2020 Fiscal Year Research-status Report
高校物理基礎における生徒が能動的に学ぶエネルギー学習の実験教材の開発研究
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19K03123
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
川村 康文 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 教授 (90362087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 色素増感太陽電池 / サボニウス型風車風力発電機 / 自転車発電 / 出前授業 / アクティブラーニング / エネルギー教育 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の東日本大震災以降,エネルギー問題についての関心は高まってきている。エネルギー問題,特に自然エネルギーに関する項目が挙げられている。これらのことからも,自然エネルギーについて学ぶことが大切であることがわかるが,実際に自然エネルギーを用いた発電方法で,生徒が自作できるものは少ない。そこで,生徒自身が簡単に自作でき,実際に体感することができるものを開発しようと考え,研究を継続している。また,次期学習指導要領において,高等学校におけるアクティブラーニングの実現が期待されている。アクティブラーニングは,児童・生徒が能動的で深い学びをしていくための方法として取り上げられているものである。 また,自然災害の多い日本にとって,防災教育の一環としてエネルギー問題について主体的に取り組むための学習は,これからの日本においてはますます重要であるといえる 。 このような理由により,次期学習指導要領下の物理基礎のエネルギー分野において,このような学習が成立するような実験教材となるように開発を行ってきた。具体的には,サボニウス型風車風力発電機,色素増感太陽電池,自転車発電機などを中心にエネルギー分野の実験教材として開発し,エネルギー教育に取り組んだ。 2020年度は,コロナ禍であったが,練馬区立練馬東中学校,都立三鷹中等教育学校,および私立世田谷学園には,「分光筒を作って省エネルギーを考える実験」を出前授業で行った。福岡県立輝翔館中等学校でオンライン授業にてエネルギーに関する講義及び実験を行った。また,武蔵野大学付属千代田中高校には,「色素増感太陽電池」の実験を出前授業として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的に自然エネルギーに関する期待が高まっているので、火力発電、原子力発電から,自然エネルギーを利用した再生可能エネルギーに,発電もシフトしてきている。これからは更に自然エネルギーをはじめとするエネルギー問題が重要になってきている。 そこで,エネルギー問題について取り組む理科実験として,サボニウス型風車風力発電機,自転車発電機などの開発を継続している.2020年度では,コロナ禍においても,既存の実験機の改良も含め,エネルギー環境教育に運用できるような理科実験教材を模索しつつ,SDGs時代の実験機として新な可能性を探っている. 具体的には,当研究室が開発した従来のサボニウス型風車風力発電機は,支柱が長くため,実験時に風速の変化によって実験機全体が振動するという特徴があった。実験機の各パーツの組合せを再設計し,重心を落とすことによって,実験機の安定水準をさらに高めた。自転車発電機については,27インチ型自転車に着装できるような大出力の自転車発電機を開発した。発電部には,4組計8台の直流モーターをアルミ板に取付けてから,自転車専用スタンドと一体化させた。整流回路部分には,3Dプリンターを用いて基台を新しく設計し,収納しやすく回路を傷つかないように保護できるようなケースにも工夫をした。 また,これらの実験機を用いて実際に学校へのエネルギー環境問題の出前授業や日中交流プログラムを取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,開発中の温水タワーすだれ,サボニウス型風車風力発電機,色素増感太陽電池,自転車発電については,さらなるバージョンアップを実施計画中である。 温水タワーすだれでは,小型化し,持ち運び可能な神輿型を計画している。サボニウス型風車風力発電機の卓上版では,いくつかのサボニウス型風車風力発電機をセルとして結合し,携帯ラジオを稼働できるものを計画している。色素増感太陽電池では,出前授業にもっていけるように,さらに低コストなものを考えている。自転車発電では,これまでは自転車と一体型であったが,このたび,どんなインチサイズの自転車にも取り付け可能な実験機とし,出前授業に伺ったさいにも,学校にある自転車に取り付けることができるように開発を行っていきたい。 開発した実験教材を用いて,出前授業を行うことにより,実験機の学習効果を確かめ,広く普及したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため,出前授業に伺う回数が減り,また規模が縮小した。2021年度は,コロナ防止対策を十分にとり,実験教材のさらなるバージョンアップと出前教室の確実実施を計画している。
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