2021 Fiscal Year Research-status Report
遊休資源を利用して高スケーラビリティを実現するe-Learningシステム
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19K03081
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
川村 尚生 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (10263485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 健一 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30399670)
菅原 一孔 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90149948) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | e-Learning / 分散システム / 遊休資源 / ストレージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発を進めている分散型e-Learningシステムは、昨年度までで基礎的な開発および研究室内の小規模な環境での動作確認を完了している。本年度は、比較的大規模な環境で実験し、性能をチューニングするための環境構築を行った。比較的大規模な環境とは、研究代表者らが属する学科の計算機演習室で、約80台のコンピュータが利用可能である。 この規模の台数において、例えば全台においてユーザが同時にログインしたり教材をダウンロードした際の遅延を計測するといったテストを人手で行うことは困難なので、テストシステムを開発した。これは、専用のスクリプト言語によってテストシナリオを記述することで、さまざまなテストを自動実行し、そのログを収集するものである。 また、テストシステムが出力したログをわかりやすく視覚表示する可視化システムを構築した。これによって、各ノードの参加離脱によりネットワークが変化する様子や、各ノードにおいてメモリやCPUなどの資源がどの程度使用されているかといった情報、さらに、各ノードの応答時間や、システム全体へのリクエストが各ノードにどのような割合で割り当てられているかといった情報を確認できる。 今年度開発したテストシステムと可視化システムに、前年度開発した性能評価システムを組み合わせることで、比較的大規模な環境下で各種実験・性能評価を行う環境が構築できた。 実際に簡単な動作実験を行い、分散型e-Learningシステムが、ノードを増やすことで応答時間が減少するといった、期待されるスケーラビリティを有することを確認した。来年度において本格的な性能評価を行うための基礎的な準備が整ったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では研究期間の4年間を半分ずつにわけ、前半2年間では研究室レベルでの比較的小さい実験環境においてシステムを開発・実験を実施し、後半2年間では比較的大規模な実験環境において実験・性能評価および改良を行うことを目指している。 開発するシステムの実現には大きく3つの課題があるが、このうち、コンピュータがe-Learningシステムに動的に参加・離脱する手法の開発、コンテンツを分散管理する手法については、基礎的な開発は達成できた。本研究の特色である、他の用途で使用されているコンピュータの遊休資源をシステムに組み込む技術も基礎的な開発は達成できた。 また、比較的大規模な実験を行うための準備として、性能評価する仕組みや、ボトルネックを発見するための分散トレーシングシステムの基礎的な開発、シナリオに基づいて自動テストを行うためテストして有無の開発、その可視化システムの開発を行った。 ただ、残る3つ目の課題である、コンテンツのセキュリティを確保する手法の開発については文献調査の段階であり、具体的な成果はあげられていない。しかしながら、本研究の本質的な部分は予定通り進捗していることから、現在までの進捗状況は、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により、分散型e-Learningシステムの基礎的な開発は概ね完了している。また、性能評価システム・テストシステム・可視化システムからなる実験環境も構築できている。 しかしながら、遊休計算機についての対応については、分散型e-Learningシステムにも実験環境にも、課題が残されている。遊休資源の特徴は、本来の仕事に資源が回されることにより頻繁に増減することと、本来の利用者の挙動によってシステムから不意に離脱することの2点である。現在の性能評価システムやテストシステムはこれらへの対応が不十分なので、その点を改良しなければならない。分散型e-Learningシステムそのものについても、遊休資源の特徴を踏まえ、実験と性能評価を通じて、資源割り当てアルゴリズムやコンテンツの複製配置アルゴリズム等を改良する。 これらの実験・開発を、80台程度のコンピュータを有する計算機実習室と研究代表者らの研究室にまたがる実験環境で実施する。これまではひとつのLANで閉じた実験しか行っていなかったが、今後の実運用を見据え、複数のLANにまたがるネットワークで実験を行う。 本研究計画で、現時点ではあまり手がついていない唯一の目標は、コンテンツのセキュリティを確保する手法の開発である。これについては後の開発に向けての問題点を整理する。学習用のコンテンツが遊休資源を含む多数のコンピュータ上に分散配置されることから、無断で複製されることを防ぐといったセキュリティ確保を目指していたが、現時点では、組織内の遊休資源のみを利用することを想定しているので、コンテンツのセキュリティが確保できなくても分散型e-Learningシステムを運用できると考える。ただ、コンテンツのセキュリティ確保は、組織外の不特定の遊休資源を利用するようにシステムを拡張する際には必須となるので、今後の課題として問題点を整理する。
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Causes of Carryover |
実験や開発に必要なスマートフォンやタブレットは概ね予定通り購入して研究を進めることができた一方で、今年度予算の大半は国際会議への参加に要する費用に割り当てていたが、COVID-19のために海外出張が事実上不可能になったため、旅費および国際会議参加料をほとんど使うことができなかった。翌年度の旅費として使用するつもりだが、状況によっては物品費に算入し、サーバやクライアント機器の購入費用等に充てる。
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