2019 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャル・メディアは社会を分断するのか:態度の動態的理論とDSITからの検討
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19K03203
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CMC / 態度変容 / ソーシャル・メディア / インターネット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一人一台を超える水準にまでスマートフォンが普及した現代社会におけるこうしたソーシャル・メディアの影響について、個人レベルでの態度変容と集団レベルでの群化(クラスタリング)の発生と維持という2つの水準で検討する。 個人レベルでの態度変容の検討では、態度を単なる1次元上の点として捉えるのではなく、動態的性質が内在すると考える(Nowak、 2004)。従来、ノイズであると考えられてきたような、時間とともに変化する人々の態度に内在するダイナミックスを検討し、ポジティブとネガティブの間を振り子のように揺れ動く評価の構造を態度として考える。研究代表者は、自尊心を対象に評価に内在するダイナミズムを検討することの重要性を示してきた(森尾・山口、2007)。 集団レベルでの分析の枠組みに用いるのは、社会心理学者ラタネが提唱したダイナミック社会的インパクト理論(DSIT)である。ラタネは、物理的距離に応じて人々がお互いに影響を与えつつも社会の多様性が維持されるメカニズムを、シミュレーションを用いてモデル化し、DSITを提唱した。DSITでは、社会的影響過程の規定因として、影響力の個人差である「強さ」、影響力を持つ個人の「数」、そして影響力の源から対象までの「距離」の3つの要因がある、と定めた社会的インパクト理論に従って人々が相互作用を行った場合に、集団全体として「同一化」、「群化」、「多様性」の保持の3点を予測する。 2019年度は、実験パラダイムの構築の準備段階として、日本人と韓国人を調査対象とするため、両国民の歴史認識がどのように異なるか、実証的データを集めるための予備調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個人の態度測定では、マウス・パラダイムと呼ばれる手法を用いて、100msという時間的に解像度の高い動態的データを測定する。社会心理学においては動態的測定を行う研究はまれであり、態度の変化を扱う研究においても、一定の時間を空けて2回、ないしは複数回態度を測定し、その差を検討することがほとんどである。このような特色ある手法を用いることにより、他では得られない知見が得られると期待される。具体的には、態度の両価性を、評価に内在するダイナミズムとして概念化し、測定することによって、潜在的社会的認知研究の発展により、その理解が進んできた態度の2重構造との関連性を検討することにより、未だ議論の続く2重態度理論の進展にも寄与できると期待される。 このマウス・パラダイムの実行環境の構築と結果の分析方法の検討にあたって、研究代表者は2020年2月よりFlorida Atlantic UniversityにおいてAndrzej Nowak氏と研究打ち合わせを行う予定であったが、コロナウイルスの世界的な流行のため、不可能となった。そのため、環境構築を延期せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施した日韓の歴史認識に関する調査データの分析を進めることにより、両国での歴史認識がどのように異なるかの実証的検討を行う。ここで得られた知見は、マウス・パラダイムを用いた態度測定実験において実験刺激として用いられる予定である。 また、2019年度に予定していたが達成することのできなかった、マウス・パラダイムの実験環境の構築に関しては、コロナウイルスの世界的な流行という予測の不可能な事態の元、世界情勢を見極めながら、インターネットを用いた打ち合わせも併用して検討していく。
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Causes of Carryover |
マウス・パラダイムの実行環境の構築と結果の分析方法の検討にあたって、研究代表者は2020年2月よりFlorida Atlantic UniversityにおいてAndrzej Nowak氏と研究打ち合わせを行う予定であったが、コロナウイルスの世界的な流行のため、不可能となった。そのため、環境構築を延期せざるを得なくなった。 2020年度には、2019年度に予定していた海外出張とともに、環境構築のための研究補助者への謝金などの支出を行う。
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Research Products
(1 results)