2021 Fiscal Year Research-status Report
社会の分断と統合プロセスのゲーミングアプローチによる解明
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19K03210
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 淳吉 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70311719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (70214830)
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会の分断と統合 / ゲーミング / リスクコミュニケーション / 化学反応ゲーム / ESG投資 / 多数派予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の分断・統合ゲーミングとして、ゲームシステムとコンテンツについて、継続的に開発を行ってきた。本年度は、ドイツにおいて、COVID-19が流行する状況における消費、環境、健康のリスクコミュニケーションについての事例調査を行い、ルールと人々との行動の関連について分析した。また、前年度から開発を継続しているゲームシステムを調整しながらゲーミングのコンテンツに向けての事例分析を行った。その結果を参考にして、3つのゲーミングの開発と試行を行った。 第1に、説得納得ゲーム(杉浦, 2003)を応用したオンライン版を作成し、ハンブルク医療大学(MSH Medical School Hamburg)において実施し、参加者の評価を得た。従来のゲーミングに観察者の役割を導入し、説得における被説得者の意思決定を第三者がサポートできるようにした。 第2に、省エネルギーと気候変動問題に関して、意見対照ゲームICHIBA(杉浦2006)をもとに「化学反応ゲーム」を新たに作成した。このゲームは、社会の分断と統合のメタファーとして、指定された条件のもとで参加者が化学反応における結合・分解をメタファーとして合意形成を行うもので、ライプニッツハノーファー大学(Leibniz University Hannover)のRenz, F.教授と共同開発し、同大学で実施した。 第3に、エコ事業の開発と投資要請を行うESG投資ゲーミング「エコファンディグゲーム」を新たに開発し、その試行およびゲームの評価を行った。達成すべき社会を様々に設定し、それぞれに対して投資額を決定することで、どのような行動変容が必要かを参加者が討論できるようにした。 以上のゲーミング開発を通じ、1)説得の受容における観察者と多数派予測の要因の導入、2)分断と統合のバリエーションと変化を経験的に理解できることの2点について検討できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長期化するCOVID-19の感染流行と予防対策の観点から、実験及びフィールドワークに関して計画を変更し、感染予防を優先事項として研究を進めた。ゲーミングによる実験に関して、オンライン版を新たに開発した。また、ドイツの大学における対面状況の感染症予防に関する規制によりサンプルサイズの縮小を行った。一方で、以上のような感染予防対策は、それ自体を事例として分析することで本研究が対象とする範囲を広げ、また新たなゲーミングの開発や既存のゲーミングのオンライン版の開発につながった。全体としては、上述のように、パンデミック状況で研究は遅れているが、当初の計画を発展的に広げることができた。それにより、研究期間を1年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに開発してきた社会の分断と統合のゲーミングに関し、特にCOVID-19のパンデミック状況における事例分析を考慮したゲーミング・システムの改変・調整を引き続き行う。今年度の実績をもとに、当初計画にくわえ、次の2点をゲーミングに盛り込む。第1に、社会の分断に関する多数派と少数派のバランスとその変化を検討する。第2に、本ゲーミングのオンラインでの実施可能性に関する検討である。このことにより、現在の社会で生じている課題の再現性を高め、ゲーミングの遠隔実施の可能性を高めていくこととする。さらに、社会の分断と統合という本研究課題を統合的にとらえ、現在世界で生じている環境・気候変動対策、健康や生存に関するリスクへの対処など、これまでの研究成果を現在生じている課題とその解決に向けて再編し、公表していく。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行により、国際学会への参加や海外での事例調査に制約があり、当初予定していた外国出張等が実施できなかったため。また、計画していた対面でのゲーミング実施ができず、それに関する経費の執行ができなかったため。 COVID-19の流行の状況に細心の注意を払いつつ、当初予定に準じて実験および国際学会への参加・発表を行う。
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Research Products
(8 results)