2021 Fiscal Year Research-status Report
科学的ルールの学習を促す教師の発問と教材特性の解明:知識表現の抽象度に着目して
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19K03235
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
佐藤 誠子 石巻専修大学, 人間学部, 准教授 (20633655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 課題解決 / 知識の道具的機能 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
教科の学習において,必要な知識(ルール)が教えられても課題解決に適用できない問題がある。本研究は,その要因として教材や知識表現の抽象度および学習者の認識の問題を想定し,課題解決を促すための教授学習条件について検討するものである。 本年度は,「三角型四角形」(佐藤・工藤,2015,2021)の図形分類課題を取りあげて検討をおこなった。三角型四角形とは3頂点が一直線上に並んだ特異な四角形のことであり,形態的には三角形にみえる図形であるが,四角形の定義ルールに基づく限り「四角形」に分類される図形である。しかしながら,大学生に分類判断を求めると「四角形でない」とする判断が優勢であり,四角形の定義ルールが教示されてもなおその初期判断を保持しようとする傾向が強くみられることが先行研究より明らかになっている。この傾向について,課題と知識表現の抽象度の観点から再考すると,課題のもつ形態的特徴(具体的情報)が初期判断に影響し,解決時に使用すべき知識(抽象的情報)の適用を阻害している可能性が考えられた。つまり,既知の(親近性の高い)事例には知識を適用できるが,未知の(新奇な)事例には知識を適用しようとしない傾向があると想定された。そこで,大学生を対象に知識の「道具的機能」(知識は未知の事柄を予測するための道具であること)を教授することで,当該図形分類の課題解決が促進されるかどうかを検討した。その結果,先行研究(佐藤・工藤,2021,研究1)と比較して,解決時に定義ルールを適用し「四角形」とする判断の割合が相対的に高く,課題解決が促進されたことが明らかになった。このことから,課題解決を促すには,従来のようなルール(抽象的情報)と事例(具体的情報)の提示だけでなく,知識の道具的機能に関する一般的な認識形成が重要となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により当初の研究計画を変更したが,教授実験および次年度に向けての調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備調査の結果を踏まえて本実験を実施するとともに,本年度の研究成果について学会発表をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究計画に変更が生じたこと,また,参加した学会・研究会がすべてオンラインで実施されたため旅費を使用しなかったことによる。次年度は本実験や結果分析,論文投稿に伴う経費に使用する予定である。
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Remarks |
佐藤誠子(2021)知識の道具的機能の教授が自己完結的推論の抑制に及ぼす効果―三角型四角形問題を取り上げて― 教授学習過程研究会3月例会
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Research Products
(1 results)