2020 Fiscal Year Research-status Report
科学的ルールの学習を促す教師の発問と教材特性の解明:知識表現の抽象度に着目して
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19K03235
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 石巻専修大学, 人間学部, 准教授 (20633655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 課題解決 / 思考 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
教科の学習において,明示的にルールや公式が教えられても課題解決に適用できない問題がある。本研究は,その背景に教材のもつ抽象度の問題およびそれに対する学習者の認識の問題を想定し,それを克服するための教授学習条件について検討するものである。 本年度は,課題の抽象度と学習者の認識に関して,割合文章題の問題解決を取り上げて検討した。割合文章題のうち,割合の第3用法(基準量=比較量÷割合)により解決が求められる問題は正答率が低い傾向にあることが先行研究により指摘されている。しかし,比較量と基準量が部分-全体関係にある場合,文章題の問題状況を具体的にイメージすれば「求めたい基準量は比較量よりも大きい」という答えの見積もりは可能であると考えられる。そこで,比較量と基準量が部分-全体関係にある第3用法の割合文章題の問題解決において,答えの見積もり(具体的イメージ)と立式の際の演算選択(記号レベル)の整合性はどの程度みられるものなのかを明らかにするため,大学生44名を対象に調査を実施した。その結果,答えの見積もりを適切におこなった(基準量が比較量よりも大きいと判断した)のは34名(77%)であった。立式について,適切演算は15名(34%),不適切演算が22名(50%),無答が7名(16%)であった。答えの見積もりが適切であった34名を対象に,見積もりと立式の関係について検討したところ,演算結果が見積もりと合致しない立式を示した者が10名も存在した。これらの結果から,割合文章題の問題解決において具体的イメージと式の演算操作とが結びついていないこと,解決につまずく学習者の多くは場当たり的な思考をおこなっていることが明らかになった。課題解決においても具体的イメージと抽象的な記号操作の往還が重要になることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,予定していた対面調査等が実施できなかった。当初の研究計画自体を変更せざるを得ない状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による制限が大きいことから,調査実施方法や扱う課題を再検討し,現況下において可能な範囲での調査を実施する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況が大幅に遅れていること,参加を予定していた国際学会がキャンセルとなったことによる。次年度は調査実施や分析に関わる経費に使用する予定である。
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