2020 Fiscal Year Research-status Report
ジオパークを利用した国際的な防災科学研究と社会教育実践
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19K03147
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中村 有吾 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 客員講師 (00466468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 十勝岳 / 活火山 / 歴史噴火 / 泥流災害 / ジオパーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の調査地である室戸ユネスコ世界ジオパーク(高知県室戸市)、および、十勝岳ジオパーク構想(北海道美瑛町・上富良野町)は、いずれも近い将来の災害発生が確実視されており、ジオパークとしての取り組みが行われている。昨年度調査を行った十勝岳地域は、「火山と共生する地域づくり」を目的にジオパーク認定を目指している。日本有数の活火山である十勝岳は、20 世紀以降3 回のマグマ噴火を経験しており、中でも1926 年の噴火では、融雪型泥流を誘発し、2 町合わせて144 名の人的被害があった。十勝岳地域のジオツアーでは、十勝岳の噴火口や、溶岩流、火砕流堆積物などをめぐるコースが人気を博しているが、その他に、1926 年噴火の遺構と被災地をめぐるツアーの開発を地元ガイドとともに進めている。とくに、この噴火をモチーフとした三浦綾子氏の小説『泥流地帯』のストーリーをたどりながら現地を歩くことで、火山噴火、当時の開拓農家の生活、被災後の復興の歴史などをよりドラマチックに実感できる。単なる自然現象としての火山活動でなく、人の暮らしとのつながりが体感できる。 ジオパークは、単に地質や地形を見せる場所でなく、地球の成り立ちから地域文化の形成までをトータルに扱う、「フィールドミュージアム」といえる。一般に、地域を特徴づける地形・地質の形成には、洪水、火山活動、地震といった「災害」ともいえる現象がかかわっている。同時にこれらの現象は、生活や生産の場を形成し、風光明媚な景観や、大地の恵みを提供する。このように「災害」と「地球の恵み」を同時に伝えることを眼目とするジオパーク(活動)は、防災教育を進めるうえで理想的な教材を提供するといえよう。とくに、ジオツーリズムを主導するジオガイドとともに行う災害事例研究は、社会教育の場を構築するうえで重要なプロセスとなるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
高知県室戸市や、北海道美瑛町・上富良野町で防災やジオパーク活動にあたる市民とともに、全国の災害経験地域でのフィールドワークを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、フィールドワークが不可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
自然災害に対して社会やジオパークがどう対応し、ジオパークでどう取り扱っているかを現地調査する。とくに、昨年度までに調査を行った長崎県島原市と、北海道美瑛町・上富良野町において、災害の状況や、防災対応、ツーリズムとの結びつきなど比較調査を行う。 この調査結果に基づき、室戸ジオパークおよび十勝岳ジオパーク構想地域を中心に、防災プログラムおよびフィールドミュージアムを地域住民と協働で構築する。また、住民参加型ワークショップを開催し、調査成果に基づいたジオツアーを企画・実施、さらに自治体への安全対策・整備を提言する。 今年度は最終年度でもあるので、地域住民の防災リテラシーの現状と、本プロジェクト実践による効果を評価するために、プロジェクトに参加したジオパークの地域住民で防災討論会を行い、プログラムを改善する。 なお、新型コロナウイルス感染症の流行の状況によっては、今年度も他地域へ調査出張が不可能になる可能性がある。状況に応じて、フィールドワークの実施、または、リモートでのワークショップ開催に切り替えて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で、現地調査や学術会議等が中心となり、予算の大半を占めていた旅費の使用ができなくなったため、年度中の使用ができなくなった。 令和3年度も野外調査・会議出張を予定しているが、新型コロナウイルス感染症の流行の状況によっては出張が中止になる可能性がある。その場合は、リモート会議や、オンラインワークショップのための機材、地域共同ラボで使用する研究機材の購入に予算を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)