2020 Fiscal Year Research-status Report
健康診断におけるこころの状態スクリーニング面接が視覚障害学生の健康度に果たす役割
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19K03252
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 惠美 筑波技術大学, 保健科学部, 客員研究員 (70251056)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 聴覚障害 / 大学生 / メンタルヘルス / 自殺予防 / 自殺予防教育 / スクリーニング / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が筑波技術大学保健管理センター精神科で対応した9年間の統計をもとに、視覚障害学生のメンタルヘルスについて後方視的に調査と分析を継続した。調査項目は相談までの経緯、心理的背景、精神科的診断、希死念慮や自殺企図の有無、転帰等である。一昨年度は自殺予防の観点から希死念慮や自殺企図について着目し、期間中の全学における自殺関連行動について調査を行った。その結果、既遂はなかったが、自殺未遂例では統合失調症と発達障害が多かった。また、視覚障害学生の自殺関連行動は海外の報告に比べ少なかった。学生全員が障害を持っており、互いにピアサポートし合える環境が自殺行動の抑止力として働いている可能性が考えられた。また、高層階の施錠等の物理的対策、メンタルヘルスの講義、教職員への啓発パンフレット、健康診断時のスクリーニングによる早期発見・早期介入も、自殺予防対策として有効であったと考えられた。 2020年度からのコロナ禍の中で、日本では若者の自殺が増加している。特に大学1年生はキャンパスに来ることもできず、友人や先輩とのつながりも持てないまま、自室でオンライン授業の課題に追われ、孤独を深めている。このため、1年生へのメンタルヘルスの講義(オンライン)の中では、特に自殺と依存症について取り上げた。自殺の背景・自殺企図者の心理・自殺のサイン・自殺危機への基本的対応・ゲートキーパーについて詳しく伝えた。また、アルコール依存、薬物依存についても深く取り上げた。授業後のアンケートで大きな反響が得られており、今年度も継続して行う予定である。 例年行っている健康診断時のスクリーニングは、緊急事態宣言下だったこともあり、限られた在校生にしか施行できなかった。その中では、周囲で見守る必要のある学生はいたが、医療につなげる必要のある学生はいなかった。今年度は例年通り対面で行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は学生健康診断における面接が新型コロナ感染症のため行えなかった。今年度は感染対策を行った上、対面で面接を行う予定である。また、新入生を対象としたメンタルヘルスの授業も、昨年はオンライン授業であったが、今年度は対面で行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
健康診断におけるこころの状態スクリーニングにより、支援が必要な学生を早期発見、早期介入することができた。自殺予防の観点からも一定の効果があると思われる。 1年生へのメンタルヘルス講義も継続しているが、昨年度はオンライン授業にも関わらず自殺や依存症についてより深く取り上げたせいか学生からの反響が大きく、レポートで悩みを吐露する学生も多かった。今年度もゲートキーパー研修の動画を取り入れるなど新たな工夫をしながら講義を行う予定である。 コロナ禍において、日本では若者と女性の自殺が急増している。若者の自殺予防対策に関して、高等教育までは自治体も関わっているものの、1人暮らしの大学生や大学院生に対しては地域の手が届きにくい現状は課題と思われる。もちろん、自殺対策には大学側の積極的な関与が望まれるが、自治体も一緒に連携できる体制づくりが望まれる。このため、県の自殺対策予防センターにも働きかけていきたい。 感染症対策に留意しながらの事業継続のため、昨年度はオンライン講義を行い、今年度はWebによるスクリーニングも導入した。通信機器を用いた個別面接や自殺予防のための連携会議の導入を検討したい。
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Causes of Carryover |
主たる勤務先の異動と新型コロナウイルス感染症により、学生は実家でオンライン授業を受けており、例年通りの面接はできなかった。 今年度は、今までに得られた統計を用いて研究成果報告を行う。また、メンタルヘルスの向上や自殺予防対策のため、動画やパンフレットなどの作成、自殺対策予防センター等との連携を行いたい。
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