2021 Fiscal Year Research-status Report
An empirical study of deviant consumer behavior:Aiming at classifying customer complaints and proposing the appropriate complaint procedure
Project/Area Number |
19K03217
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
池内 裕美 関西大学, 社会学部, 教授 (50368198)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 苦情 / クレーム / 逸脱的消費者行動 / 苦情対応 / カスタマー・ハラスメント / 苦情行動傾向 / 苦情対応方略 / 顧客満足 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、逸脱的消費者行動の中の「苦情行動」に焦点を当て、苦情行動者を典型的な発言や態度から類型化し、その類型に応じた適切な対応方略を見出すことを主目的とする。2021年度は、前年度作成した「苦情行動傾向尺度」や「苦情対応方略尺度」を用いて、苦情経験のある消費者(苦情者)を対象に、苦情者側から見た苦情行動やカスタマー・ハラスメントの現状を把握するべく「商品/サービスに対する苦情経験の心理・実態調査」を行った。 具体的には、調査会社のモニターから対面または電話で苦情を訴えた経験のある20~70代の男女394名を抽出し、web調査を実施した。スクリーニング(SC)調査も含めた主な結果を記すと、SC調査協力者11,036名中、商品/サービス不満足経験が「ある」と答えた人は6,729名(61.0%)、そのうち不満内容を口頭や文書で訴えた経験のある人は3,103名(46.1%)であり、約半分の確率で不満が苦情に発展することが見出された。 また、本調査の協力者394名を対象に「苦情行動傾向尺度」を用いて苦情者を分類したところ、次の4タイプが見出された。1)被害者意識型、2)激高・威嚇型、3)解決志向型、4)社会的規範型。「苦情対応方略尺度」においては、苦情者が望ましいとする葛藤解決方略として4つのスタイルが見出された。1)自己譲歩型(可能な限り顧客の要求に答えようとする方略)、2)強制型(可能な限り対応者側の主張を通そうとする方略)、3)回避型(直接的な葛藤を避けようとする方略)、4)統合型(両者が受容できるような解決策を図る方略)。 さらに、対応者と苦情者で対応方略を比較したところ、「自己譲歩」以外の3つのスタイルにおいて、苦情者の方が有意に望ましいと捉えていることが見出された。他の調査項目における回答の違いも含め、両者の公正知覚の差異が苦情解決を困難にしている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように判断した理由は、過年度に実施予定であった課題「韓国での苦情の実態調査」が、新型コロナウイルスの感染拡大や世界情勢悪化の影響で、依然滞っていることによる。本研究では、苦情大国ともいえる韓国にて面接調査を実施する予定であったが、日韓の関係も緊張状態にある。よって、国際的な研究を進展させるためには、次項で述べるように対象国の見直し、または調査方法の変更が望ましいといえる。 一方、国内調査は比較的順調であり、2021年度の計画として挙げた「苦情者の類型別苦情対応に関する検討」、および「苦情者と対応者のコミュニケーションギャップに関する検討」はほぼ達成できた。例えば前者に関していえば、対応者データを構造方程式モデリングによって分析した結果、苦情者が「激高型」である場合は「強制型スタイル」の対応方略が有効的であり、「解決志向型」の場合は「回避型スタイル」は望ましくないこと等が見出された。他にも、苦情者の行動特性を性・年齢要因の観点から検討したところ、男性においては50-60代を中心に高齢になるほど迷惑行為を行いやすく、特に男性70代が消費者の特権を主張しやすいこと等が示唆された。 こうした結果は、苦情対応従事者にとっては迷惑行為の未然防止につながるという点で、非常に参考になるといえる。実際、講演活動やメディアからの取材を通して情報発信を行い、既に多くの対応現場で役立てて頂いている。しかし、社会貢献を重んじるがあまり、論文として発表しきれていない部分もあり、これらの研究成果の整理は課題の一つといえる。 また、後者の「苦情者と対応者のコミュニケーションギャップに関する検討」においても、対応者と苦情者の各データは収集できたものの、十分な比較検討までは至っておらず、検討の余地がある。以上の点を踏まえ、現在までの進捗状況については“やや遅れている”という判断が妥当といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実績報告書でも述べたが、本研究課題の期間内(~2022年度)は、おそらく海外での現地調査の実施は難しいもの思われる。よって、一部計画を見直しながら進める予定であるため、ここでは変更点も含めた推進方策について述べる。 2022年度は、まず「感情労働傾向」「苦情行動類型」「苦情対応類型」の国際間比較を行うことを第一の課題とする。「感情労働」とは、適切な感情管理をも職務の一部とせざるを得ない種類の労働を指す。本課題では、これまでに作成した「感情労働尺度」「苦情行動傾向尺度」「苦情対応方略尺度」を翻訳し、webにて質問紙調査を実施する。より具体的には、公益社団法人に属する企業の現地法人勤務者に協力を求めるが、それが難しければ調査会社の現地モニターを用いてweb調査を行う。これらについて当初の計画では、日米韓で比較検討する予定であったが、国際情勢やコロナの感染状況も踏まえ、調査国については再検討したい。いずれにせよ、webにて調査を行うため、面接調査に比べると実施の可能性は十分に高いといえる。なお、持ち越しとなっている現地での面接調査については、2022年度内にweb調査に変更して実施するか、本研究期間(2019-2022年)を一年延長し、研究代表者が学術研究員(サバティカル)となる2023年度に変更して実施したいと考えている。その他、社会的な要請に基づき、企業のカスタマー・ハラスメント対策の現状に関するデータも収集する予定である。 第二の課題としては、これまでの研究成果を整理し、論文として発表することが挙げられる。本研究は、研究期間を一年延長することを視野に入れつつも、計画上は2022年度が最終年度である。したがって、新たなデータを収集する一方で、これまで取得した苦情対応者、および苦情行動者のデータを多面的な視点から分析・整理し、積極的に成果発表していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由とその具体的な使用計画については、「今後の研究の推進方策」欄に記した内容に基づいて順に述べる。 まず、上述したように2021年度も世界情勢の悪化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、予定していた韓国での実態調査を引き続き中止せざるをえなくなった。したがって、そのために繰り越し計上していた「外国旅費」や現地ガイドの「人件費」、質問紙の翻訳作業にかかる「その他」費用が、そのまま持ち越される形となった。また、国内外の学会発表のための旅費も、軒並みオンライン開催となったため、同様に未使用の状況である。また、2021年度は、苦情者を対象に2つの調査を実施し、繰り越した費用はこれらの調査費用に充当する予定であった。しかし、2つの調査を1度に実施し、その代わり対象者のスクリーニングを慎重に行った結果、業務委託費をかなり抑えることができた。 上記の理由により、現状、「次年度使用額」はかなりの多額となっている。2022年度に、これまで積み残した現地での面接調査を実施できればよいが、コロナの感染状況や世界情勢を鑑みると、依然として困難な可能性が高い。したがって使用計画としては、2022年度に予定している国際間比較の調査や面接調査の代替案であるweb調査にこれらの経費を充当するか、もしくは、研究期間を一年間延長し、2023年度に現地調査を実施する方向で使用したいと考えている。
|
Remarks |
上記で挙げた業績以外に、2021年度は、メディアで本研究(苦情、カスハラ)に関する内容やコメントが取り上げられた回数は12回であり、企業・団体等にて行った講演(招待講演)は14回にのぼっている。
|