2021 Fiscal Year Research-status Report
小学生の学習適応に関連する幼児期の環境とその支援効果について
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19K03245
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
高井 直美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (20268501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塘 利枝子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00300335)
伊藤 一美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (30329974)
薦田 未央 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (40411102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児期 / 発達支援 / 絵本の読み聞かせ / 親子の関わり / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、就学後の学習適応と関連があると推測された、いくつかの遊び経験を、就学前の幼児期に促進させることを目指してきた。 2019年度は、研究Ⅰ「遊びプログラム」と研究Ⅱ「絵本プログラム」を同じ町にある3保育園で実施した。 研究Ⅰは、保育者に「言葉遊び」「時計を用いた保育」「数遊び」の保育実践を行ってもらい、その前後で研究者が園児への個別課題を行うものであった。研究Ⅰの成果は、2021年3月に日本発達心理学会で、ポスター発表したが、幼児への個別面談を伴う方法での研究の継続は、新型コロナウイルス感染対策のため、その後は行っていない。2020年度は、前年度の3保育園に加え、別の町にある1こども園の研究協力を得て、合計4園について、2019年度の研究Ⅱを発展させた「絵本プログラム」を実施した。この絵本プログラムでは、1歳児から5歳児の園児とその保護者288組を対象とし、園を通して、4週間の絵本の貸出(1名の子どもにつき4冊)と保護者アンケート調査を実施した。結果の分析から、家庭での絵本の読み聞かせについて、多くの支援効果がみられることが明らかとなり、年齢による絵本への反応の違い等についても明らかになった。これらの研究成果については論文化し、2021年度に学会誌「保育学研究60巻」の特集論文(保育の質の向上及び子育て支援の充実に向けた取り組み―地域レベルの試みに焦点を当てて)に投稿した結果、2022年3月に採択となった。 また2021年度には、絵本プログラムの対象園を2町5園に拡大し、379組の園児と保護者に、2020年度と同様の絵本プログラムを実施した。その結果、前年度と同様の支援効果(子どもと保護者との関わりの増加や子ども・保護者の絵本への興味の増加等)が再現されたことに加え、使用絵本の種類を拡大したことから、絵本によって特徴的な、各年齢児の反応も明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家庭での親子の関わりを促進させる絵本プログラムを、毎年協力園を増やして、2019年度から3年間実施することができた。 実施園からは、絵本プログラムを経験した保護者から、ポジティブな感想が寄せられて、次年度も継続してほしいとの要望が出されている。また、2020年度に行った絵本プログラムの成果を2021年度には、学会誌に投稿し採択となったことから、研究成果を公表する前段階まで到達している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度から2021年度に実施した絵本プログラムを、2022年度も引き続き実施することを予定している。研究参加園は、地域社会の要望を踏まえ、これまでの2町5園にさらに1園追加して、2町6園とする。 科研費最終年度となるため、これまでと同様の方法で、プログラムの短期効果を検証することに加えて、研究のまとめとして、保護者には、前年度までの研究への参加状況も尋ね、前年度までの参加の有無や回数でアンケートへの回答が異なるか、プログラムの長期効果について検証することも目的とする。 また、新たに加える従属変数としては、保護者に対して、貸出前と貸出後のアンケートで、絵本の読み聞かえの意義について尋ねる。読み聞かせの意義については、過去3年間のデータで、秋田・無藤(1996)が示した「空想や親子のふれあいをする」内生的意義と「文字を覚え,文章を読む力や生活に必要な力を身につける」外生的意義を、多くの保護者が実感していることが示唆されたため、その両意義を尋ねる質問項目を作成する。そして、これまでのプログラムへの参加の有無や回数で、意義の回答数に、違いがみられるか、貸出前と貸出後で異なるか、長期および短期効果について調べる。研究の成果を、園および保護者にフィードバックする冊子の作成も検討し、絵本の読み聞かせの啓発活動としたいと予定している。
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Causes of Carryover |
3年間の予定で研究計画を立ててきたが、学会はオンライン開催となったため、学会出張旅費は使用しなかったことや、保育支援のプログラムが新型コロナウイルス感染対策のため実施できず、絵本プログラムのみの実施となっていることなどから、残りの予算を2022年度に使用することとした。 2022年度は、2町6園での研究実施を計画している。したがって、研究に必要となる物品費の購入や謝礼金の増加が見込まれ、次年度での使用を予定している。 またこれまでの研究成果をまとめて、協力園や協力保護者に還元する絵本の読み聞かせ啓発冊子の印刷配布を予定している。
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