2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Improvement of Instruction about Electricity through Elementary School to Secondary School
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19K03109
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
伊東 明彦 宇都宮大学, 共同教育学部, 特命教授 (70134252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 明子 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (70515981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 理科教育 / 科学教育 / 物理教育 / 電気概念の獲得 / 電圧概念 / 電位概念の導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の蔓延のため,学校現場の協力を得ることが困難で,調査及び授業実践を計画通り実施することができず,小中学校において小規模な概念調査を実施するにとどまった. 中学校における概念調査からは,電気単元を学習後の中学生において,電圧概念がほとんど形成されていないことが改めて示された.例えば,抵抗のない導線部分には電圧がかからないこと,及び,電流が流れていないときには抵抗にかかる電圧が0Vであることは全く理解されていないことが分かった.これらの事柄を正しく理解するためには,電圧が回路内の2点間の電位差であることを理解することが不可欠である.すなわち,本研究で我々が主張している中学校における電位概念の導入が不可欠であることが改めて示されたものと考えられる. 一方で,我々の過去の研究からは,試験的に中学生に電位概念を教えた場合,電圧は容易に測ることができるが電位自体は測ることができないため,電位の導入が困難であることが明らかになっている.そこで,電位概念を直感的に理解してもらうため,回路内の様々な部分の電圧を自由に測定できるよう,裸銅線とニクロム線によって構成した直列回路(仮に電位測定回路と呼ぶ)を用いた授業計画を策定した.次年度はこの電位測定回路を用いた授業実践を行い,電圧概念の理解が促進されるかどうかを検証することとした. また,小学生に対する調査からは,乾電池の並列つなぎと直列つなぎにおいて豆電球の明るさが違うことの原因を説明することが困難であり,このことが理科の授業では丸暗記が必要という望ましくない概念を小学生に植え付けかねないということを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年までの研究により,小学生や中学生の電気単元の理解度や,電圧概念の形成の実体が明らかになり,改善のための授業計画の策定を行ったが,新形コロナウィルス感染症の蔓延のため,学校現場と連携した実践的な研究を行うことが困難であった. そのため,研究期間を1年延長し,令和4年度に策定した新しい授業計画に基づく授業を実践することによって,提案の有効性の検証を行うことした.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,電気単元における小中学生の概念形成上の問題はかなり明確になってきた.したがって,令和4年度は学校現場との連携をさらに深めつつ,令和3年度までに策定した授業計画の実践を目指して研究を行う.次年度の研究において目標とすることは以下のとおりである. (1)小学生に電圧を導入することにより電気単元の理解が促進されることが示されているが,一方では電流と電圧という紛らわしい概念を導入することにより小学生が混乱することも懸念されている.よって,小学生に電圧を教えることの功罪をより具体的に明らかにし,電圧導入のための望ましい授業計画を策定する必要がある.そのため,授業実践とその後の概念調査を行い,よりよい授業計画を提案する. (2)現行の中学校の理科では電圧概念を明確に教えていない.電圧がエネルギーの高さ,つまり「電位」を表すことを実感を持って理解させることが極めて重要であるが,そのための授業の在り方についてはいまだに研究が不十分である.令和4年度においては,学校現場と連携して,考案した「電位測定回路」の有効な利用方法について実証的に研究する. (3)新型コロナウイルス感染症の蔓延を想定した「新しい生活様式」に対応するよう,ICT教材の開発,ウェブサイトを通した情報発信などにも取り組む。
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Causes of Carryover |
令和3年度においては,新形コロナウィルス感染症の蔓延のため,旅費の支出が0円であった.また,学校現場と連携した授業実践も実施することができなかった.そのため,繰越金が発生し,さらに研究計画を実現するため1年間の期間延長が必要となった. 令和4年度には学校現場と連携した調査,授業実践を可能な限り実施することとする.研究経費はこれらの実施のために用いる. 一方,この2年間のコロナ禍によって,学会等の研究発表はインターネットを利用したリモート発表が増えており,その傾向は令和4年度以降も続くものと考えられる.よって,旅費として計上していた予算は,授業実践のための教材費やウェブ教材の開発費などに転用し,効果的に研究推進を行うとともに,成果発表のための経費に多く充てることとする.
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