2020 Fiscal Year Research-status Report
コミュニケーションロボット開発を通した認知症介護支援への工学教育の活用
Project/Area Number |
19K03181
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
安藤 敏彦 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (00212671)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症高齢者介護支援 / 弱いロボット / 課題解決型学習 / デイケア施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「弱いロボット」の概念を用いて認知症高齢者を介護する介護者の負担を軽減させることを目的としている。認知症高齢者と介護者の間にロボットを介在させることで、介護者の心理的負担軽減を試みている。また、ロボットの開発課程を課題解決型学習(以下、PBL)として教材化することも目的の一つである。これによって、工学系学生が介護の現場に参加する機会を作り、介護や医療の専門家以外の若年層を介護に参加させることで、介護者不足の解決の一端を担うことを期待している。 当該年度は、ロボットの開発とデイケア施設での試演を行い、それをもとにロボット開発過程のPBLの策定を計画していた。ところが、新型コロナウイルス感染拡大のため、協力先のデイケア施設に訪問することができず、ロボットを持参して、施設の通所者とロボットとの相互作用を観察することができなかった。 そのため計画を変更して、モデルの高齢者を想定し、それに基づくロボット開発を行なった。高齢者の能動性を引き出すために、ロボットの「弱さ」を演出し、高齢者がロボットの面倒を見るようにするための方法をいくつか検討した。その上で、当該年度では2種類のロボットを考案した。一方はヴイストン社から販売されている比較的簡易で5自由度を持つ「ピッコロボ」にセンサとマイクを取りつけて、発声方向に体を向け、体を揺らすなどの反応を生じさせるものである。また、他方は、ヴイストン社の会話型ロボット「Sota」を用い、生物の指向的な構えを意識し、会話の準備と呼吸に似せた揺動を実装したものである。新型コロナウイルスの感染がおさまれば、それらのロボットに対する反応を調査する予定である。 また、新型コロナウイルス感染が収束しないことを考慮し、遠隔コミュニケーションのための準備も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、開発しているロボットを協力先のデイケア施設に持参し、通所者の反応を観察すし、その反応をもとに改良を行うよう計画していた。しかし、当該年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、デイケア施設への訪問ができず、実地での観察が全くできない状態であった。そのため、ロボット開発と施設訪問を行うPBLを策定はしたが、一通りの試行が行えないでおり、計画の修正を余儀なくされた。実地での高齢者とロボットとの相互作用に関わる観察ができないので、実例に合わせたロボットの開発は一旦見送り、高齢者のモデルを設定し、それをもとにロボットを考案することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も新型コロナウイルスの感染が続くことが予想されるが、収束次第デイケア施設でのロボットの試演を行おうと考えている。それが許されれば、ロボット開発のPBLを学生の参加の下、導入講義、ロボット開発、デイケア施設への訪問、発表の一連のプログラムを実施し、問題点の洗い出しを行う予定である。現在課題となっているのが、ロボット開発の難しさである。そこで、限られた時限内で開発を終わらせるため、ベースとなるロボットをどこまで準備するかを検討するとともに、PBLの時間配分の修正も検討する。 また、感染が収束しない場合は、本年度行なったロボットの開発に注力し、認知症高齢者とロボットとの対面コミュニケーションに重点を置いて研究を進める予定である。高齢者に見られる視力・聴力の低下、視野の狭窄、発声機能の低下、認知症で顕著な見当識障害のため、健常者と異なるモードの対面コミュニケーションがある。これに対応して、例えば、ロボット自身が高齢者の視界に入るよう移動して突然声をかけられる時の驚きを回避したり、言葉の失念による不安の解消のため、擬似音声による会話を試みたりなどを考えている。加えて、遠隔でのコミュニケーションの可能性についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型ウイルス感染拡大により、デイケア施設訪問ができなくなったことで、研究計画に変更が生じた。そのため、それに関わる謝金や学会発表に関わる旅費が無くなったことが主な理由である。ただし、その代わりに、新型コロナウイルス感染が収束しないことを考慮し、遠隔での意思疎通を図るための準備のため、そのための機材を購入している。 今後、新型コロナウイルス感染が収束すれば、計画通り、ロボット開発に関わるPBLを一通り実施し、デイケア施設での高齢者とロボットとの相互作用の観察も行う。収束しない場合には、ロボット開発や遠距離コミュニケーションの実現に注力する。ロボット開発のために、会話ロボット開発のためのソフトウェアライセンスの購入やセンサなどの関連部品の購入を行う。また、遠距離コミュニケーション用の無線機器、ビデオカメラ等の機材の追加購入を行う。
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