2020 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害時の薬事対応を協働構築するための学習プログラムの実証研究
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19K03071
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
江川 孝 福岡大学, 薬学部, 教授 (70369023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 稔展 福岡大学, 薬学部, 准教授 (20630718)
中野 貴文 福岡大学, 薬学部, 助教 (40804539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | e-ラーニング / 災害医療 / 薬剤師 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、薬学生・薬剤師を対象にした災害薬事研修にバーチャルリアリティ(VR)技術による体験型e-learning 教材をPBL型演習に導入し、その学習効果を確認した(江川ら, 16th ACCP, Korea, 2016)。本研究は、災害薬事における災害時薬事概況報告システムと連携した災害薬事のためのe-learningを開発することに加え、e-learningとIoT技術が連携したPBL型災害薬事実働演習により災害時に適切な医療が提供できる人材育成を強化するものである。計画している具体的な研究項目は、①災害薬事における医薬品供給体制をモニタリングするための薬剤版J-SPEEDの開発とe-learningへの展開②災害時処方箋調査による薬剤版J-SPEEDの後ろ向き検証と災害薬事e-learning コンテンツの作成③災害薬事e-learningと連携した災害薬事実働PBL演習方略の構築、④VR教材と連携したモバイルe-learningの学習効果の検証と評価、の4つである。本申請者らは、すでにVR技術による体験型e-learning教材を作成しているが、本研究では、学習者が災害薬事の問題点を後ろ向きに検証して問題点の抽出を行う方略を構築するため、薬剤版J-SPEEDを開発し、J-SPEEDとの整合性を検証する。上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに、本研究は災害医療における薬事対応力を向上させるために薬剤版J-SPEEDを開発してe-learningとIoT技術を融合させる基礎的研究を完成し、e-learningによって災害時に適切な薬事支援が提供できる人材を育成するための基盤となる研究を行う。研究期間内には、災害時薬事概況報告システム(薬剤版J-SPEED)の開発、災害薬事e-learning コンテンツ作成と薬剤版J-SPEEDの評価および災害薬事e-learningによる反転授業とIoT技術を活用した災害薬事実働演習方略の構築のことを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被災地に駆けつける多数の支援チームは自己完結を旨とし災害調整本部への報告する能力や余力を保有しているが、従来、標準化された報告手法がなかったために、その力は活かされてなかった。この状況に対処するために、フィリピン国保健省とWHOが共同開発した報告手法がSPEEDであり、この報告手法をモデルに、我が国の災害医療分野で開発されたのが日本版SPEED (J-SPEED)である。申請者らが着想を得たJ-SPEEDは、被災地に参集する災害医療チームの活動日報を作成するための標準手法として、2011年の東日本大震災を契機に設置された「災害時の診療録のあり方に関する合同委員会」(日本医師会・日本集団災害医学会・日本病院会・日本診療情報管理学会・日本救急医学会・国際協力機構(JICA)の6団体で構成 )が提唱している。本研究の独創的な点は、災害時の薬事情報分析を行うための災害時薬事概況報告システム(薬剤版J-SPEED)を開発し、薬剤版J-SPEED運用のためのe-learningによる反転授業で災害時処方箋を用いた検証を行い、IoT技術を導入したPBL型実働演習と連携させて災害薬事対応能力の学修を推し進めるとの着眼にある。 2020年より、わが国で蔓延している新型コロナウイルス感染症の流行により、対面での研修が制限される中で、参加者の感染に配慮して福岡県、長崎県、山口県にて災害薬事コーディネーター研修を開催することが出来た。研修では薬剤版J-SPEEDの基盤となるExcel版の試用を進め、評価項目のブラッシュアップを行った。しかし、研究室内での活動が制限される中で市販のソフトウェアを用いたe-learningコンテンツの作成に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題にて作成する災害薬事e-learningは、IoT技術を活用した災害薬事実働演習に用いられる。学習者は、①災害時の薬事についてe-learningによる反転授業から知識・技能を習得した後に②過去の災害で抽出された薬事案件をシナリオにしたPBL型演習を行う。さらに、③模擬災害のフィールドワークで学習者の行動をGPSで位置情報を追跡して学習者の行動変容を測定し、④災害薬事e-learningにフィードバックする。現在、福岡県、長崎県、山口県にて災害薬事コーディネーター研修を開催することが出来たが、実働研修の実施に至っていないため、新型コロナウイルス感染症の宿泊療養活動のe-learningコンテンツのβ版を作成する予定である。また、学外サーバーを活用して災害薬事e-learningコンテンツの作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
発注した消耗品が見積もり金額よりも安く購入できたため、2021年度に研究成果報告ための出張費として使用したい。
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Research Products
(6 results)