2019 Fiscal Year Research-status Report
A longitudinal twin study on the development of empathy
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19K03229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 雄介 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20615471)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 双生児 / 共感性 / 向社会行動 / 行動遺伝学 / 縦断研究 / 冷淡さ / 無感情性 |
Outline of Annual Research Achievements |
共感性は,人間においても他の動物種においても向社会行動の基盤である。向社会的な人間は,ストレス経験が少なく,寿命が長いという報告もあるため,向社会行動への誘因たる共感性の発達基盤について実証的な検証を行うことは社会的な意義が大きい。共感性は,人間の適応行動に欠かすことのできないヒューマン・キャピタルのひとつでありながら,幼児期・児童期における共感性の構造と結果変数に対する予測的妥当性については未解明の部分が多い。そこで,本研究課題では,幼児期・児童期の共感性の構造と発達の動態を明らかにしながら,それらが社会的な適応と不適応にどのように影響を与えるのかを双生児法を用いた行動遺伝学解析による検証を行っていくものである。2019年度(平成31年度および令和元年度)においては,ウェブを用いて取得した調査データおよび研究代表者の在外研究先であった英国・ロンドンの所有する公開データに基づいた分析を進め,それらの成果報告を国際論文誌2編(Takahashi, Pingault, et al., in press, Takahashi, Pease, et al., in press),国際学会発表3件,国内学会発表3件において行った。たとえば,そのうちのTakahashi, Pease, et al., (in press)においては,共感性のダークサイドと考えられる冷淡さ・無感情性の遺伝・環境構造について発達的な観点から分析を行い,共感性のダークサイドのベースライン(切片)には遺伝の影響が多分に関与するものの,その発達の様相(傾き)には環境の影響が相対的に大きく,またそれら切片と傾きの間の遺伝相関は低いことを明らかにした。このことは,共感性(とその裏返し)には年齢層に特有な遺伝・環境要因が関与しており,介入やサポートもその当該年齢層に即した方法が求められるすることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現時点においては,当初予定していた研究計画からの遅れは見られない。現在さらに英文誌へ投稿中の原稿があるので,それらを出来る限り早く適切に研究業績として報告できるように研究活動を遂行する。また,ロンドン大学の所有する公開データの分析結果もおおむねまとめることができたため,それに関する研究報告もさらに推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
現状において,本研究計画について関する後ろ向きの計画変更の予定は何も無い。ただし,議論の拡散を回避するために,ターゲットとする変数を適切に限定したり,年齢層を細かく制限したりするなどして,研究の効率的な遂行を妨げることのないように工夫・配慮を行い,場合によってはリサーチ・アシスタントを雇用するなどして,研究活動をさらに円滑に遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
年度末に予定されていた研究打ち合わせが新型コロナウイルス感染拡大を理由に次年度へと繰り延べされたことが原因で若干の余剰が発生したが,さまざまな点に鑑みながら,次年度以降にそれに相当する専門書の購入に充当し,研究推進のために有効に活用する。
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