2020 Fiscal Year Research-status Report
日本人は何を変えたくないのか:変化への抵抗を生み出す諸要因の解明
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19K03218
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村山 綾 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10609936)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 変化への抵抗 / 道徳基盤 / システム正当化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、COVID-19の世界的流行のため延期していた国際比較調査を実施した。具体的には、ドイツ、タイ、中国、日本を対象に、道徳基盤やシステム正当化、変化への抵抗に関する項目を用いた測定を行った。変化への抵抗は、社会システムの変化に注目し、直接身体が関わらない事項(プラスチック利用制限、CO2排出制限)、直接身体に関わる事項(医療AI受容、培養肉受容)、集団の結束に関わる事項(移民受容、婚外子養育支援)について、政策側の決定(法律の制定)および自分自身の行動として受け入れられる程度「全く受け入れられない(1)ー完全に受け入れられる(6)」で測定した。現在詳細を分析中ではあるが、日本は他の文化と比較して、特に集団の結束に関わる事項の変化を受け入れにくいことが示された。これは仮説を支持する傾向である。また道徳基盤尺度の5基盤の得点を文化間で比較した結果、ドイツは個人の権利を重視する基盤(Harm, Fairness)を、集団の結束に関わる基盤(Authority, Ingroup, Purity)よりも顕著に重視する傾向が見られた一方、中国とタイは5つの基盤を概ね平均的に重視する傾向が見られた。一方日本は、すべての道徳基盤において全体的に得点が低く、Harmのみがやや高いという傾向が得られた。この結果の解釈については、他の測定変数との関連を含め引き続き検討予定であるが、変化への抵抗に関わる結果も含め、日本社会の特徴を理解するために重要な知見であると考えられる。得られた結果の一部は、2020年9月9日に開催された日本心理学会第84回大会準備委員会企画シンポジウム「新しいモラル・サイコロジーへ:進化,発達,社会の観点から」において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19によりデータ収集のタイミングは遅れたものの、分析や得られた知見の発表等は順調に行っていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られたデータの分析に加え、5つの道徳基盤と関連が強い法律を各基盤複数種類を選定し、計画している最終調査を行う予定である。近年、改正に向けた取り組みがなされている法律(例えば、夫婦別姓)についてもいくつか選定する予定である。選定作業を終えたのち、それらの法律を対象に、その重要性や、維持すべきと考える程度、現状のシステム不全から改正されるべきだと考える程度について、その理由とともに回答を求める調査を行う。得られた自由記述データは、道徳基盤理論に基づき道徳語を分類、辞書化したJapanese Moral Foundations Dictionary (Matsuo, Sasahara, Taguchi, & Karasawa, 2018)を利用した検討等を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染状況を踏まえ、調査実施のタイミングが全体的な計画から少しずれているため、本来年度内に実施する予定だった国内調査の一部がまだ実施できていないことから次年度使用額が0を超えた。次年度に計画している調査実施費用に当てる予定である。
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