2020 Fiscal Year Research-status Report
International Migration and Subjective Well-being: Comparative Studies on Experiences of Asian nurses in Japan and in the UK
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19K03196
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
浅井 亜紀子 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (10369457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 真弓 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20268329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際移動 / フィリピン人 / インドネシア人 / 外国人看護師 / 外国人介護福祉士 / 異文化接触 / 英国 / 二国間経済連携協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究目的は、国際移動するアジア系看護師の主観的ウェルビーイング(Subjective Well-being、SWB)の実態調査と分析、理論検討を行うことであった。今年度は、コロナ禍による移動の制限により、国内・国外調査を進めることはできなかったが、それまでに得られたデータの分析、文献調査を行なった。 第一に、英国におけるフィリピン人看護師の体験について分析を進めた。英国移動前の経験についてはSWBの観点から論文にまとめた。フィリピン人が高校卒業してから看護学校選択、卒業後の職業選択、渡航先選択の3プロセスが関係していた。看護学校を選択するのは、個人より家族としてのSWBを優先していた。就職の選択においては、国内における常勤職を得る困難が彼らのSWB を低めており、労働条件への不満、家族生活の経済的不安がSWB を低め、海外就労を促進していた。 第二に、フィリピンの現地調査(2019年3月実施)から、フィリピン人の来日動機や日本国への認識、送り出し国の状況、とくにEPAと特定技能実習制度を目指す来日者の特徴を検討し一部を学会で発表した。第三に、日本ですでに働いているフィリピン人看護師・介護福祉士の調査から、フィリピン人の日本でのSWBは、フィリピンにいた時より高く、生活におけるSWBは高いことがわかった。特に「家族」の重要性が示唆された。SNSの利用については、Facebookは仕事より生活で利用されていた。とくに情報収集に活用されており、生活における感情維持に効果があるが、仕事上での感情維持は役立っていない。 第四に、著書『EPAインドネシア人看護師・介護福祉士の日本体験』についてシンポジウム(2019年2月実施)を実施し、著者らの文化心理学からの研究結果を、他の学問領域(保健医療社会学、国際関係学、文化人類学、コミュニケーション学)と比較・批判をもらい相対化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルスの世界的パンデミックにより、国内の看護医療関係者へのインタビュー調査、海外でのフィールド調査を進めることができなかった。その分、SWBの文献調査を進めながら、2019年度に収集したデータの分析と結果の発表を行った。フィリピン人看護師の英国移動前の体験について論文にまとめることができた。また、日本に住むフィリピン人看護師・介護福祉士の分析結果を学会発表(異文化コミュニケーション学会)し、フィリピンの現地調査の結果を発表した(異文化間理解教育学会)。さらに、EPAインドネシア人看護師介護福祉士について刊行した著書を紹介し多領域の専門家による批判をうけるシンポジウム(2019年2月実施)から得られた著者の学びをまとめることで、文化心理学に立つ著書の特徴を相対化した(実践報告として論文にした)。
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Strategy for Future Research Activity |
1.研究調査については、コロナの状況をみながら、国内・海外調査を行う。2020年度の海外調査は、2021年度に持ち越す予定である。国内ですでに接触をしたフィリピン人については、オンライン面接に切り替える。 2.在英フィリピン人看護師・介護福祉士の英国での仕事や生活におけるSWBについて、分析をさらに進めて論文にする。 3.英国と日本でのフィリピン人の体験とSWBの比較を試みる。 4.SWBについての文献調査を進め、本研究から得られた知見について理論的な検討を行う。 5.EPAインドネシア人の日本体験の著書(浅井・箕浦)の英語抄録版を作成し、インドネシア人の調査協力者(保健省やBNPT2K、大学など教育機関、病院など関係者)に配布する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、国内での医療施設への接触、おおよび、EPA看護師や介護福祉士の方への面接、および、フィリピン、英国でのフィールドワークができなかったため、渡航旅費が発生しなかった。
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Research Products
(6 results)