2019 Fiscal Year Research-status Report
説得と金融行動の心理学に基づく絵画刺激による特殊詐欺被害対策
Project/Area Number |
19K03213
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐々木 美加 明治大学, 商学部, 専任教授 (90337204)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 絵画 / 詐欺脆弱性 / 感情 / 説得 / パーソナリティ / 金融心理尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1研究として、中世の詐欺に関する絵画が、現代の詐欺に対する危機意識を高める心理過程のモデルを実証的に明らかにした。実験では、ラ・トゥールの「いかさま師」の画像を絵画刺激とし、呈示後の感情と詐欺への危機意識が測定された。絵画呈示の有無を独立変数とし,感情測定項目を従属変数として分散分析を行った結果,絵画呈示条件の方が絵画無し条件よりも恐怖感情が強く喚起されていた。また,絵画の有無を独立変数とし,詐欺脆弱性認知を従属変数として分散分析を行った結果,絵画呈示条件の方が,絵画無し条件よりも詐欺脆弱性認知が低くなっていた。モデルの検証のため,参加者の恐怖感情,参加者のリスクマネジメント,参加者の金融知識を説明変数,詐欺脆弱性認知を目的変数として,重回帰分析を行った。その結果,恐怖感情が詐欺脆弱性を有意に弱めていた。これらの結果から,絵画から感じられる恐怖感情が,詐欺脆弱性を弱め,詐欺への対策になりうることが示唆された。 第2研究では,インターネット調査を行い,金融に関するパーソナリティが詐欺への脆弱性に与える影響を検討した。その結果,年齢,リスクマネジメント,一般的信頼が高いほど詐欺脆弱性を促進し,金融心理尺度の「個人的能力欠如」が高く,自分の金融に対する能力が低いと認知するほど,詐欺脆弱性を抑制する効果が見いだされた。金融の知識や信頼尺度の「用心深さ」の影響は有意ではなかった。詐欺脆弱性を抑制し,詐欺への脆弱性を改善するためには,個人の金融行動の能力に自信を持たないことが重要であることが窺えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2月以降のに研究打ち合わせの出張,実験実施,研究発表が,新型コロナウイルス感染拡大の影響で行うことが出来なかった。そのため,研究の進行がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在大学が入構禁止中で実験準備が遅れている。そのため,打ち合わせ等をオンラインで行うことや,実験室での新型コロナウイルス対策を整え,順次研究を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,学会発表の中止,研究打ち合わせと実験の延期が生じたため,次年度使用額が生じた。研究が遅れた部分については,次年度,研究出張および実験の再開ができる環境が整い次第,順次研究を進め使用する計画である。
|