2019 Fiscal Year Research-status Report
クラウドを活用してピアレビュー分析にまで学生が関わるプロセスを取り入れた協働学修
Project/Area Number |
19K03089
|
Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
二瓶 裕之 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (70433422)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | クラウド / ピアレビュー / 協働学修 / ルーブリック / 課題解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クラウド技術を利用しながら、協働学修に「ピアレビューの分析にまで学生が関わるプロセス」を取り入れることで、ピアレビューの確実性を高め、さらに、学生の主体性や自律性を醸成することを目的としている。本年度は、研究実施計画に沿って、授業の設計、学修環境の構築、そして、実験的な授業実践を行った。 授業設計に関しては、授業計画(シラバス)を作成してホームページに公開した。また、学修環境の構築に関しては、ipad40台を導入し、様々な教室でクラウドを利用できるようにした。 実験的な授業実践としては、まず、クラウドアプリケーションの共同作業機能を使って、クラウド空間でグループのメンバーが互いの意見を出し合ったり、意見をまとめるなどのグループワークができることを確認した。また、グループワークにおける学生ひとり一人の参加意欲が向上することも確認できた。これらのクラウドアプリケーション活用の可能性の高さは、招待講演などでも紹介している。 次に、ピアレビューの事前実験授業として、学生が互いに実験者や被験者となる同僚間アンケート調査を取り入れた問題発見課題解決型協働学修を実践した。その結果、アンケート調査と他の調査方法を組み合わせた多面的な分析ができるようになり、質問を適切に設定する調査能力も向上するなど課題解決能力が高まったことなどが確認された。本件を報告した論文は私立大学情報教育協会賞を受賞した。 さらに、クラウドアプリケーションを活用したピアレビューを実施した。ピアレビューにより他者の多様な観点を自身のレポートの参考にできたなどの意見もあり、学生の気づきを促す効果を確認した。加えて、学生自身がルーブリック評価表を作るグループワークをピアレビューに取り入れることで、ピアレビューによる気づきを自身のレポートの改善に役立てられるようになるなどの効果も確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
授業設計は、実施可能な学修計画として検証も済んでおり、シラバスとして学外にも公開されるに至っている。 また、学修環境に関しても、本学情報センターでipadの管理システムを導入したり、全学FD研修でクラウドアプリケーションの講習会を開催したりすることで、多様な授業科目でクラウドアプリケーションの活用が進むなど、今回構築した学修環境の利用が全学的な広がりを見せるに至っている。 授業実践に関しても、まず、グループワークでクラウドアプリケーションを活用することで、学生ひとり一人のICTスキルに寄らず、全ての学生が協力してグループプロダクトを作るなどの効果を確認することができた。また、同僚間アンケート調査を取り入れた問題発見課題解決型協働学修でも、アンケート結果の分析にクラウドアプリケーションであるオンライン電子ボードを導入することで、ディスカッションの活性化が図られた。このように、ピアレビューの事前実験授業として行った授業実践においても、グループワークへの学生への参加意欲の向上などの副次的な教育改善効果を得るに至っている。 さらに、クラウドアプリケーションを活用したピアレビューを実施し、加えて、学生自身がルーブリック評価表を作るグループワークもピアレビューに取り入れるといったように、ピアレビューの授業実践を重ねることができた。最終的に、2019年度の段階では、ピアレューの集計結果を基に、学生ひとり一人が振り返りをする段階にまで至ることができた。 以上の成果から、協働学修に「ピアレビューの分析にまで学生が関わるプロセス」を取り入れることを目指している中で、初年度に、ピアレビューの結果を学生が集計して、振り返りを行うまででき、さらに、クラウドアプリケーションを活用することによる副次的な教育改善効果を得ることができたことなどから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、ピアレビューの確実性の検証に向けて、協働学修に「ピアレビューの分析にまで学生が関わるプロセス」を導入できる授業を設計して、授業実践を図ることを目指す。しかし、1つの授業科目の限られた時間では、ピアレビューの分析にまで至るのが難しいことが予想される。そこで、授業内容を考慮したうえで、複数の授業科目を連携しながら、ピアレビューの分析にまで学生が関わるプロセスを実施する準備を整える。 すでにピアレビューを実施している授業科目は文章指導などのリメディアル科目であるが、これと、情報処理演習や情報科学などの情報リテラシーを扱う授業科目との連携を図る。特に、2020年度以降は、情報処理演習や情報科学を数理・データサイエンス・AIの共通基盤教育を担う科目として位置付けており、このような授業内容の特性を生かすことで、ピアレビューのより踏み込んだ分析ができるようにする。 ただ、そのためには、連携した授業科目の実施時期を考慮したり、ピアレビューに関わるデータを引き継いだりするための方策が必要となるが、このような授業科目連携の取り組みは、いままでに実施してきた経験があり、主に、LMSなどを活用しながら円滑な授業科目連携を図る。 さらに、研究を遂行する上での課題となるのが、2020年度、本学が所在する北海道においても、コロナ感染症対策としてオンライン(遠隔授業)形式で授業が実施されていることである。オンライン形式では、グループワークの実施が難しくなると考えられているが、2019年度の研究成果にもあるように、本研究では、クラウドアプリケーションを活用したクラウド空間の中でのグループワークによる教育改善効果も検証している。この成果を基に、たとえオンライン形式であっても、ピアレビューを実施したり、グループディスカッションを通してピアレビューの分析ができるような仕組みを構築することを目指す。
|
Causes of Carryover |
2019年度末に、日本教育工学会、薬学大会などの出張旅費を計上していたが、コロナ感染症対策の一環として、北海道外への出張ができなくなったために次年度使用額が生じた。 2020年度には、各種学会がオンライン開催される可能性がある。そこで、2019年度に旅費として計上していた予算をオンライン開催される学会で発表するための予算として計上し、2020年度の使用額とあわせて、遠隔地からのライブ配信による学会発表を円滑に行うための機材も整備する。さらに、この機材を用いて、コロナ感染症対策として実施されるオンライン形式での授業におけるグループワークも実施できるようにする。これにより、オンライン形式でピアレビューを実施したり、グループディスカッションを通してピアレビューの分析ができるようにする。
|
Remarks |
私立大学情報教育協会「2019年度のICT利用による教育改善研究発表会」で「私立大学情報教育協会賞」を受賞した研究内容などに関するWebページ
|
Research Products
(9 results)