2020 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャル・メディアは社会を分断するのか:態度の動態的理論とDSITからの検討
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19K03203
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CMC / 態度変容 / ソーシャル・メディア / インターネット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インターネットを通じて社会的影響を与え合う個人がどのようにして態度を変容させるか、またその結果、集団レベルでの集団極性化がどのように生じるかを明らかにすることである。本研究の特色は、ミクロレベルでの個人の情報処理とマクロレベルでの集団における群化、すなわちクリークの創発的生成による集団極性化とを結びつける点にある。 集団レベルの枠組みとして用いるDSITは、個々人間の相互作用という微視的なメカニズムの検討と、集団全体の性質の変容という巨視的なメカニズムの解明を結ぶ理論である、という点で社会心理学において異質である。アメリカの社会心理学界のみならず、国際的にもDSITは多くの研究者の関心を集め、その後、理論的な精緻化や展開を試みた研究がいくつか見られるが、そのほとんどはコンピュータ・シミュレーションによる理論的な検討である。本研究では、調査的方法およびインターネットから入手可能なログデータを用いてDSITの実証を行うという点において、既存のDSITを扱う研究とは大きく異なっている。 2020年度は、ソーシャル・メディアにログデータを用いて、DSITの知見であるクリークの創発的生成と集団極性化が観察されるかどうかを検討するため、マイクロブログからのデータ収集の準備を行った。また、新型コロナウイルスの蔓延という社会的状況化において、本研究のリサーチ・パラダイムに即したログデータのシステマティックな収集を重視した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究補助者を確保することによってマイクロブログのデータ収集システムを構築する予定であったが、緊急事態宣言の発出により、2020年度前半は研究を実施しているキャンパスが研究補助者らにとって実質的に利用不可能となったため、効率的な研究の遂行が行えなくなった。 また、2020年度を通じて、研究協力者が所属する北米や欧州の大学においてはロックダウンが継続的に行われていたため、予定していた研究打ち合わせも延期せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行のため遅延していた、個人レベルでの態度測定ツールを用いた研究計画と、集団レベルでのデータ収集システムの構築を引き続き行っていく。特に今後も流行が完全に収束することは望めないため、オンラインでの環境構築を前提として、研究計画の修正を行う。
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Causes of Carryover |
研究補助者によるデータ収集システムの環境構築を予定していたが、新型コロナウイルスの流行と緊急事態宣言の発出により延期せざるを得なかった。2020年度後半においても対面での研究打ち合わせは大きく制限されており、また打ち合わせを行う研究補助者にとってオンラインでのコミュニケーション・ツールは、対面での打ち合わせを完全に代替するものではなかった。2021年度は過年度において予定されていた内容を実施する。 具体的には、2020年度に行ったログデータ収集の準備を元に実際にログデータを収集するとともに、個人レベルでの態度測定実験を行う。
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