2020 Fiscal Year Research-status Report
希少種の野生復帰を実施・計画する自治体におけるESD課題の析出と体系化の試み
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19K03121
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
本田 裕子 大正大学, 社会共生学部, 准教授 (00583816)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コウノトリ / 野生復帰 / ふるさと教育 / 兵庫県豊岡市 / ネコの適正飼養 / 長崎県対馬市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により現地調査が制限される状況であったが、2019年度に実施した調査研究についての結果の公表を進めるとともに、コウノトリの野生復帰事業に焦点をあて、調査研究に取り組んだ。具体的には、2005年9月に日本で最初の放鳥を開始した兵庫県豊岡市を対象に市民アンケート調査を実施した。アンケート調査の結果から、最初の放鳥から15年が経過した時点で、コウノトリおよび野生復帰が市民に肯定的に捉えられていることが確認できた。また、これまでの調査結果をふまえても、コウノトリを「地域のシンボル」とする捉え方が市民の中で継続していることがわかった。今回のアンケート調査の質問にあった将来のコウノトリとの関係について、生息数が「増えている」が最も多く選ばれる一方で「地域のシンボル」とすることも最も多く選ばれており、今後も豊岡市ではコウノトリを「地域のシンボル」としての捉え方が続くことが予想される。回答者の9割以上が野外でのコウノトリを目撃したことがあり、目撃の際の感想も好意的であり、それらの経験が野生復帰事業を評価する背景にもなっていると考えられる。 一方で、今後の豊岡市での野生復帰推進の課題では「住民の理解・協力」が最も多く選ばれていること等をふまえると、コウノトリの野生復帰の取り組みに関連する市民の具体的な活動の機会を設定していくことが必要といえる。コウノトリおよび野生復帰を肯定的なものと捉えながらも、現在のコウノトリの生息数や市内での巣立ち数についての評価を「わからない」とする回答、または野生復帰のための環境教育や啓発活動が市内で必要か、どの程度行われているかについて「わからない」とする回答が一定数あった。このような回答の背景として、市民がコウノトリや野生復帰について「知る・学ぶ」機会が十分でないということが考えられ、今後の検討課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査実施にあたり情報収集を含め、兵庫県豊岡市、長崎県対馬市等の自治体の協力を得ることができている。コロナ禍のため、現地調査への制限やデータ入力作業についての変更等もあったが、予定通り2020年11月に豊岡市民へのアンケート調査を実施することができたので、調査研究は円滑に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後について引き続き、野生復帰事業やツシマヤマネコの保護政策を中心に調査研究を行っていきたい。まずは2020年度に実施した兵庫県豊岡市へのアンケート調査について、その結果の分析についての公表を進めるとともに、特に豊岡市民への公開についてはコロナ禍ではあるが、意識啓発の側面も加えながら、工夫しつつ進めていきたい。 次に兵庫県豊岡市で取り組まれている「ふるさと教育」におけるコウノトリ学習について、これまでの調査結果を経年的にまとめて学習効果を検証していくとともに、コロナ禍ではあるが、学習効果についての新たな調査も工夫しながら実施したい。また、引き続き、はく製の教材利用の可能性を含め、教材論についても検討していきたい。 ツシマヤマネコの保護政策については、ツシマヤマネコ保護の現状とその意識啓発についての現状把握に取り組むとともに、全国的なノラネコをめぐる環境問題、ネコ適正飼養の政策の実施状況についての情報収集を進めていくことで、対馬市での取り組みの現状と課題についての考察をしていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため現地調査に行くことができなかったため。次年度は感染拡大状況を見ながら、現地調査を実施するとともに、これまでの調査結果を公表し、意識啓発についての取り組みもしていきたい。
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Research Products
(6 results)