2019 Fiscal Year Research-status Report
言いっ放しのリスクコミュニケーションに喝!現場のリスコミ行動の検証と改善策の提唱
Project/Area Number |
19K03202
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
金川 智惠 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70194884)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石盛 真徳 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70340453)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リスクコミュニケーション / 公正性 / リスク認知 / リスクコミュニケーター / リスコミ研修プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、福島県産の農産品への偏見が相対的に強い関西をリスコミ不十分地として取り上げ、初年度は①保健師によるリスコミ行動の実態把握と問題点の析出を実施する。 結果の概要は以下。(1)保健師によるリスコミ行動の実態把握:現場での聞き取り調査は、神戸市の元職員に研究協力者に依頼し、パイロットスタディとして、2019年度7月から8月にかけて実施した。 結果の概要は以下の通りである。 ・乳幼児健診当日は健診のみで、母親の相談の場としては機能していない。・食べ物(添加物、放射線影響等)については栄養士が話している可能性が高い。・放射線影響に関しては、東日本大震災直後、東北から避難してきた人に対してはリスコミがなされたが、元々の神戸市民に対してはなかった。・母親教室は昔は保健所で実施していたが、今は民間の産科医療機関が実施。よって妊娠中の人が保健師に相談する機会もない。 (2)保健師によるリスコミの問題点の析出:第一に、自治体主導による低線量放射線影響に関するリスコミはほぼ実施されてこなかった。リスク管理者たる政府や監督官庁(厚生労働省等)のリスコミ実績報告には当該機関の都道府県レベルでの実施回数が記録されているが、市町村単位という細かいレベル、つまり一般市民がアクセスしやすい場ではほぼなされていないことが明らかになった。第二に、保健師を市町村レベルでのリスコミ担当者として想定していたが、実際は機能していなかった。本研究の目的は、「母親がアクセスしやすいリスコミ現場として、乳幼児検診などの場を利用する」、わざわざのリスコミではなく、「ついでの機会」で実施するリスコミのシステム化を目指すものであり、そのような場として乳幼児検診などを想定していた。しかし調査結果から、リスコミ実践者として保健師のみならず、栄養士や民間の産科医療機関なども今後、研究対象者として含むことの重要性が見出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の項でも述べたが、調査の実施は、2019年度については、パイロットスタディとしての保健師の聞き取り調査のみに留まってしまった。 当初の予定では、パイロットスタディの結果をもとに、聞き取り調査の対象者をより多くの保健師と栄養士に拡大し、かつ、調査地域も大阪府まで拡大し、2020年の2月から本調査を開始する予定であった。しかし保健所がcovid-19対応に追われる現在、聞き取り調査の依頼を中止せざるを得なかった。その意味で、進捗としては少し当初計画から遅れることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
保健所のcovid-19対応は今後もしばらく継続すると考えられるので、研究計画を以下の次第で変更する。 (1)2020年度は現場での調査や観察などの実施は行わない。 (2)代わって、リスク認知やリスク不安に及ぼす要因の精査をweb調査により検討する。その際、リスコミの受け手の側(市民)の要因としてはメディアリテラシーを、リスコミの送り手側(政府)の要因としてはリスクメッセージの公正性評価を取り上げる。2020年度調査では、メディアリテラシーの高さ、リスクメッセージの公正性評価の高さがリスク認知・リスク不安を抑制し、その結果がさらにリスク対応行動に影響を及ぼすという概念モデルを検討する。また調査すべきリスク対象については、covid-19も含める。現在この調査に向けて準備中である。
|
Causes of Carryover |
計画当初は初年度にweb調査を実施するための費用を計上していたが、調査項目の検討など、web調査の準備として、現場でのリスクコミュニケーター(主として保健師など)のヒアリングに重点を置いた。 しかしヒアリングも、本調査の実施がcovid-19の影響で遅れることとなり、パイロットスタディに留まってしまった。その結果予算を執行する機会が当初より少なくなり、上記算出額となった。
|