2019 Fiscal Year Research-status Report
教員グループの協働により探究能力を育成する授業研究ネットワークの構築
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19K03115
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 探究能力調査 / 授業研究 / スーパーサイエンスハイスクール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中等教育の理科・数学の通常の授業において,科学探究能力を育成する指導法を開発することを目的としている。4か年の1年目である2019年度は次の3点について研究した。 (1)理数教育で先進的な研究を推進し,特に探究活動の指導に力を入れているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の探究活動の指導法を調査した。SSHを訪問する実地調査と研究開発実施報告書の調査に加えて,本研究のために開発した探究能力調査ツールを用いて,全国17校の高等学校と中学校2校を対象に調査した。これまでに得られた16000名の調査データを分析した。科学探究能力を6つのカテゴリーに分類し,カテゴリー別に能力を定量した。学校間の差は大きく,6つのカテゴリーのすべてカテゴリー間で能力値に正の相関が認められた。一方,学年間や学級間の差は学校間に比べて小さく,通常の教科の学力である学習評価と,本調査の結果は強い相関があることがわかった。特に探究活動の指導法と探究能力の関係を求め,通常の授業に適用可能な要素を抽出した。 (2)探究活動を取り入れた授業法を研究する教員間の授業研究ワーキンググループ(授業研究WG)を立ち上げた。小学校2校,中学校3校,高等学校2校,大学1校から,計14名の教員が参加し,探究活動を取り入れた授業研究の計画の立案と評価ツール開発を開始した。 (3)日本で開発した探究活動を取り入れた授業方法をカンボジアとミャンマーに普及させ,その効果を検証するために,WGを構築した。カンボジアの高等学校,中学校,小学校および大学の教員,ミャンマーの教員養成大学および高校教員で研究計画を立案した。カンボジアの小中学校の理科授業を現地調査し,教授法を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中等教育の理数の授業に,効果の高い探究活動を取り入れた正課の授業パッケージの開発を目的に,以下の通り推進している。 (1)科学探究活動の教育効果を測定するために,これまで自由記述式の探究能力調査と,評価基準からなる評価ツールを開発した。科学探究能力を6つのカテゴリーの分類し,カテゴリー別に定量的に測定可能なものである。異なる指導法で教育されている学校間,学年間,学級間の比較ができ,複数回の測定により能力の変容の測定も可能である。2018年までに得られた12000人のデータを整理し,評価基準の問題点の抽出と,解決策の検討と修正および,再集計を行った。採点時間の短縮を志向して評価ツールの改訂を検討している。 (2)異なる学校種の理数教員が参加する授業研究WGを構築した。これまでに得られた探究能力調査の結果やSSHにおける探究活動の指導法,授業における展開例を共有した。授業の評価法の開発を開始しており,研究授業において実践する計画を立案した。 (3)カンボジアの小学校および中学校5校を訪問し,理科授業の映像と教員への質問紙調査のデータを得た。日本の公立小学校の理科授業と比較し,カンボジアの理科授業では探究的要素や学習者の主体的な活動がほとんど取り入れられていないことを明らかにした。ミャンマーの教員養成系大学と,高等学校の教員に科学探究能力調査を普及し,同国で実施する準備を進めている。ミャンマーの大学教員を対象とした物理実験教育ワークショップを開催し,探究活動を取り入れた授業と評価について普及活動を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)科学探究能力調査の評価ツールの修正版を用いて,これまで1校で1000人程度の大規模で調査を行ってきた3県のSSHの4校と非SSHの1校を中心に調査を継続し,指導法と変容の詳細を明らかにする。効果に認められた方法を他校で実践し結果を比較するとともに普及させ,正課の授業で活かせる教材を作成する。授業における評価ツールの開発も並行し,実践と評価ツールを用いた評価,改善,再試行を繰り返す。 (2)授業研究WGで高等学校の成果をもとに開発した教材を,小中高の授業教材に応用し,実践する。2020年現在,コロナウイルス感染症により対面での調査や実践がやりにくいことも想定されるため,オンラインによる打ち合わせや遠隔授業による実践も含める。 (3)日本での実践を踏まえて,東南アジアでの打ち合わせや授業実践も遠隔授業を積極的に取り入れ推進していく。カンボジアおよびミャンマーの教員も授業研究WGに参加し,双方で教材の検討と実践,評価などの実践にあたる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の拡大に伴い,国内の高等学校の訪問調査ができず,オンラインによる調査に変更したため,一部次年度使用とした。次年度は状況を見極めつつ,現地調査とオンラインによる調査を並行して実施する計画である。
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Research Products
(10 results)