習者の分からない箇所を把握することができ，可視化された情報をもとに教え方を工夫するなど，授業を再展開することが示された．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では，一人一台タブレット端末を使用できる中等教育のフィールドを確保する必要があったが，高等学校の協力があり，実践および，データ収集をすることができた．隔月で行なっている研究打ち合わせでは，数学教育学的な観点からどのように授業実践を行うかを検討し，教育工学的な理論やモデルをベースに授業指導案を作成した．さらに，システムの有効性を拡張するため，数学のように階層的構造により構成された科目であるプログラミングに関して実践を行うことも考慮し議論した．また，調査に関する測定方法や評価方法について量的・質的の両側面から検討し，質問紙およびインタビュー項目を決定した．収集したデータの分析に関して，統計的信頼性やロバスト性を考慮し，分析を行い，学習ログを含めた結果を共有し，考察を行なった．本実践結果に関しては，研究代表者・分担者が，成果を段階的に国内外の学会において，報告・発表しており，本研究についてあらゆる観点から意見交換を行い，研究の一助となっている．これらを踏まえて，本研究はおおむね順調に進んでいる．
|
| Strategy for Future Research Activity |
前述のように，研究の進捗はおおむね順調である．したがって，本研究最終年度にあたる2021年度も，申請書に記載した研究計画に従って進めていく．2020年度の実践研究から，主にユーザビリティ向上に向けたシステム改善が求められている．例えば，ペンやマーカーの色を増やすこと，より直観的に削除できるようにすること，電子書籍のようなページめくりを可能にすることなど，ノートテイキング機能の使いやすさを向上することが求められる．また，可視化の色を学習者自身で決定できるようにし，色覚異常や可視化によって学習への注意が散漫になってしまう学習者への負担を軽減することが必要である．
また，本研究に援用しているナッジによって，授業内で学習やノートテイキングが促進されるという結果を踏まえ，2021年度は本システムを活用して，自己調整の循環サイクルが授業内で機能しているかに関する研究を行う．現在，ナッジ，ノートテイキング，自己調整学習それぞれの関連性および，これらの向上を測るための測定方法を検討中である．
|
| Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症対策において，国内外の学会がオンライン開催になったため，旅費の支出がなかったため，計画に変更が生じた．
|
Research Products
(7 results)
