2022 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒のSNS利用行動と友人関係:「現代的」特徴の多義性をふまえた検討と応用
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19K03254
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
若本 純子 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60410198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 美奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20278310)
西野 泰代 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (40610530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 友人関係の両価性 / 児童生徒と教員のギャップ / 幼児のインターネット利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,1)前年度の成果の発表,2)養護教諭と共同で幼児児童生徒のインターネット利用に関する調査と健康教育の計画・推進,3)教員向け研修プログラム試案の作成と評価を実施した。 1)中高生を対象に,SNS利用行動と現代型の友人関係との関連を検討した結果を,学会と論文で発表した。主な結果のひとつは「やさしい友人関係」と称される親しい関係性に対する両価的な態度は,承認欲求の高さと傷つけられることへの敏感さ・回避傾向の並存として説明でき,その根底に過敏型自己愛(中でも随伴的自尊感情)が関与していること,第二は,中高生にとってSNSは居場所となっているが,SNSを居場所として安心感や本来感を感じる生徒は,現実での友人とLINEでクローズドの交流をしている場合であったことが挙げられる。 2)研究代表者所属の附属学校園養護教諭4名と共同で,幼児,児童,中学生を対象に,インターネット利用の実態と心身の発達との関連の検討と健康教育を,2022~2023年度の2年計画で着手した。本年度は,4校園において実態調査を実施し,幼稚園のみデータ分析まで行った。幼児のスクリーンタイム(以下ST)と心身の健康,養育状況との関連を検討して,学会発表した。幼児の時点ではSTの長さと心身の健康との間に直接的な関連は見出されなかったが,STが長い家庭と短い家庭では,養育の仕方に違いがある可能性が示唆された。 3)1)で得られた知見をふまえ,現職教員向けの研修プログラム試案を作成して,2回の研修会で使用し,41名から自由記述による評価を得た。その結果「児童生徒のSNS利用について実態をわかっておらず,SNSが現実の延長・拡大の役割を果たすという認識はなかった」「ICT教育の推進やトラブル対応にばかり目を奪われがちだが,友人関係がかかわる現実と地続きの問題として指導する必要があると気づいた」といった評価が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に実施を計画していた児童生徒に対する大規模質問紙調査は,コロナ対応が引き続き実施されている学校現場の事情を考慮し,本年度も見送らざるを得なかった。この調査は小学生から高校生に至るSNS行動と友人関係の実態を把握するもので本研究の核心をなすため,本年度着手した現職教員向け研修プログラム作成においても,活用できる実証的な知見が不十分であることは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月よりコロナ対応は変更されるものの,教育現場はその変更への対応で引き続き多忙であり,現場での調査は2023年度も難しいであろうと考えられる。よって,オンライン調査への変更を計画しているが,調査対象に小学生,中学生が含まれていない可能性が高い。 一方で,附属学校園という特殊性はあるが,幼児から中学生までを対象として,養護教諭との共同研究を遂行できることになった。ついては,友人関係を視点のひとつとして導入し,幼児児童生徒のインターネット・SNSの利用と心身の発達との関連について明らかにし,現職教員の研修プログラム作成に加え,保護者向けの健康教育プログラム作成へと波及効果をねらっていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,校務においてコロナ対応が必要とされたために,計画していた調査および国内外の学会発表が実施できなかったことによる。 2023年度の使用計画としては,1)児童生徒に対する調査をオンライン調査として,また大学生まで調査対象を拡張して複数回実施する,2)本研究計画時点では予定していなかった養護教諭との共同研究が可能になったため,そこで必要な研究経費として使用する,3)コロナ対策の緩和に伴い,昨年度まで参加できなかった国内外の発表等を再開する,といった形で使用する予定である。
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Research Products
(4 results)