2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の社会関係の喪失と獲得がもたらす心理社会的効用モデルの構築
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19K03206
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Research Institution | Bunri University of Hospitality |
Principal Investigator |
菅原 育子 西武文理大学, サービス経営学部, 准教授 (10509821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者の社会関係 / 社会活動 / 主観的well-being / 獲得と喪失 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者における社会関係の喪失と獲得のプロセスモデルを構築することを目的とする。当初は定年退職や健康上の変化など個人が経験するライフイベントと社会関係の変容の関係を明らかにすることを目指していたが、研究1年目の終わりに発生した新型コロナウイルス感染症の世界的流行と社会活動の制限、自粛等が、高齢者の社会活動、社会関係に多様な影響を与えた。このことから、当初の研究計画に加えて、オンラインでの社会参加や交流を含めて社会関係の変化とその影響過程を明らかにする研究計画へと修正を行った。 本年度は、昨年度実施したオンラインでの社会交流を行っている高齢者を対象とした調査のデータの解析を進めるとともに、感染症拡大の影響で中断していた一般高齢者を対象とした研究を再開し、質的調査および量的調査の実施に取り組んだ。 質的調査について、高齢者への対面での調査を19名に実施した。定年退職など就業上の地位の変化や転居、本人や家族の健康上の変化が、友人や近隣者、同僚などとの関係にどのような変化をもたらすか、またそれらの関係を維持したり新たに構築するうえで個人的、社会的資源となるものは何か、という課題に加えて、COVID-19がもたらした影響やICTを用いたオンラインでの交流の状況についても調査内容に加えた。 量的調査については、既存データの二次分析を行い、レジリエンス特性の高低による友人づきあいの変化あるいは継続について成果をまとめた。またICT等の新技術受容に関する分析を行い、新たな技術に対する高齢者の態度の分析を行った。さらに地域在住の一般高齢者を対象とした調査の実現に取り組んだ。 以上のように本年度は昨年度まで中断していた一般高齢者を対象とした調査の実施が可能となりそれらを進めた。得られたデータの分析と成果のとりまとめは来年度に持ち越された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までと異なり、今年度は徐々に社会活動や社会的交流の制限が緩まったことから、中断していた調査を徐々に再開することが出来た。従来の研究課題であった社会関係の獲得と喪失についての質問に加えて、コロナ禍のなかで新たに経験した社会活動の制限やICTを利用した社会参加、社会交流についても調査課題に加え、時代の変化に応じた研究計画に修正することが出来たと考える。 なお、昨年度まで計画していた量的調査が出来なかったことから、その調査に代わって既存の社会調査データの二次分析を行い、高齢者の友人関係や近隣づきあいの変化に影響する要因の検討を進め、国際学会での発表や論文の執筆に結び付けた。 年度末に、一般地域在住高齢者を対象とした量的調査を実施する機会が得られたことから、年度をはさんで調査を実施することとなった。調査データの整理と分析が年度内には間に合わず次年度に再延長となったが、今年度はオンラインでの活動を行っていない人も含めた地域在住高齢者を対象とした調査を実施することが出来たことから、研究計画の遅れは取り戻しつつある。最終年度の来年度は、今年度新たに収集した調査の分析結果と、先の2年間で収集したオンラインで社会的交流を行っている中高年者を対象とした調査の結果とを比較することを含めて、高齢者の社会関係の変遷モデルの構築を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した、一般高齢者に対するインタビュー調査および質問紙調査について、分析を行い、研究成果をまとめる。 加えて、オンラインの社会的交流を行っている中高年者への追跡調査を継続し、通常の対面での活動が復活するなかでどのようにオンラインでの交流が継続あるいは終了していくか、オンラインでつながった社会関係や社会活動のより長期的な変化を分析する。 以上のデータの分析を総合して、高齢者の社会関係の喪失と獲得の過程のモデル化を最終的にまとめることを目指す。汎用的なモデル構築をめざしつつ、コロナ禍という出来事がもたらした影響についての解析と考察を深めることで、予期できるライフイベントや変化(例. 定年退職や自主的な転居)と、予期できない個人的なライフイベント(例. 健康状態の変化や予期しない転居)、さらには予期できない社会的なイベント(例. パンデミックによる活動制限)のそれぞれに共通した変容過程、あるいは独特の変容過程を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
実施が遅れていた調査の実施とデータ収集が可能となり、実施にかかった費用を本年度に計上したが、調査実施が年度をまたいだことで、データの整理と分析にかかる費用、および成果のとりまとめ、発表にかかる費用が次年度に繰り越された。 翌年度にはデータ整理の委託費、データ解析用ソフトの更新にかかる物品費、学会報告のための旅費、学会参加費、英文校正費、論文投稿費、印刷費に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)