2019 Fiscal Year Research-status Report
校種を超えた数学科と理科を総合する教材開発と教師教育の実証的研究
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19K03145
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
金児 正史 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00706963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 理 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (10217325)
後藤 顕一 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50549368)
佐伯 昭彦 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60167418)
川上 貴 宇都宮大学, 教育学部, 講師 (90709552)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数学科と理科を総合する教育 / 教員研修 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らの教師教育実践と研究から,数学科と理科では用語の共有化や指導内容の調和的な順序構成が積極的に考慮されておらず,児童生徒の総合的な数理的運用能力の育成に限界があったが,校種を超えた両教科の教師を対象とする定期的な勉強会などを通じて,学習内容を相互理解することの重要性が明らかとなってきた。そこで本研究では,数学科と理科の総合的な理解力を持つための教師の資質能力向上の方策を探究している。 2019年に,研究代表者ら全員が一堂に会して,本研究の目的と研究方法について再確認するとともに,休日を利用した教員研修の限界と,より効率的な研修の在り方について議論を重ねた。休日に行ってきた教員研修は,法定研修とは異なるために,疲れている中,数学科と理科を総合する教育に価値を感じる教員のうち都合のつくものだけが集まる形態が続いていた。議論の内容はメモに起こして研修を希望するすべての教員に配布してきていたものの,内容の共通理解には限界があった。そこで,講習の形態も視野に入れて,研修の在り方について継続的に議論を進めた。 一方,数学科と理科を相当する教材の研究にかかわって,研究発表や論文を投稿した。日本科学教育学会宇都宮大会(2019年)にて「数学科と理科における誤差や近似値の指導に関する一考察 」を口頭発表したほか,日本科学教育学会北海道支部会(2020)にて「より高度な数学の考察を加えた物理公式の探究とその指導の提案-「理数探究」を意識した単振り子の等時性の公式の探究-」を発表した。また,数学教育学会誌vol60,No.3,4(pp.35-47)にて「算数・数学教科書の問題から数学的モデリングの問題への再教材化を目指した教員研修の可能性」が採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らによる,数学科と理科を総合する先行研究によれば,関連する学習単元が小学校から高等学校にわたって,指導されているいることが明らかになっている。例えば,単振り子の等時性については,小学校5年理科と高等学校の物理で学習するほか,中学校3年数学の2乗に比例する関数や数学Ⅲの無理関数,数学Ⅱや数学Ⅲの微分・積分がある。小学校での指導にあたっては,高等学校の物理や数学Ⅲまでの知識を獲得しておく必要はないものの,校種にかかわらず,数学科や理科の教員は,単振り子の学問的な関連を理解しておくことの意義は大きいと考えている。 単振り子を題材とした,学習指導の体系化を意識した研究は,2018年から継続研究してきている。2019年(日本科学教育学会第43回年会,宇都宮大学)および2020年3月(日本科学教育学会北海道支部)における発表では,高等学校の物理における単振り子の等時性の公式の導出について,数学的な考察の視点までも明らかにしてきた。 一方,教員研修のための方策については,これまでの教員研修の限界を改善する工夫を吟味するところにとどまっている。単振り子の等時性にかかる教材の吟味を踏まえ,単振り子を題材にした教員研修を企画し,実践していくことが,今後の課題である。 このように,この1年間の研究によって,教員研修の新たな模索にある程度の方向性は手に入れたものの,単振り子の等時性を題材とした教員研修を企画し,実践を通してさらなる改善点を明確にしていくなど,今後の研究の方向性が明らかになったので,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況にも示した通り,今後は単振り子の等時性を題材にした,学習指導計画を構築するとともに,単振り子の等時性を素材とした教員研修の在り方について吟味し,教員の再教育(教員研修)を実践し,成果と課題を明確にしていく。 一方で,小学校から高等学校までを視野に入れた数学科と理科を総合する学習指導のための題材は単振り子の等時性にとどまらない。力の合成や分解,斜面を滑る物体の抵抗,波の干渉,など,多くの題材が散見している。これらの題材についても,単振り子の等時性を題材にした教員研修とともに,軌道に乗せていく必要がある。そのためにも,単振り子の等時性を題材にした教員研修を,試金石にしていく。 なお,新学習指導要領がいよいよ実施される。2020年度は小学校の教科書が改訂されて,いよいよ主体的な学習活動が具現化されていく。この点も視野に入れながら,本研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の総額は211,952円である。このうち,202,389円は,2019年度に新学習指導要領に準拠した小学校の算数と理科の教科書及び教師用指導書を購入する予定であったが,発刊が遅れて2019年度に購入できず,予定通り執行できなかった。2020年度に購入が可能になり次第,教科書などを購入する予定である。 また,研究分担者の後藤顕一氏の次年度使用額は9563円である。令和元年度に未使用額が発生した理由は,3月に予定していた情報収集のための出張が,コロナウイルス感染症の広がりが懸念され,予定が中止になったためである。9563円の次年度使用額は,後藤顕一氏の令和元年度3月に計画していた情報収集の出張や研究会参加などによって,滞りなく活用させていただく計画である。
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Research Products
(6 results)