2021 Fiscal Year Research-status Report
日米国際結婚夫婦の葛藤解決の心理過程についての研究
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19K03267
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
矢吹 理恵 東京都市大学, メディア情報学部, 准教授 (30453947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際結婚 / 夫婦関係 / 家族臨床 |
Outline of Annual Research Achievements |
<本研究の目的> 本研究は、日本人女性の国際結婚件数において第二位の夫アメリカ人・妻日本人夫婦を対象に、①国際結婚の夫婦関係を悪化させる葛藤課題はなにか、②それを解決できる夫婦とできない夫婦とでは、葛藤解決方略の心理過程がどのように異なるのか、③①と②には、どのような生涯発達心理学的・家族心理学的・文化心理学的要因が関わるのかを明らかにし、④国際離婚に直面する夫婦と子供に必要な臨床心理学的支援を検討することを目的としている。 <当該年度の実績> 在米の日米国際結婚を1年以上継続している日本人妻10名に対して、「夫婦間葛藤課題=夫と妻の間でやり方や考え方がちがって葛藤となった課題の中で、結婚生活継続にあたって最も重要な課題とその解決法略について1回2時間のフィールドワークの技法によるインタビューと観察により一人当たり2回以上実施することが当初の計画であった。しかし、2020年からの世界的なコロナ問題のため、渡米によるフィールドワーク調査が困難になった。そのため、オンライン・インタビューへの承諾を得られた協力者には実施をしたが、家族問題を家庭でのオンライン・インタビューで扱うことへの抵抗感がみられ、限られた人数へのデータ収集となった。また、オンラインでは観察を伴うフィールドワークは実施できなかった。そのため本年は、調査の焦点を研究課題の一つである「国際離婚に直面する夫婦と子どもに必要な臨床心理学的支援の検討」に切り替えた。公認心理師国家資格と加速化体験力動療法(AEDP)セラピスト資格を取得し、家族療法、ナラティヴ・セラピー、AEDP等の心理療法が、国際結婚家族臨床にどのように有効かを検討中である。また、国際結婚夫婦の葛藤課題の一つである宗教問題についての本を共同翻訳し、出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、多様性が高い集団である国際結婚家族の夫婦間葛藤解決過程を、協力者のライフストーリーの文脈により質的に明らかにすることを目的としているため、調査者と協力者がラポールを取りながらの対面によるインタビューと観察をデータ収集の基本としている。そのため、オンライン上のデータ収集では協力者の生活状況の把握までは踏み込むことは困難であった。また、コロナ問題により国家間移動の制限という、国際結婚家族にとっては家族関係維持にかかわる深刻な状況下で、オンラインであっても頻繁に調査協力を依頼するのは倫理的に妥当でないと判断した。家族問題を家庭でのオンライン・インタビューで扱うことへの協力者からの抵抗感も示された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、最初の2年間で①夫婦関係を維持している夫婦、最後の1年間で②夫婦関係維持が困難・破綻した夫婦への調査を計画していた。コロナ問題の影響を鑑み、今後は①と②の調査期間の区別なく、協力者が見つかり次第依頼し、協力者の負担と倫理的問題がない範囲で、オンライン・対面・Eメールを組み合わせた方法で調査を実施する。また、課題の一つである国際結婚家族への有効な心理療法の検討のため、①家族療法、システムズ・アプローチ、ブリーフ・セラピー等の家族の関係性を扱う心理療法と、②感情焦点化療法(EFT)、加速化体験力動療法(AEDP)等の個人の感情に焦点を当てる心理療法の二つの流れを考査する。
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Causes of Carryover |
2021年8月と12月の現地調査がコロナ問題で実施できなかったことが理由である。今後は、コロナ問題の長期化を鑑み、zoom等を通じてのインタビュー調査のために必要なPC・モニター機器類、データ分析と考察に必要な書籍の購入に充当する計画である。
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