2020 Fiscal Year Research-status Report
教員グループの協働により探究能力を育成する授業研究ネットワークの構築
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19K03115
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 科学探究能力 / 探究活動 / 理数授業 / 中等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中等教育の理数教育において,科学探究能力を育成する指導法の開発を目的としている。4か年の2年目である2020年度は次の3点について継続して研究を推進した。 (1)理数教育で先進的な教育研究を推進し,特に探究活動の指導に力を入れているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の探究活動の事例と指導法を2020年度も継続して調査した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い,学校現場を訪問することがほとんどできず,実地調査は2校にとどまったが,web会議により指導にあたる教員と情報交換できた。研究開発実施報告書の調査に加えて,本研究のために開発した探究能力調査ツールを用いて,全国20校の高等学校と中学校3校を対象に調査した。これまでに得られた19000名超の調査データを集計し分析した。 (2)探究活動を取り入れた授業法を研究する教員間の授業研究ワーキンググループ(授業研究WG)で,探究能力を伸ばす要素を盛り込んだ正課の探究的な授業を設計し実践した。小学校2校,中学校3校,高等学校2校,大学1校から,計19名の教員が参加した。米国の授業評価ツールRTOPを基にしてルーブリック機能を有する評価法を開発し,実践した探究的な授業を評価し,効果を検証した。 (3)日本で開発した探究活動を取り入れた授業方法をカンボジアとミャンマーに普及させ,その効果を検証するために,WGで研究計画に基づいて立案したプログラムで物理学授業の教材を開発した。カンボジアを中心に進め,王立プノンペン大学の研究者と公立小学校,公立中学校,私立高等学校の教員からなる授業研究WGで,教員研修のための動画教材を作成した。COVID-19の状況から,オンラインで研究を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は中等教育の理数の授業に,教育効果の高い探究活動を取り入れた正課の授業パッケージの開発を目的に,以下の通り推進している。 (1)科学探究活動の教育効果を測定するために,これまで自由記述式の探究能力調査と,評価基準からなる評価ツールを開発した。科学探究能力を6つのカテゴリーの分類し,カテゴリー別に定量的に測定可能なものである。異なる指導法で教育されている学校間,学年間,学級間の比較ができ,複数回の測定により能力の変容の測定も可能である。2020年までに得られた19000人のデータを整理し,評価基準の問題点の抽出と,解決策の検討と修正および,再集計を行った。採点時間の短縮を志向して評価ツールを改定した。新しい評価ツールの妥当性評価を開始した。 (2)異なる学校種の理数教員が参加する授業研究WGを構築した。これまでに得られた探究能力調査の結果やSSHにおける探究活動の指導法,授業における展開例を共有した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け,2020年度はオンラインの方法で授業研究WGを推進した。RTOPを基にした日本版の授業評価ツールを開発し,大学,小学校,中学校の理科授業において実践し,評価ツールとしての妥当性を評価した。 (3)カンボジアの王立プノンペン大学の研究者と私立高等学校の理数教員を中心として,教員研修のプログラムを立案した。日本の中学校の理科授業における探究活動を基にした,授業紹介動画と研修用教材を開発した。カンボジアの小中学校の教員を対象としたワークショップを計画し,準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまで中学校および高等学校の科学探究活動の指導法と,生徒の科学探究能力の関係を調査してきた。意識・意欲の増進と,科学探究能力への効果が確認された。今後は同一の生徒集団における変容の調査に重点を置いて,調査対象を拡大するとともに,正課の理科授業における指導法と,探究能力との関係を調査する。このため,これまでに開発し使用してきた評価ツールを改訂する。2020年度にRTOPを基にして開発した評価ツールを用いて,授業の効果と改訂版の評価ツールの妥当性を評価する。これらの評価ツールを用いて効果が認められた授業方法を,他校で実践し結果を分析する。この流れを繰り返し,教育効果の高い指導法をパッケージにまとめる。 (2)授業研究WGで高等学校の成果をもとに開発した教材を,小中高の授業教材に応用し,実践する。開発した評価ツールを用いて効果を検証する。2021年現在も,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により,大規模な実施に困難が想定されるが,打合せ等はできる限りオンラインで遅滞なく進め,遠隔授業による実践も検討する。 (3)カンボジアの中学校及び高等学校教員を対象にした探究型授業の教員研修と模擬授業を実践する。カンボジアの教員を含めた授業研究WGにおいて,教材を開発する。双方で教材の検討と実践,評価などの実践にあたる。2021年度はオンラインによる遠隔授業で実施する。
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Causes of Carryover |
計画では中等教育の学校の実地調査にかかる旅費を計上していたが,2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴って,現地調査は中止しオンラインによる調査に方針を転換した。海外渡航も同様の理由でできず,オンラインでの準備にとどめたため次年度使用額が生じた。
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Research Products
(11 results)