2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism for local government officers to gain capabilities in order to respond against volcanic disasters
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19K03133
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Research Institution | Research Institute for Disaster Mitigation and Environmental Studies, Crisis & Environment Management Policy Institute |
Principal Investigator |
新堀 賢志 特定非営利活動法人環境防災総合政策研究機構環境・防災研究所, 研究部, 研究員(移行) (10607914)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 火山災害 / 火山防災 / 火山防災研修 / 人材育成 / 地方公共団体職員 / 防災対応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方公共団体職員が防災対応力を身につけるためのメカニズムの解明のため、2019年度の研究実施計画のとおり、①火山防災担当者のあるべき姿、②そのための手法の開発(火山防災研修)を解明するための実践と調査をした。すなわち、火山防災トップシティを冠する鹿児島市の協力を得て2回の火山防災研修(10月と1月:1月は座学に加え、現地実習、防災訓練視察まで)と、研修に参加した関係者等へのアンケート調査(N=25、計14地方公共団体)の実施である。又、本科研費と別の枠組みで、インドネシア/メラピ火山2010年噴火や、アメリカ/ハワイ2018年噴火で対応された海外の防災担当者へのヒアリングもできた。 アンケートは2種類作成した。一つは実施した火山防災研修への評価と、火山防災担当者の業務やあるべき姿、そして火山防災の特異性への質問票、もう一つは、内閣府で実施している「防災スペシャリスト養成研修」の10の講座を火山防災に特化した講義としたうえで学ぶべき事項は何かという質問票である。 その結果、火山防災担当者が望む知識は、ハザードや主務である地域防災計画や住民啓発、そして災害対策本部運営等の知識が多数の意見を占めた。復旧復興や海外の事例等の知識は不要との意見が多かった。 これらを学ぶ手法は、今回実施した火山防災研修(ハザード、防災情報、計画等の事例、噴火対応WS)や火山視察はおおむね役に立ったという回答であった。他に実際の火山災害対応事例を知りたいという意見が多く、低頻度の火山災害の特性からか、経験の共有又は疑似体験が必要な手法であることが推察される。 なお、海外の火山噴火対応経験者へのヒアリング調査からは、長期化や時々刻々と変化する火山現象に対応するため、実体験や、次に起こることへの想像力の重要性、市民とのコミュニケーションが挙げられ、定型の計画に留まらずに対応できる能力の必要性が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地方公共団体職員が防災対応力を身につけるためのメカニズムの解明のため、2019年度の研究実施計画のとおり、①火山防災担当者のあるべき姿、②そのための手法の開発(火山防災研修)を解明するための実践と調査をした。すなわち、火山防災トップシティを冠する鹿児島市の協力を得た2回の火山防災研修(10月と1月:1月は座学に加え、現地実習、防災訓練視察まで)と、研修等に参加した関係者へのアンケート調査(N=25、計14地方公共団体)の実施である。又、本科研費と別の枠組みで、インドネシア メラピ火山2010年噴火や、アメリカ ハワイ2018年噴火で対応された海外の防災担当者へのヒアリングもできた。 研究実施計画①では、まず平時と噴火時等の主務を知ることがその解明に繋がると考え、それに係るアンケート調査を実施した。その結果、主務は地域防災計画や防災訓練等の住民啓発、そして災害対策本部運営等、大よそ他の自然災害と同様であった。他の自然災害と異なる特徴についての質問では、噴火時等の「指揮」や「対策立案」が重要という意見が多い傾向にあり、海外の火山防災担当者が挙げた「長期化や時々刻々と変化する火山現象に対応するため、実経験や、次に起こる事態への想像力の重要性」に繋がる項目が挙げられたように見える。 研究実施計画②では、研修や火山視察が有効な手法と仮定をたてて、実際に鹿児島市で実施し、参加者に評価してもらった。その結果、アンケートでも見えてきた火山防災担当者の主務を妨げる項目の「ハザードの知識」を身につけるために、今回の研修等が有効な手法という回答が多く得られた。この他、低頻度である火山災害の対応を身につけるために、経験の共有又は疑似体験が必要という意見も多く得られた。今後は、①のアンケートに基づき、研修や火山視察という手法の具体としてどのような学習内容が必要かを分析・実践を通じて明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
地方公共団体職員が防災対応力を身につけるためのメカニズムの解明のため、2020年度の研究実施計画のとおり、①火山防災担当者のあるべき姿、②そのための手法の開発(火山防災研修プログラムの開発)の検証と、③身につけるメカニズムの解明についての大局的な成果を目指す。そのための当初計画では、2回程度の火山防災研修と研修前後のアンケート調査であったが、新型コロナウィルスにより人が集まる研修の開催は困難であることが予想されるため、協力を依頼する地方公共団体と調整しながら、可能な範囲での実施を試みる。一方で、アンケート調査に力点をおいて、精度向上や更なる意見の収集に向けて回答数を増やすための調整を地方公共団体等に対して実施する。これらの実践・調査や昨年度の成果を通じて、更なる検証・分析を行う。 昨年度の調査結果から、①火山防災担当者のあるべき姿は、平時の主務の実践と実際の噴火対応が可能な能力を持つ人材であり、そのためには、時々刻々と変化し、かつ次に起こる事象の確定が難しい火山ハザードの特性を理解したうえで、それに対し想像力をもって対応できる人材と推察される。そこで、実際の噴火対応経験者の噴火時又はその後の復旧や次に向けた予防等の実務経験談から学び取ることが、目指す「あるべき姿」に限りなく近づくと考え、アンケート調査結果の中で噴火対応経験者とそうでない担当者の差異に注目するなどして更なる検証を行う。そしてこれらの結果を踏まえて、最も学ぶべき事項は何かを、噴火対応時のコマンダーとオペレーターの役割に分けた整理を行いながら、火山防災研修プログラムを開発する。このとき、低頻度の火山災害を疑似体験するための手法は特に重要と考えるので、そのための手法についても引き続き調査を行う。これらの調査・分析と火山災害の特性を踏まえ、③身につけるメカニズムの大局的な解明に向けた分析を進める。
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Remarks |
実施した鹿児島市での火山防災研修は、毎日新聞をはじめ地元誌やテレビでも取り上げられた。例 https://mainichi.jp/articles/20191012/ddl/k46/040/491000c
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