2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Teaching for Developing a Notion of Space through the Awareness of the Object/Viewpoint Framework.
Project/Area Number |
19K03164
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
太田 伸也 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50322920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 空間の想像力 / 対象と視点 / 数学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,3次元空間の問題解決過程で必要とされる「数学の方法」は何か,という問いに対して,「解決に都合のよい対象とそれを観る視点」(対象/視点)を選択し顕在化することにその本質があると考え,空間の想像力育成を目指す授業への提案として具体化しようという意図をもつものである。ここに至るまでの研究は,『空間の想像力育成のための「対象/視点」に着目した図形教材の開発』(2019年3月,平成27年度~平成30年度科学研究費助成事業基盤研究(C)(一般)課題番号15K00911研究成果報告書,東京学芸大学リポジトリで公開)にまとめている。この着想を受け,本研究の目的を,「対象/視点」の意識化による空間の想像力育成の意義を明確にし,「対象/視点」を顕在化させる授業のためのテキストを開発することとした。 その第一年次として,空間図形の指導に関わる授業者,及び3次元空間の問題解決に取り組む生徒にとって,「対象/視点」の意識化がもつ役割を,事例とともに示すことに取り組んだ。主なものは,『空間を考察する場面における「対象/視点」の顕在化の役割-理科・社会科での教材を例に-』(松原・太田,2019)に示している。1つには,小学校6年での月の満ち欠けの学習場面で求められる「対象/視点」を考察した。例えば,教科書で用いられている説明図には,地球上の1つの地点から観察者が月を見るもの,地球上の複数の地点から月と太陽をみる状況を対象化してその外に視点をおいて観ているものがあり,前者は後者の一部になることを顕在化させることが必要である。また,社会科の時差の学習で求められる「対象/視点」として,経度の違う2地点に視点をおいて太陽の動きを考えること,地球を北極星の方向から観る視点で地軸と垂直な平面への正射影を考え,地球上の点を経度だけにおきかえて経度と時刻を対応させることの必要性等について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年次の計画として,「空間図形の指導に関わる授業者,及び3次元空間の問題解決に取り組む生徒にとって,「対象/視点」の意識化がもつ役割を,事例とともに示す」ことにおいて,他教科等の学習場面だけでなく,これまで実践を通して検討してきた中学校数学の授業をもとに「対象/視点」の意識化がもつ役割を整理する予定でいたが,これは十分にはできなかった。理由としては,研究代表者が所属学会の全国大会実行委員長を2件(10月,11月)務めたこと,また,勤務において附属学校担当副学長としての任期最終年度にあたり2020年2月からの新型コロナウィルス感染防止への対応等も重なったこと等,想定外の任務のため時間が不足したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では,2年次には,主として中学校第一学年の「空間図形」の指導を想定し,3次元空間の問題解決過程において「対象/視点」を顕在化させるテキストを作成することとしている。また,これを受けて3年次にはテキストを用いた実践を通してテキストを評価し改善する計画である。 2020年度は,2019年度に予定していた事例検討を加えるとともに,テキストの試案の作成に取り組む予定である。可能であれば,テキスト試案の一部を2020年度内の実践で利用することを想定していたが,新型コロナウィルス感染防止のための措置により学校現場での実践が難しい状況にあるため,研究協力者に依頼することは困難である。今後の状況によっては,3年次に予定している実践を通してのテキストの評価改善についても,その時期を3年次から4年次に延長することも視野に入れて研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度に購入予定であった立体模型を2020年度購入予定に変更した。また2020年2月から3月にかけて予定していた研究打ち合わせは(新型コロナウィルス感染防止への対応のため)会合をもたず,2020年度の研究打ち合わせ,及び研究発表における旅費として使用することとした。なお,新型コロナウィルス感染防止対応により,今後の計画を延期させる可能性も視野に入れておく。
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