2019 Fiscal Year Research-status Report
科学的ルールの学習を促す教師の発問と教材特性の解明:知識表現の抽象度に着目して
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19K03235
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 石巻専修大学, 人間学部, 助教 (20633655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ルール学習 / 思考過程 / 抽象度 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学的概念の学習において,明示的にルールが教えられても課題解決に適用できないという問題は多くの教育心理学的研究により指摘されている。本研究ではその背景として,教えたい科学的ルールと提示される具体的現象・事例の抽象度の違いがもたらす教材上の問題,および教師と学習者のルールに対する認識の問題を想定する。本研究の主たる目的は,これらの問題を克服しルールの学習を成立させるための教授学習条件を明らかにすることである。 令和1年度は,学習者のルールに対する認識を明らかにすべく,ルールの学習場面における学習者の思考過程,すなわち学習者がルールをどのように理解し適用しようとするのか,またルールの適用過程においていかなる質問が生成されるかを具体的に検討した。大学生8名を対象に種子植物ルールに関する授業を実施しその学習過程を分析した結果,学習者は教授されたルールと自身の具体的経験とを積極的に照らし合わせながら疑問を生成しており,そしてそれがルールの理解を深める契機となっていたこと,また,未知の事柄について予測をおこなう際,ルールだけで判断しようとせず,既知の事例との共通点から類推をおこなう傾向にあったことが明らかになった(佐藤,2020)。学習者は,教えられた抽象的ルールだけに依拠せず,自身の具体的経験にもとづいた思考を積極的におこなっていた。こうした学習者の思考特性を踏まえれば,ルールの一般化には,抽象的ルールの論理操作だけでなく,学習者の既有知識を利用した類推をうながす手立てが必要となることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主にルール学習過程における学習者の思考の様相について検討できたものの,当初の計画である,学習者が理解しやすく使いやすい抽象度のレベルをもつ教材の開発およびその検討には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ルール学習過程における学習者の思考特性について分析を進めつつ,具体的な教材を考案し,教授実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況がやや遅れていることと,物品購入においては効率よい経費執行が可能であったためである。次年度はデータ収集・分析にかかる経費および研究発表に係わる旅費に使用する予定である。
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