2019 Fiscal Year Research-status Report
概念の深い理解を目指す科学教育カリキュラム開発のための小中高大協働研究
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19K03122
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
石井 恭子 玉川大学, 教育学部, 教授 (50467130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 吉英 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (30588570)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カリキュラム / 科学教育 / 概念理解 / 協働研究 / 小中高大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、児童生徒が科学的な概念を理解する授業の実現に向けて、教員自身がカリキュラムを開発するための組織や方法を理論的実践的に検討するものである。日本の学校教育においては、学習指導要領によって学習内容が決められてきているが、学校現場主体のカリキュラムマネジメントの必要性も指摘されている。教員自身がカリキュラムを開発するためには、児童生徒の科学的概念形成プロセスや幅広いカリキュラム編成理論を踏まえた実践研究が必要であり、教科や学校種を超えた協働研究(Professional Learning Community)が求められる。そこで本研究では、これまでに構築され推進してきた小中高大理科教員の協働研究組織を生かし、教科と学校種を超えた教員主体のカリキュラム開発の実現に向けて組織的継続的に、授業研究や授業実践検討を行い、深い概念理解を目指すカリキュラム開発の実践研究を行う。 2019年度は、以下の3点について、研究を進めた。 (1)概念構築を目指す先進カリキュラムの調査研究 これまで国内外で開発・実践されたカリキュラムや概念構築に関する研究について調査した。CASEにおける比や条件制御の学習カリキュラム、科学教育研究会や仮説実験授業における授業記録、誤概念研究とp-prim研究などを検討した。 (2)小さな試行と実践を省察し繰り返す学校拠点でのカリキュラム開発 福井県と東京都で、それぞれ年間4、5回の研究会を行い、教材や授業プラン、授業実践の開発と検討を定期的継続的に行った。研究会で開発・共有した教材や授業プランは研究会とSNSを通じて広く共有し、カリキュラム開発を進めた。 (3)実践記録の蓄積と構造化、評価と改良 開発メンバーによる試行実践や研究協力校、国内の研究推進校の授業実践に基づいて、実践を記録化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、以下の研究成果が得られた。 (1)直流回路における電流と電圧の理解に関する研究推進 電流概念構築のカリキュラムについて、Physics by Inquiryや日本の過去の教科書等を検討し、現在の中学校高等学校における生徒の実態を交流することによりどの中学校高等学校においても共通している躓きが回路の電流と電圧の概念の未分化にあることを共有した。高等学校において、これらの成果を生かした授業改善を行い、物理教育67-3に報告した(苅谷麻子著「生徒の誤概念に注目した電気分野の授業実践」。また、東京で開発した「電圧概念構築のための立体ワークシート」を福井でも実践・改良を繰り返し、教師の協働研究によって、短期間での教材開発と実践・省察が可能であることが明らかになった。また、これまで継続してきた手回し発電の手応えに関する理解に関して、p-prim研究の視点から再検討し、物理学会等で報告した(山田吉英「断片知識論の活用に関する研究」)。 (2)開かれた研究コミュニティの継続と拡充 小中高大教員での研究会を福井県で5回、東京都で4回行った。福井における研究会は、福井県の教員自主研究活動支援事業若手教員学習会と連携しており、議論内容や開発教材の記録報告書にまとめた。研究会は、SNS等で連携することによって福井と東京の連携が進んだほか、理科・物理教員だけでなく、数学や技術科教員の参加もあり、教科間の共通点やギャップも見出すことができた。研究会の継続によって、教材やワークシート、授業プラン等を共に検討し、実践して報告し合うという、実践と省察のサイクルができた。 (3)実践記録の蓄積と構造化、評価と改良 研究会メンバーの一部が授業実践記録を書き、学会やホームページ等で公開した。これらの実践記録を共有し、記録を書くことや読むことの意義を広げている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、福井県と東京都での研究成果をSNS等で連携することができた。しかし、2020年2月より大流行している新型コロナCOVIT-19による影響は大きく、2019年度末から2020年にかけて、小中高大すべての学校で対面授業ができない状況が続いている。コミュニカティブな授業を実践することが困難な状況が続き、授業研究会も期待できないため、これまでのカリキュラム検討や授業記録の分析等を中心に行なっていく。しかし、研究会や情報交換については、これまでもSNSやインターネット等を通じて行っているため、今後も実践事例や教材の交流を進めていく予定である。 (1)小中高等学校における物理授業を検討しつつ、共通した困難性と各学年段階での躓きをさらに検討する。また、国内外の探究の授業実践や探究型カリキュラム、大学と小中高等学校の連携研究の先進事例について調査する。 (2)小中高の教員との協働研究組織を生かし、児童生徒の実態と学習指導要領の連続性を踏まえた概念理解と探究力育成の物理カリキュラムを開発する。開発メンバーによる試行実践や研究協力校、国内の研究推進校の授業実践に基づいて、改訂作業を繰り返し、評価・見直しを行う。小中高等学校教員が毎日授業を行いながら実践記録を執筆することは容易なことではないが、読むことと書くことの意味を共に確認し進めていく。 (3)試行カリキュラムを用いた実践を検討し、児童生徒への教育効果を含む評価に基づいて、開発したカリキュラムの見直しと改善を行う。国内外の研究成果を検討し、小中高大を通じた概念形成やカリキュラム評価研究を踏まえ、カリキュラムを改善して、さらなるカリキュラム開発を進める。開発カリキュラムを学会等で報告し評価・見直しを行う。
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Causes of Carryover |
教材開発用備品や消耗品の購入が少なかったため。 2020年度は、さらに実験用消耗品や図書などを購入し、教材開発とカリキュラム開発を進める。また国内の学会で報告し、開発プログラムの評価と改訂を行う。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大状況によって、研究会や学会参加については未定である。
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Research Products
(4 results)