2019 Fiscal Year Research-status Report
小学生の学習適応に関連する幼児期の環境とその支援効果について
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19K03245
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
高井 直美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (20268501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塘 利枝子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00300335)
伊藤 一美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (30329974)
薦田 未央 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (40411102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幼児期 / 発達支援 / 保育園 / 遊びプログラム / 絵本の読み聞かせ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者4名は、2016年度より小学校1年生とその保護者を対象として実施した「まなびスタート調査」の分析を担当した。そこでは、就学時の家庭生活のアンケートと入学直後の児童の学習基盤との間に関連を見出した。2019年度は、その分析を踏まえて、就学後の学習適応に効果があると予測される幼児期の活動について、保育園と家庭での支援プログラムを開発するための研究を行った。実施に先立って、約20年前から、就学前からの学力保障のための調査や活動を実施している九州地区の小学校を訪問し、3名の教師から地域社会の活動において、調査結果が現在までどのように生かされているか、聞き取り調査を行った。その結果も踏まえ、幼児期の発達支援プログラムを立案し、大学の研究倫理審査で承認を得て、研究を実施した。 京都府下の2保育園において、研究Ⅰとして、年長の5歳児クラスの保育内で遊びプログラムの実施を行った。またもう1園加え、3園においては、研究Ⅱとして、家庭への絵本の貸出プログラムを行った。研究Ⅰでは、5歳児クラスで約1ケ月間、4つの遊びプログラム(①時計の読み、②言葉集め・しりとり、③なぞなぞ(スリーヒントクイズ)、④5ならべ)を担任保育士によって実施してもらい、保護者の同意が得られた33名の5歳児に対して、遊びプログラムの前後に個別調査を行った。その結果、しりとりの語の連鎖が増える、なぞなぞの正答率が高まる、数カードの並べる速度が増すなど、遊びプログラムの前後で、支援効果が認められた。また研究Ⅱでは、1~5歳児までに4週間で4冊ずつの絵本を貸し出した。そして、同意が得られた園児117名の保護者に、絵本の読み聞かせについてのアンケート調査を行った。その結果、どの年齢の幼児にも、絵本への興味の増加や親子のコミュニケーションの促進など、読み聞かせの効果がみられることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りプログラムの実施に先立って、先駆的に就学前後の遊び支援を行っている、九州地方の取り組みを取材に行った。20年以上という長きに渡って、取り組みが継続している要因として、地域社会における、保護者・子どもがつながる行事での結びつきが核となることや、子どもを伸ばす遊びの具体的内容について学んだ。 取材結果を踏まえて、研究計画を立て、研究倫理審査の承認を受け、京都府下の3つの保育園で幼児期の発達支援の介入プログラムを実施した。そのうち2園では、5歳児クラスで、担任保育士の協力のもとで遊びプログラムを実施し、プログラムの前後で支援効果を測定した。その結果、時間の意識づけや、言葉や数の遊びを保育に導入することで、就学前の幼児の認知・思考能力を育てる支援効果が見られた。また3園では、1歳児から5歳児の子どもと保護者に協力を得て、絵本の貸出プログラムを実施したが、年齢ごとに、絵本を介した親子のコミュニケーションのあり方が変化していることを見出すことができ、予想以上の研究成果が得られた。絵本貸出プログラムに参加した保護者からは、このプログラムの継続を望む要望もいただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度3園で行った幼児期介入プログラムについて、3つの保育園で継続するとともに、さらに新規にいくつかのこども園など就学前施設で行っていく予定をしている。ただし、新型コロナウィルス感染予防対策の観点から、研究を介した人と人との接触を避けるため、当面は、研究Ⅱの絵本貸出プログラムを中心に、家庭での親子の関わりを促進させる方向で介入を検討したい。 また就学前の介入が就学後の学習にどのように生かされているか検討が必要であるが、ただいま、緊急事態宣言を踏まえて、京都府下の小学校が休校しているため、不要不急の学校への問い合わせは行わない方針である。
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Causes of Carryover |
予定金額に対して、物品費と旅費が大きく未使用となった。その理由は、大規模調査を始める前の小規模調査によって、プログラムの有効性を確認するため、2019年度は研究実施園を3園に限ったことによる。少数の園での研究の実施であったため、研究の材料となる物品費や園を訪問するための旅費が、さほど多くはかからなかったことが、次年度使用が生じた主な理由である。 2019年度に行った3つの保育園に限定した研究で、支援効果が検証されたことにより、2020年度はより多くの地区の就学前施設(保育園、こども園など)に介入プログラムを広げていく予定である。特に絵本の貸出プログラムでは、対象園を増やすことにより、多くの絵本の購入が必要とされるため、物品購入費は、多く使用していく予定である。 さらに、旅費については、2019年度の研究成果が現れたのが、年度末であったため、学会発表を行うことができなかった。次年度は、学会への参加と発表を予定しているため、そのための旅費を使用する予定である。
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