2019 Fiscal Year Research-status Report
天文分野の理解度と思考力を向上させるための空間認識能力向上プログラムの開発と検証
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19K03117
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
大山 政光 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80332716)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 空間認識能力 / 天文分野 / 思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
初等・中等理科の天文分野を理解するためには空間認識能力が必要である。そこで、被験者の視線方向を軸とした回転に関する大学生の空間認識能力を調査した。本調査を実施するにあたり、回転角度の違いも含め調査問題を43問作成した。 大学生201名に対し、上記の調査を実施した。うち回答に不備があった13人をまず省いた。次に、本調査は回転に関する思考の調査を目的としており、勘で回答するなどの思考以外での回答者を省く必要がある。そこで、各問の後に尋ねた「問の意味を理解したか」という設問に「理解した」または「多分理解した」とすべての問で回答した116人を分析対象者として分析を行うこととした。 その結果、回転角度が180°における最も多い誤答(誤答A)と回転角度が180°以外の角度で最も多い誤答(誤答B)が異なることが分かった。そこで、まず回転角度が180°以外の角度において、回転角度と誤答Bの選択率の間で曲線回帰分析を行い、二次の回帰曲線が得られることを見出した。また、180°に関して補正を行ったところ、180°もこの回帰曲線にのることが分かった。 次に、回転角度が180°における最も多い誤答(誤答A)に関して、補正をした上で回転角度と誤答Aの選択率の関係を調べた結果、こちらも回帰曲線が得られることが分かった。これらの結果は、回転角度によって正答率、誤答率の割合は変化するものの、どの回転角度においても思考の仕方に共通性があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初等・中等理科の天文分野では、月の満ち欠けや天体の日周運動を学習する。それらを理解する上で、また、教員にとっては指導する上で必要な力の1つとして視線方向を軸とする回転に関する空間認識能力がある。本研究では、この天文分野の理解度と思考力を向上させるためのプログラムを開発していくことが目的である。 研究初年度では、前述の空間認識能力に関しての調査問題を作成し、学校教員を目指す大学生に対し調査を実施した。この調査において、回転角度が小さいときには正答に導く考え方ができているにもかかわらず、角度が大きくなるにつれて間違いが増加し、かつ、角度と正答率の間で回帰曲線が得られることを見出した。また、誤答に着目すると、最も多かった誤答のタイプでは角度が大きくなるにつれ選択される割合が増え、角度と選択率の間で回帰曲線が得られることが分かった。 これらの結果は、思考に関しての統計的な分析をした結果であり、今後の研究課題である天文分野と思考力を向上させるための空間認識能力向上プログラムを開発する上で重要な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020度は球体に関する個別調査を実施する予定である。しかしながら、新型コロナの影響により個別調査の実施が困難な状況である。そこで、昨年度までに実施した調査の中から球体に関する調査、および、天文分野の月に関する調査の分析を行う。 また、2019年度の研究において、回転問題における思考や誤答に関して新たな知見が見えてきた。そこで、これまでに実施した他の調査問題に関しての分析を進める。さらに、今後より詳細な研究も必要とするため、新たな調査問題の検討を行う。
今年度当初予定の研究内容は、2021年度以降の研究においても重要であるため、2021年以降においても研究内容の調整が必要となる可能性がある。
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Causes of Carryover |
使用額が生じた理由は、日本図学会で成果発表を予定していたが、本学の入試と重なり発表取りやめにしたためである。
今後の調査に向け、新型コロナに対応できる調査環境を整えるために使用する計画である。
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