2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Teaching for Developing a Notion of Space through the Awareness of the Object/Viewpoint Framework.
Project/Area Number |
19K03164
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
太田 伸也 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (50322920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空間の想像力 / 対象と視点 / 数学教育 / 空間図形の指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,3次元空間の問題解決過程で必要とされる「数学の方法」として「何をどこから観るか」(以下「対象/視点」)に着目し,空間の想像力育成を目指す授業への提案として,「対象/視点」を顕在化させる授業のためのテキスト開発を目的としている。第4年次はテキストの作成に取り組むとともに,一事例について,附属中学校での実践を試みることができた。ここでは,重点的に取り組んだ2つの事例について記す。 1つは,「対象/視点」の意識化そのものに焦点をあてる授業として,「正四面体は正方形にみえるか」をテーマとするテキストである。正四面体の模型の観察において,「正方形に見える」という主張と,「正方形には見えない」「ひし形ではないか」という主張を比較検討する場面をつくり,対象と視点を言語化する活動を引き出す。具体的には,正四面体のねじれの位置にある2辺を対象とし,その2辺の見え方が視点の位置や視点からの距離によってどう変わるかを調べる活動が想定される。また,視覚での視点を光源に置き換えることで対象を正四面体からその影に置き換え,投影の見方につなげる扱いも考えた(太田・柴田・松原,2022)。この教材については,テキストをもとに中逸空教諭(附属小金井中学校)による授業を試みることができた。 もう1つは,「対象/視点」の活用に焦点をあてる授業として,中学校社会科の教材である時差と日付変更線の意味をテーマとするテキストである。例えば,「羽田―ホノルル便で,羽田出発が21時でホノルル着が同じ日の(午前)10時とすると,航空機の飛行時間はどうなるか」などの問題を設定した。視点の位置と標準時の関係を顕在化させたり,地球の外に視点を置く場合と地上にいる自分に視点を置く場合を関連付けて考える活動を意識的に取り入れたりすることを考え,空間の想像力育成につなげようとするものである。(松原・太田,2022)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染状況により,テキストの実践による検証については無理をせず,実践によるテキストの検証は今後の課題とすることも想定していた。令和4年度は新型コロナ感染防止の状況がやや好転するとともに,さらなる研究期間の延長の可能性が認められたことから,研究をテキスト作成だけに特化せず,中学校第一学年での実践を試みることができた。一方,テキストの蓄積については予定よりも遅れているため,研究期間延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間が令和5年度まで認められたことから,テキストの開発を進め,できるだけ多くの事例を取り入れたテキスト集の作成に取り組む。なお,テキストについては,現学習指導要領での指導内容との対応にとらわれず,今後の可能性として考えることとしている。テキスト化する場面は,当初の計画のとおり,大きく2通りに分類し,1つは「対象/視点」の意識化そのものに焦点をあてる授業,もう1つは,「対象/視点」を顕在化させる活用場面となる授業を考える。 また,新型コロナ感染状況に配慮しつつ,可能であればいくつかのテキストについては実践による検証を試み,そこで得られた知見をテキストに加筆することを計画している。
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Causes of Carryover |
研究期間の次年度への延長の可能性が示されたことから,テキストの編集・印刷の費用を次年度使用に繰り越した。また,令和4年度はテキストの検証のための授業実践は1件だったため,実施のための教材購入の費用が抑えられ,次年度の実践のための教材購入での利用を計画している。なお,令和4年度も日本数学教育学会の春期研究大会,秋期研究大会がオンライン開催となったため旅費を使用せず,これも次年度の研究発表のための参加費・旅費としての利用を計画している。
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Research Products
(4 results)