2023 Fiscal Year Research-status Report
説得と金融行動の心理学に基づく絵画刺激による特殊詐欺被害対策
Project/Area Number |
19K03213
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐々木 美加 明治大学, 商学部, 専任教授 (90337204)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 詐欺脆弱性 / 金融詐欺 / 金融心理 / 詐欺防止対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度までの研究では、オンライン上の実験により、詐欺に関する絵画刺激の呈示により恐怖感情が喚起され、恐怖感情が詐欺脆弱性を有意に弱めることが示された。また、金融心理の観点からは、インターネット調査では、年齢,リスクマネジメントや一般的信頼が高いほど詐欺脆弱性を促進し,自分の金融に対する能力が低いと認知するほど,詐欺脆弱性を抑制する効果が見いだされた。 2023年度は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行により、対面の実験を実施した。これによりこれまでのオンライン上の実験結果と対面実験研究結果を比較検討した。その結果、金融行動の個人差として,損失不安が高いほど詐欺脆弱性を弱め,金融情報を考慮するほど詐欺脆弱性が強まることが示された。また,経済的リスクマネジメント得点が高いほど詐欺脆弱性が強まることが示された。すなわち損失不安が高い場合は,詐欺に被害に遭いにくくなるが, 金融情報を考慮し,経済リスクマネジメントを高めれば高めるほど,詐欺の被害に遭う危険性が高くなると考えられた。 詐欺に関する絵画刺激の影響については, 詐欺被害絵画の恐怖感情喚起効果は見出されたが、恐怖感情と詐欺脆弱性認知の関係が有意ではなかった。従って、オンライン上では画像での恐怖喚起が有効でも、対面では絵画の恐怖効果による詐欺防止効果は期待できないと思われた。近年はSNSを悪用する投資詐欺が増えているため、こうしたオンラインと対面での詐欺への危機意識に対する影響の違いは考慮するべき点だと思われる。 またオンライン上でも対面でも、リスクマネジメントや金融情報の考慮など金融情報の管理の高さは詐欺への脆弱性に影響しており、金融心理の個人特性に注目した詐欺防止対策の重要性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度まで新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年度~2022年度までの3年分の対面で行う研究が遅れたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響で遅れた研究は、延長年に遅れていた3年分の1年半ほどは進めることができた。あとの1年半の研究計画が残っているためやや遅れているが、再延長の期間に遅れを取り戻し研究計画を完遂することを目指している。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で2020年~2022年の3年間、対面の実験室実験を実施することができなかった。そのため、3年分の研究が遅れることとなり、当初は2022年度が最終年度の予定から3年遅れる事態となった。昨年度の延長年度は新型コロナウイルスが5類に移行し、対面実験を実施することができた。しかし3年分の研究の遅れを2023年の延長年1年だけで取り戻すことができなかった。そのため、計画していた実験をすべて行うことができず、次年度使用額が生じた。 昨年度の延長年で3年の遅れのうち1年半分の研究を進めることができた。再延長年において、残りの1年半分の研究を完遂する計画である。
|