2020 Fiscal Year Research-status Report
社会の分断と統合プロセスのゲーミングアプローチによる解明
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19K03210
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 淳吉 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70311719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (70214830)
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会の分断と統合 / ゲーミング / 意見表明 / 集団間葛藤 / 共通利益 / 多属性態度モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、立場や意見の違いから集団・社会が対立した状況での葛藤を可視化し、コミュニケーションによって合意形成をはかる目的となる複数のゲーミングを開発し、集団間葛藤の理解と解決に関する学習ツールとして位置づけ、その効果を検討してきた。 本年度は、開発したゲーミングを、COVID-19の世界的流行という喫緊の解決が求められる課題に援用すべく、ゲーミングの再設計を行った。理論的検討として、多属性態度理論を合意形成のコミュニケーションに援用し、葛藤解決のためのゲーミングのモデルの作成を進めた。そのモデルでは、1)すべての人が態度対象に関するすべての属性を意識する訳ではなく、多くは少数の属性のみで判断すること、2)社会的決定場面において少数の価値もきちんと反映させられるようにすること、3)属性への注目を変化させることによって包摂が可能となること、の3点を検討した。 合意形成のゲーミングの開発では、次の点を中心に設計を行った。第1に、ゲームのコンテンツとして解決が求められる現実社会の事例を整理し、開発したゲーミングのモデルとの対応づけることである。第2に、社会の分断・統合に関する文化間比較として、COVID-19の政策と市民の対応との関連を日本とドイツの特徴を両国での日常生活におけるフィールドワークを通してモデルへ組み込んだことである。 以上をもとに開発を進めたゲーミングでは、1)意思決定の基準となる価値基準の提示方法のバリエーション、2)合意形成の目標としての政策決定の選択肢を可視化、3)相互の価値基準の葛藤と解決に関する感情表明、の3点をルールとして活用できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染予防の観点から、当初予定していた実験、フィールドワークを延期したため。その一方で、それに代わって、COVID-19の世界的流行によって生じた本研究テーマの関連事例を収集・分析し、本研究で開発するゲーミングにモデル化して取り入れたこと、オンラインによるゲーミングの準備を進めたことにより、全体として遅れはあるものの、当初の予定以外の部分で研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、対面によるゲーミングの開発と実践を中心として進めてきた。この間、オンラインのビデオ会議システムによるコミュニケーションの普及が社会的に進み、本研究でも一部にそれを取り入れてきた。このことから、対面を前提としたゲーミングシステムのオンラインへの転用を推進させる。オンラインによるゲーミングは、COVID-19の感染を予防するという点もある。一方でオンラインによるコミュニケーションは、対面と比べて様々な制約がある。その制約を特定し、対面状況と比較するという視点を新たに取り入れて進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の世界的流行により、感染症予防の観点から、フィールド調査・実験の計画を変更したこと、成果発表のための国内外の学術会議が中止・延期となったため。COVID-19の世界的流行の状況をみながら、フィールド調査、国内外での成果発表にて次年度で使用する。
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Research Products
(5 results)