2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の社会関係の喪失と獲得がもたらす心理社会的効用モデルの構築
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19K03206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 育子 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任講師 (10509821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会関係 / 主観的well-being / 高齢者 / 獲得と喪失 / 友人関係 / 近隣関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者における社会関係の喪失と獲得のプロセスモデルを構築することを目的とする。初年度は、第一に友人や近隣関係の変化と発達、加齢、ライフイベントに関する先行研究を整理し、研究1(質的インタビュー調査)を実施する計画であった。 先行研究では、大規模な社会調査データを用いて友人数の変化、友人や近隣との交流頻度の変化、社会参加頻度の変化といった量的な変化と関連する要因を明らかにした研究や、ライフイベントとして退職や配偶者との死別に着目した研究等を精査した。また既存データの二次分析で、友人の死を経験することの影響を検討した。 以上を踏まえて、年度後半からは、インタビュー調査の設計を行うとともに、調査協力者を探した。縁故法でインタビュー協力者を依頼するにあたり、年齢、就業状況、社会的交流の状況、そして可能であれば健康状況にも多様性を持たせるため、3つの手法で協力者へのコンタクトを計画した。1つ目はSNSを利用して交流をしている高齢者で、比較的若い方が多く、現役で働いている方のリクルートにつながると考えた。2つ目は地域のボランティア活動をされている方を通した募集で、年齢や健康状態が様々な方に依頼できる一方で、紹介していただく方は近隣との交流がある方に限られるという点があった。3つ目は他の調査への協力を依頼したことがある後期高齢者の方々で、従来の縁故法ではつながり難い、あまり社会的に積極的に交流をしていない方や、かなり高齢の方に調査協力を依頼できると考えた。 以上のように多様な方法でインタビュー調査を依頼することを計画し、SNS利用高齢者および地域ボランティア高齢者を対象としたインタビューを4件実施したところでCOVID-19に伴う活動制限、自粛となり、調査が中断した。現在は、実施出来たインタビューの分析を行い、インタビューの方法や内容をより良くするための修正を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1(質的調査)に着手したところで新型コロナウイルス感染症の流行が懸念されるようになり、当初予定していた調査が中断している状況である。個別でのインタビューが可能になったところで再開できるように、インタビュー候補者の推薦をお願いしている仲介者の方々との連絡を継続してとっている。 また、社会全体において、感染症を避けるため社会的交流が大きく影響を受けており、この出来事が社会関係の獲得と喪失という本研究テーマにどのように影響を与えるのか、特に高齢者において他の世代と異なる影響を与えるのかが、懸案である。社会的交流の手段として大きく注目されるようになっているのが情報通信技術を活用したコミュニケーションサービスである。研究計画時点では、ICTの利用経験に大きく焦点を当てているわけではなかったが、社会関係の喪失や拡大に関連する重要な要因であることから、インタビュー調査の質問を変更し、交流の手段やインターネットの利用経験等についても質問に加えることとした。以上の社会状況の変化を受けて、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限、社会的活動自粛が友人や近隣との交流および主観的well-beingに与える影響が異なるのか、ICTの利用経験や状況がどう関わっているか、という点についても明らかにできるよう、インタビュー調査計画を微修正している。
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Strategy for Future Research Activity |
対面でのインタビューが可能な社会状況になった時点で速やかに研究1(質的調査)を再開する計画である。特に75歳以上の高齢者層へのインタビューがまだ開始できていないため、その準備を進める。一方で、インタビューを予定していた対象者によっては、オンライン会議ツールを用いて連絡が取り合える状況も出来つつある。オンライン会議ツールを用いたインタビューの実施方法についても、選択肢の一つとして入れることを検討する。 研究1の実施が当初計画より遅れることから、研究2の調査準備については、研究1の終了を待たずに着手したいと考えている。
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